第77話 事の結末
雨が降りすぎて鬱々としております。早く梅雨明けて欲しい・・・。日本列島から梅雨前線去れー!
翌日、起きた時にマーブルの姿はなく、コヨチールが私とテテュスを食堂に連れて行ってくれた。
『マーブルが、ゆっくり休めって言ってたよ。』
「ありがとう。昨日は部屋に戻ったら兄貴も寝ちゃってたね。」
『私はコーちゃんと色々情報交換できて楽しかったわ♪』
「仲良くなったんだね!」
『テテは貴重な聖霊仲間だからね。また定期的に会えたら嬉しいよ。』
「そうだよね。実は聖霊仲間のネットワークを作りたいとは思ってるんだ。」
『ねっと?』
「仲間を増やして繋がっていくって意味かな。ネットワークって言うんだ。」
『ねっと、わーく、ね。それ、いいね!』
『またここに遊びに来ましょ。』
「うん。」
周りに人がいるから小声で話してはいるけど、ひとり言みたいに見えてるんやろうなぁ。
「あ!居た!おはよう~、メイ君。」
「サクさん、おはようございます。」
今日取り調べする人の中に、ジグザの名前があったから、とわざわざ伝えに来てくれたらしい。
「明日には皆、自国に帰ると思うから話するなら今日しかないよ。良かったら、私に付いてくる?」
「お願いします。すみません、忙しいのに・・・。」
「全然!今回は君のお陰で沢山の人が助かったんだから。海防団の栄誉選人にせめてものお礼だよ♪」
「ありがとうございます!」
朝食後、サクに付いて行き本部へと向かった。
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ジズル・ゾウッドは、新聖アリア王国に戻るための準備をしていた。荷物はないが帰国に必要な書類を記入したり、取り調べの順番を待っていた。
海防団の存在は知っていたが、自分が関わる事になるとはまさか夢にも思っていなかった。
保護してもらえて本当に助かったし、食事や治療など色々と感謝しかなかった。
帰国後を思うと気は重いが、命拾いしたのだから前を向かなきゃ、と悶々と考えていた。
「ジズル・ゾウッドさん、どうぞお入りください。」声がかかり、取り調べの部屋に移動。入ると見覚えのある男の子が待っていた。
「あ、君!」
「ジズルさん!無事でよかった。」
それから少し2人で話をした。
ジズルはバウフル島に来てから快適に過ごしているおかげか、表情は落ち着いていた。
「そうだ。アリア王国に来る時は、私に会いに来てね!約束よ?」
「うん、ありがとう。ジズルさんも元気でね。」
「そうだ、ちょっと待って。これね、私の住んでる所と・・・この腕輪を持ってて。」
「え、腕輪?」
「冒険者になって、新聖アリア王国に来たときに返してくれたらいいわ。んーと、たぶん必要になると思うから。」
「?・・・うん。じゃあ預かるね!そうだ、ジズルさんもハラ王国に来たら僕の家に遊びに来てよ!」
「ありがとう!メイ君も元気でね。」
簡単に別れを済ませ、部屋から出た。ジズルはこれから聞き取りがあるそうだ。
ゆっくり話はできなかったけどまたひとつ、冒険の楽しみが増えたなぁ。
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部屋の外にはテテュスとコヨチールが待っていて、ひとまず寮棟に戻ることにした。
マーブルの部屋に向かおうとしたら、遠くから声が聞こえた。
「おーい!ちょっと待て!はぁ、はぁ。・・・俺は訓練生のシュバルツ・イーストだっ。はぁ・・・クロウさんがお前を呼んでいる!付いてこい!」
『なんか敵意を感じない?コーちゃん、この子何なの?』
『あー・・・あの子はマーブルの事を心酔してるからなぁ。』
・・・また何か巻き込まれ事案発生?
言い放つと同時にシュバルツは一切振り返らず、ドンドン先に進んでいった。慌てて追いかけていくと本部の建物を通りすぎ、入ったことのない所に着いた。
『こっちは犯人達が収監されている棟だよ。』コヨチールが教えてくれた。
『牢獄ってやっぱり地下にあるのねー。』とテテュスが呟いた。
階段を下に降りると鉄格子があり、守衛らしき人にシュバルツが認識番を見せた。守衛が確認した後、格子が上り中へ通された。
部屋の前に立つとノックし、「シュバルツ・イーストです!!連れて来ました!!」といきなり大声を出したのでびっくりした。
『『う、うるさい!!』』と聖霊組のブーイング。
私も耳がキーンとした。
「お、ご苦労だったな。入れ。」とナナミ副団長の声が返ってきた。
「失礼します!!」とシュバルツが入っていくので、それに続いた。
「ようメイ、悪いな。マーブルがお前には聞く権利があるってうるさいから。」
「副団長!今回はメイの活躍で事件が発覚したんですよ!命張ったんだから、少しは教えてやらなきゃかわいそうですよ!」
「兄貴・・・。あの、機密事項もあるでしょうし、無理はしないで下さい。僕は救援に来てくれただけで感謝してますから。」
「全ては話せないが、今後お前は事件関係者になるからな。犯人は全員捕まったわけじゃないから、用心に越したことはない。」
逃げたのは男1人と女1人。そのうち女は仲間を殺している。捕まえた犯人達は、逃げた男が指示を出していたと主張しており、あくまで自分達は一時的に雇われていただけと話しているらしい。
人身売買の相手も結局は不明、とかげの尻尾切りになりそうだと教えてくれた。
「顔は見られていないから、お前は大丈夫だと思うが・・・。逃げた男は聖霊視できる可能性が高い。お前の聖霊とどこかで接触するかもしれない。用心しとけよ?」
「はい。」不安が過る。
「コヨチールも見られてるかもしれないから、俺も気を付けないとな!大丈夫!何かあったら俺が力になってやるから心配すんな。」マーブルが目配せした。
「以上!メイ、お前に話せるのはこれくらいだ。あ、明日にはハラ王国へ行く船に乗せてやれるから今日はゆっくり休めよ。」ナナミは話し終わると部屋を出ていった。
「メイ、今日は食堂で夕飯食おうぜ!おばちゃんに頼んで、豪華な晩餐にしてやるから楽しみにしてろよ?」マーブルは肩をバシバシ叩いきて、明るく振る舞っていた。
「あ、ありがとう。そんなに気を使わなくていいよ。兄貴も忙しいんだし。」
「俺がそうしたいんだって。そうだ!仕方ないから、レドにも声かけとくぜ。」
「うん。皆で食べた方が美味しいからね!」
・・・と、さっきからめっちゃ視線が刺さるんやけど。
「クロウさん!俺、今から休憩なんでメイを部屋へ連れていきますよ!」
「おっ助かる。俺の弟分だから、よろしく頼んだぜ!」
「・・・はい!お任せ下さい!さぁ行こうか、メイ。」
マーブルに背を向けた途端、目が死んでる。顔怖いから!
「じゃ、じゃあ後で。仕事頑張ってね。」
「おう!夜にな。」
またまた無言で、足早なシュバルツ君。
『何あれ?!メイ、ほっといてゆっくり行きましょー!』
『なんかごめんねぇ。普段はもうちょっといい子なんだけど、 兄ちゃんの事になると対抗心出ちゃうみたいで。』
“まぁ理不尽だけど、気持ちはわからなくもないよ。とりあえずついて行こう”
テテュスにさっき触れてもらって、シュバルツ君についてステータスブックで確認した。16歳で訓練生の1人。かなりマーブルに憧れているようだ。
部屋に到着して中に入ろうとすると、何か言いたそうにこっちをみている。話すきっかけを探しているみたい。
はぁ、しょうがないね~。
「あの・・・シュバルツ、君?さっきは案内ありがとう。よければ少しお茶でも飲まない?」
「・・・別に。仕事だしな。・・・まぁちょっとならいいぜ?」
「良かった!どうぞ入って。」
誘ってみたものの、何を話せばいいのやら。