第74話 バウフル島
巣ごもり生活でいつもより漫画読んだり、小説読んだり充実しているけども課金が・・・魔法のカードは恐ろしいですね。。。
島に近付くにつれて、ぞろぞろと団員が甲板に集まってきた。先程の柄の悪い海賊風の雰囲気とは打って変わり、軍隊のような規律性のある行動をとり、思わず圧倒される。
「入港!」の声が聞こえると門が開き、勢いよく船は中に入っていった。
港に着くと、団員達が犯人と助け出された人達を次々に連れて船を降りた。上からその様子を見ていると、マーブルに「こっちに来い、メイ!」と呼ばれ、私も急いで後を追った。
案内されたのは本部らしき建物の横から少し離れた団員専用の別棟のようで、そのままどんどん奥へと連れていかれた。
「あ、兄貴・・・。僕、こっちで大丈夫なの?」
「もちろんだろ!副団長から許可はもらってるしな。安心しろ!俺がついてる!」
コヨチールとテテュスの姿が見えない。“テテ、大丈夫?どこにいるの?”念話してみた。
『コヨチールと一緒にいるの!心配ないから、メイはゆっくりしてていいよ。』
“わかった。何かあればすぐ教えてね”
『はーいっ。』
テテュスの声は落ち着いてるから大丈夫かな?それじゃあ、お言葉に甘えて海防団を見学でもさせてもらおう。
「ここ、俺の部屋。入れよ♪」
気が付くと沢山の部屋がある場所に着いた。その1室で、どうやら個人部屋を割り当てられているらしい。
マーブルって、組織で割りと上の立場の人なんかな?
「お邪魔しまーす。おぉ!」中に入ると1K10畳くらいの部屋で広く感じた。
「まぁ、ゆっくりとしてくれ。自分の家と思って気遣いなんかいらねぇからな。適当に座ってくれよ。」と嬉しそうにしている。
「あ!俺はこれから仕事あるから、この認識番を首からかけておけよ?これがあれば大抵の所には行けるし、飯も食堂で無料で食えるから。夕方までは棟の中か、ここの部屋で過ごしてくれ。昼飯は自分で食いに行けよ!」と早口でざっくり説明した後、走って出て行った。
「ふぅ。」椅子に腰掛けて周囲を見渡す。本棚とクローゼット、ベッドのみのシンプルな部屋。世界地図と、何かの表彰状が壁に飾られている。窓は一つ。入口に小さい部屋が2つとキッチンっぽいのがあったな。
そういえば今は昼過ぎで、寝る前に軽く食べただけやからお腹が空いたなぁ。・・・食堂でも探してみるか。
あ、鍵とか預かってないねんけどいいんかな?悪いと思いつつも、扉を閉めてそのまま食べ物の匂いを辿った。
長い廊下を真っ直ぐ進むと、ロビーに出た。ガラス張りで日の光がはいって明るく、清潔感があった。念話しながら付いていってたから、全然気付かず通りすぎてたんやな。
ボンヤリ立っていると、女性の声がした。
「あ~~君!!メイ君だね?!」テンション高めなその人は、自分の事を『サク・ワダツミ』と名乗った。そして食堂を探していると伝えると一緒にランチをする事になった。
「おば様!今日は裏メニューやってるでしょ?それ2つお願いします!」
「流石サクちゃん♪情報が早いねぇ。ちょっと待ってなさい。」
裏メニューって何やろ?
「アツアツ弁当2つ、お待たせ!」
「うわぁ!ありがとうございます♪」
「はい、これは君の。あっちに座ろう。」
飲み物と弁当を持って、サクに付いていく。海が見える大きめの窓のある席に座った。
「とりあえず、食べよ!頂きます。」
「い、いただきます。」
中身はから揚げだった。パンと野菜があり、サンドイッチのように間に挟んで食べるよう薦められた。
「アツアツで美味しい!」
「結構食べごたえがありますねー。」
食堂のおばちゃんがタイミングを見計らったかのように、食後の紅茶を持ってきてくれた。
ひと息ついて、サクから話を切り出した。
「聞きたいことたっくさんあるんだけど、とりあえず私の事から話すね!」
サクは、第3防隊の隊長らしい。海防団の構成は、団長の下に副団長が2人。その下に第1~5防隊と遊撃部隊がある。因みにマーブルは、遊撃部隊の隊長のすぐ下に当たる右腕、左腕という役職らしい。
1防隊につき大体20~30人いるけど、10人位は新人及び優秀訓練生ですぐに実戦では使えない。だから連絡係りとか当直当番の補充要員らしい。
遊撃部隊は特殊で、10人で構成されていて、3人1組の部隊で行動する。9人の実働隊と新人は1人、なかなか倍率の高いエリート部隊だと教えてくれた。
「あの、一般人の僕にそこまで話してもいいんですか?」
「問題ないよ!これは海防団を目指している人なら誰でも知ってる情報だからね。」
そうなんや、やっぱり色々考えて話してるんやなぁ。
あと今回の任務は公式なものではなくて、ナナミ副団長の私用任務。本来なら船を出して応援に駆けつけるのはご法度。でも志願者が多かったので、皆が無理矢理休みをとって休日を利用した海上視察兼、団員同士の交流会だと理由をこじつけて出てきたんやって。
「皆、ナナミ副団長を慕ってるから。副団長の窮地に何か出来ることはないかって必死に考えたのよ。」と一通り話終えると、チラチラと視線を送ってきた。
「あ、えっと僕ですか?僕は特に何も・・・。」
「またまたぁ!噂になってるよ~。君の聖霊ちゃん!」
「あ、あぁ。聖霊使いってそんなに珍しいんですか?」
「昔はそこそこいたみたいだけど、ここ100年前後でめっきり数が減ったからねぇ。」
「聖霊視ができる人は結構いるんですか?」
「ハッキリとは分からないけど、魔力の高い人とか稀に魔力がなくても見えたり感じたりする人もいるしね。でも、少なくなってるって聞くよ。視える人は少ないと思う。」
私の場合は、神さまギフトやしなぁ。
「それより!君は海防団を目指さないの?!というより、海防団に入るべきよ!」
「は?」
「勿体ないよ、その能力。水の聖霊使いなんて海防団にピッタリじゃない!」
「うーん・・・僕は冒険者になるって決めてますから。」
「え!なんでその年で、しかも両親もいるんでしょ?それに海防団にも強力な繋りがあるのになんで冒険者なのよ?」
「どういう意味ですか?」
「冒険者っていうのは、基本的に後ろ楯がない人とか、誰でも就ける仕事なの。まぁ、危険だから長く続けるのも難しいわね。」
「そうなんですか。世間ではそんな風にみられるんだ・・・。」
「あ、いや・・・うん・・・。嘘ついても仕方ないから言うけど、職業としてはあまりオススメできないわ。」
「サクさん、色々教えてくれてありがとうございます!」
「え、そんな大したことじゃないわよ。」
「僕ははっきり言ってくれる人が好きなんです。世間的にどうとか、僕はあまり気にしない性格みたいなんで話を聞いてもやっぱり冒険者になりたい気持ちは変わらないみたい。だから、海防団には入りません。」
「ぷっ、あははは!そっか。うん、うん。マーブル君が気に入るのもわかるわ~。」
「誘ってくれたのは本当に嬉しかったです。」
「まぁ、海防団も国政とは切り離せない世界だからね。安易に入団を薦めたりして悪かったわ。」
「そうだ。助けられた人達と話せますか?」
「今すぐには難しいけど、2~3日すればそれぞれの国に帰る手続きが始まるから、その時なら話せると思うわよ?」
「ありがとうございます!気になる人がいて、今回の作戦を手伝ってもらったからお礼を言いたくて。」
「女性なら私の部隊が担当するから、確認してあげる!」
「助かります、ジグザっていう人です。」
「ジグザさん、ね?何か分かったらマーブル君に伝えておくね!」
「はい!よろしくお願いします!」
そのあと棟内の説明を大まかに教えてもらい、サクとは食堂で別れた。