第73話 船上にて
ゴールデンウィークとはいえ、毎日自粛( ´△`)でも今こそ、執筆に精を出すぞー!
「お前らよくやった!助かったぜ!!さぁ祝いだー!」
「「「「「おぅー!!!」」」」」
ナナミの掛け声の後、団員達は手に持った酒を飲み始めた。疲れて眠かったけどマーブルにズルズルと甲板へ連れ出された。
「さ、メイも飲んで食え!」私は水と、パンや干し肉を渡されたので口にした。
「今回の海防団栄誉選人は・・・メイーーー!!お前だぁーーー!!」
「「「うぉー!!!」」」「「「イャッホーーー!!!」」」「「「やったなぁ!!!」」」
物凄い歓声が上がり、食べかけていたパンを喉に詰めそうになった。頭に響く・・・しばらくそっとしといてくれへんかなぁ、ほんまに眠いし。詰め寄ってきた団員達は酔いが回り、異常に盛り上がっている。
疲れてフラフラの私に代わり、マーブルが対応してくれた。おかげで食べた後すぐに休ませてもらえた。ありがとう、兄貴!!
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“久しぶりやなぁ~、なぁ?なぁ?おーーい、気付いてるんやろ?”
・・・もはや懐かしささえ感じる。この展開、覚えがある。
“ええお知らせ持ってきてんけどなぁ。起きてくれへんと発表できへんわぁ”
視線を感じるとはこの事か・・・・・めっちゃ疲れてるねんけどしゃあないな。
「お久しぶりです、恵比寿天さま。」
“やっぱり起きてるやん!なんか楽しそうに生きてるやん、自分?”
「はい!神様達の加護のおかげで楽しく暮らしてます。本当に感謝してるんです。あと、恵比寿天さまに前世の能力を頂いたおかげで大切な家族や仲間ができました!ありがとうございます!! 」
これはほんまの気持ち。称号で『霊体との媒体』がなかったら、聖霊と“同化”なんてできなかったやろうからね。
“そうやろ?!な、ゆった通りやろ~♪あ。そうや、本題があるねん! ”
「?」
“今度はな、弁財天にもちゃあんと相談してきたから大丈夫やで?ユニークスキルってあるやん?あれに追加決定しました~”
「そういえば、あんまり意識してユニークスキル使ってなかったです。すいません。」
“ええねん、別にかまへんねん!スキルってまぁ剣術や魔法に比べたら、目に見えへんからなぁ~うっかり使い忘れるもんやねん”
ええんか?それで。
“どんなスキルかというと~『釣り人』やでぇ”
「つ、釣り人ですか?」
“あ、今何の役に立つねん!って思った?思ったやろ?でもな、あんさん結構海とか水に関係が深いやん。水の聖霊とも仲良ぉなってるし。バイトも漁師見習いやし”
「そうですね。まぁ、冒険者になるための資金集めでやってたんですけど。」
“今回も海で色々やっとったみたいやし、儂からの贈り物や”
「ありがとうございます!」
“釣り人スキルあったら何でも釣れるでぇ。トユトユも海での落とし物やらお宝なんかもレベル上げたらいける、はず・・・”
「それってミニゲームでよくある感じですか?!すっごい嬉しいです!!」
“まぁ、自分次第やけどな?お宝とかは保証できへんけど。あ、これはオート機能にしとくから!暇みつけたら、釣りして腕上げや~”
釣り○カではないけど、食料に困らんならありがたいわ。
「はい、精進します!」
“ほんじゃ達者でなぁ”
「ありがとうございましたー!」
いつものようにふわりと消えてしまった。なんだかんだでお世話になってるなぁと思いながら見送った後、私も再び眠りについた。
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「ん~トイレいきたい・・・。」目が覚めると部屋では他の団員も寝てて、酒臭いしいびきがうるさい。よくこんな中で寝れたな、私。よっぽど疲れてたんやな。
船内のトイレは船尾の端っことかで小の方をして、大の方は昔のボットン便所(垂れ流し式便所)みたいな感じで小部屋がある。
別にボットン便所で用を済ませてもいいねんけど、どうも男ってのは立ってする事にこだわりをもってるから、いじられないために私も極力周り合わせてはいる。本当は座る方が気持ち的には楽やねんけど。
廊下を出ると他の部屋からも寝息や話し声が聞こえ、とりあえず船尾の方へ向かった。
出入口を探してウロウロしていると、長身の男性が出てきて「どうした?」と声をかけてくれた。目的を話すとそこまで連れて行ってくれた。
用を足しながらふと、あの人がマーブルのライバル『レド』かなぁと思った。
船尾から甲板に出ると、数人が見回りと船の操縦をしていたので、邪魔にならないように人の気配のない海の見える場所を探してボーッとしていた。
『起きたのね。身体は大丈夫?』声のする方を見るとテテュスが横にいた。
“あ、テテおはよう。もうお昼かな?昨日はお疲れ様!テテ、色々ありがとう”
『メイもお疲れ様!今回は大変だったわねぇ。でも人質だった人達が全員無事なのは凄いわ!皆が力を合わせたからできたことね。』
“本当だね。海防団の人達がいなかったらどうなってたかわかんないよ”
『あ、ネイマもね、一定の距離を保ちながら付いてきてるから安心して!』
『おはよーメイ!こっちは心配しなくていいからね~♪』ネイマが念話で返事する。
“わかったー。しばらくの辛抱だから。本当にごめんね”
『気にしないでいいよ~。のんびり遊んでるから!』
『ふふ、そうよ。ネイマの事は私も気にしてるから、まずはこれからの事を海防団の人達と相談して。無事にハラ王国に帰らなきゃね!』
“だね。まぁ転移魔法で帰れないこともないけどね”
『まだ無理しちゃダメ。疲れをしっかりとってからでないと!』
“はーい”
「ちょっといいか。」ドキッとして後ろを振り返ると、さっきの長身の男性がいた。
「は、はい。」ちょっと緊張した顔で見るといきなり謝られた。
「あ、すまない。驚かせたか?・・・お礼が言いたかった。副団長に協力してくれてありがとうな。ついでに マーブルにも付き合ってくれたそうで、海防団として礼を言う。」
「そんな、僕は殆ど何もしてないんです。僕の聖霊やナナミさん、 兄貴が頑張ってくれて・・・。こちらこそ、ご協力頂いて本当にありがとうございました。きっと僕1人じゃあの人達を助けられなかったから。」
「俺は『レド・アジータ』と言う。よろしく、頼む。」スッと手を差し出された。
「ぼ、僕はメイ・パレットです。こちらこそ、よろしくお願いします!」
間近で見るとやっぱり緊張する。この人、正統派美男子!!ヤバい、ドキドキして手が震える。
「怖がらせてる、か?すまない・・・。」うわぁ、しょんぼりしてる姿!良き!!
「ち、違います!!会ってすぐの人にこんな事言うのも変ですけど!誤解されているのでハッキリと言えますよ?」
「あ、あぁ。何だ?」ゴクッと生唾を飲み込むレド。
「僕が言うのも何ですけど、恐いんじゃなくて、格好良すぎるんです!つまり美形なんですよ、レドさんは!!」興奮して、大声を出してしまった。
声の大きさに驚いてるのもあるけど、何を言ってるのか分からない風の表情をしている。
「す、すみません。思わず声を張り上げてしまいました。えっと、ご自身ではどう思われているかわかりませんが、貴方は一般的に美男子なんです。めちゃくちゃ容姿が整っていて、いわゆる王子様みたいな顔立ちなんですよ。」
ようやく声を絞りだし「お、王子?みなしごの俺、が?」と何言ってるんだコイツと分かりやすい顔をした。
「実際の身分を言ってるんじゃないんです。見た目を例えたんですよ!男の僕でも緊張するレベルの美しさです。相手が女性なら 殊更緊張します。失神レベルですよ!」
「し、失神?!それ、嫌われてないか?」
「も~~、レドさんは 鈍ちんですね!どちらかというと好意を持つ方のが多いはずです。まぁ、嫉妬する 輩もいるでしょうけど。」
「うーん・・・。そうなの、か?分からないが、メイは俺が怖いわけじゃないんだな?」
「もちろんです!!むしろ、格好良くて羨ましいですよ。」
「あ、え?!あー・・・そうだ。後でまた、話せるか?」
「はい!またゆっくりと話しましょう。」
「あーいた!!!あ?!レド!お前、メイをいじめてるんじゃないだろうなぁ?!」
「うるさいのが来た。またな、メイ。」
「はい。」
猛ダッシュでマーブルが来た。「何か言われたのか?!」
「違うよ。便所の場所を教えてくれて、親切にしてもらったんだ。」
「そうか・・・。あ、もう疲れはとれたのか?」
「うん!ちょっと回復したよ。さっきも兄貴のおかげですぐに横になれたし。ありがとうね!」
「おっそうか?!そりゃよかったぜ!」
「あとどれくらいでバウフル島に着くの?」
「もうすぐ着くぞ!それで呼びに来たんだ。ほらあれだ!」
遠く、マーブルが指差すと要塞のような建物がいくつか見えた。