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第72話 救出大作戦④

早く自由に外で活動できる日が来るといいなぁ・・・。

船上では2度目の衝撃の後、船が傾き沈み始めていた。セヨハンは船長室に戻り、隠していた金や貴金属類を持ち出そうとしていた。その隙を見てギンはキンを引っ張り、夜の海に飛び込んだ。


ドボンッッ!!


「あっ!・・・レラ!!私達も逃げるよ!!」

「ラ、ララさん・・・ごめんなさい・・・。何度も助けてくれてあ、ありがとう。でも私・・泳げないんです。だから・・・先に逃げて。」


レラはララに向かって精一杯頭を下げた。


ララは一瞬黙ってその姿を見つめた。・・・助けたつもりなんてない。でもレラを見ていると故郷の兄弟を思い出して勝手に身体が動いてしまう。たぶん・・・自分だけならなんとかなる。泳げないレラを連れてこの暗い海を進むのは自殺行為だ。


「お前ら!!こっちに来て手伝え!!」鬼気迫る表情のセヨハンが、船長室から大きな荷物を持ってこちらにのっそりと向かってきている。


それを見た瞬間、ララはレラを連れて海に飛び込んでいた。


「あっ?!お、お前らーーー!!!」


ズドボンッ!!ゴボゴボゴボゴボ・・・。


ララはセヨハンの声が聞こえた気がしたが、ざまぁみろ!と胸のすくような気持ちだった。同じ奴隷の身分のくせに、毎日男達に虐げられ怒り、悲しみ、諦めていたけれどこの瞬間、ようやく解放されたと思った。


“もう、いいや・・・。ごめん、レラ・・・”と思っていると、グイグイと腕を引っ張られるような感覚。


ゆっくりと目を開けると視線の先には、必死で海の上へ上がろうともがいているレラの姿が目に映った。

泳げないのに自分の腕を強く掴み、ジタバタともがいているのを見て急に“生きなきゃ!”という衝動に駆られた。


2人してなんとか海面に出られたが、レラが上手く息継ぎができないので溺れている。周りを見回し掴まれる物を探した。


焦げた木の板を見つけレラに渡し、掴まらせて身体が浮くように、というかじっとして動かないよう声をかけた。

「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・。」」


2人とも言葉が出ず、少し先の紅く燃えながら沈みゆく船を眺めていた。


―――――――――――――――


ナナミは突然「“ 浮遊(フロス)”」と唱え、夜の海から飛び出した。


右の腕輪が硬くなり、仲間が近付いているのを感じたのだ。

「“ 火玉(ファイヤ)”」と上空に放ち、居場所を知らせた。


「メイ!マーブルはどうなってる?!」

『すぐ近くにいるよ!』

「もうすぐここへ来るそうです!!」


「分かった!“火玉(ファイヤ)”!!」と更にもう1発魔法を放った後、「船の近くに行くぞ!」と上空を移動し始めた。


『来た!』テテュスが目の前を指し、マーブルとコヨチールが海面に顔を出した。


「副団長ー!!やりましたよー!!」手を振って合図している。

「マーブル!!よくやった!」


人質になっていた人も海面にポツポツと顔が見えた。

『犯人達は逃げちゃったー!』コヨチールが悔しそうに叫んだ。

「すいません!犯人達までは手が回らなくて取り逃がしましたー!」


「そっちは後でいい!お前ら、よくやったぞ!!」ナナミは海面に顔を出した人々に向かって「俺達は海防だ!もうすぐ助けがくる!あと少し頑張れ!」と声をかけた。


事態が動き出し、状況の把握が必要だった。

感知(ディテクト)


人の生体反応に集中して確認。犯人達は・・・え?5人?あと2人は・・・分からないな。あれ、10人くらい?凄い勢いで近付いてくる!


「来たな。」ナナミが呟くと遠くから、ゴォォー!!と音が聞こえ「・・・ちょー!副団長ぉぉー!!」と段々声が大きく響き渡った。


「うるっせぇ!!ここだ!」とまた火魔法を使うと、闇夜に大きな船が姿を現した。


「サク・ワダツミ!1番に参上致しました!!」

女性が先頭に立ち、船首からブンブンと手を振っている。


その女性を押し退けるように隣に立ち「副団長!ご命令を!!」と、長身の男性が敬礼をしていた。


「よし!まずはここにいる人達の救助が優先だ!取り掛かれ!!」


「「「「「了解!!」」」」」


「“点灯(ライト)”!」暗い海面を明るく照らす光が円形に広がり、次々に海に飛び込んで人質を「浮遊(フロス)”」で船に運び込んでいく。一方、ロープで引き上げたり、マーブルがアクアベールで強化した海防団員が海中にいる人を救い出していた。


―――――――――――――――


その間にナナミと私とテテュスは、沈みかけている船の近くまで来ていた。私はディテクトを使い、分かる範囲で犯人達を探す。


火は船全体にまで広がり、周りに小さな渦が出来始めている。生体反応が1番近い2人を見つけ、ナナミに告げる。

あくまでテテュスが見つけたことにして、やけどね。


「“水膜(アクアベール)”」焦げた床板らしきものに掴まりながら、意識を失っていた女2人に水魔法をかけ、ナナミがフロスで救助した。小舟でナナミの後を付いてきた部下に2人を預け、残りの捜索に向かった。


次に見つかったのは、男1人。燃え盛る船から叫び声を上げて救助を求めていた。

「早く助けてくれー!ここだー!!」小舟の団員に拘束するように指示し、船の周囲をしばらく見て回った。


「なかなか見つけられねぇな・・・。」ナナミが舌打ちする。


まだ辺りは暗いため視界が悪い。船はほぼ沈んでしまったし、もうどこを捜したらいいかわからない状態だった。


“ネイマ、見つかった?”こっそり念話で話しかけた。

『うん!ヘロヘロになって泳いでいるっていうか、浮いてるよー。』


逃げた犯人達の生体反応の確認がとれた時に、ネイマとテテュスにそれぞれ追いかけてもらってたわけ。


「あの、ナナミさん。陸地と海側と別れて探しませんか?もしかしたら見つからないかもしれないけど、可能性はありますし・・・。」


「・・・そうだな。お前は海側を頼めるか?俺にはよく見えないからな。聖霊が付いてるお前のがまだマシだろ?」

「はい。じゃあ1時間くらいで一度集合ってことでいいですか?」


「そうだな。フ島のあの桟橋の所に集合だ。」

「はい!」


ナナミは小舟に戻り団員達と合流、私はテテュスとネイマの所に移動した。


―――――――――――――――


空中から下を見ると男2人がいた。1人は完全に気を失っていて、もう1人が必死になって前に進もうとしていた。

「はぁはぁはぁ、うっ・・・はぁ、はぁ、ぶぐっ・・・ぶはぁっ。」


辛うじて動けている男もすでに限界を超えていた。


「あの2人か・・・。」“浮遊(フロス)


「うわぁ?!はぁ、はぁ、はっ・・・。」もう1人も完全に気を失ったようだったので、フ島の桟橋へと急いだ。


―――――――――――――――


桟橋にはまだナナミ達は到着しておらず、テテュスが海に様子を見に行った。


“ネイマ、お疲れ様!助かったよ”

『へへっ。テテも頑張ってたからね!僕も負けてられないよー。』


“そういえば、この2人は兄弟じゃなかったっけ?”

『んー。あ!そうだね。逃げるって言ってた人達だね。』


“・・・。でもあと2人に逃げられたぁ!悔しいなぁ”

『でも誘拐された人達は助かってよかったね!』


“そうだよね。ネイマやテテのおかげだよ。本当にありがとう!!”

『メイもお疲れさま~。ホッとしたでしょ?』


“うん。船の皆に迷惑かけたから、これで失敗したらと思うと結構プレッシャーだった”

『後でゆっくりしようね!』


テテュスがもうすぐ着くと知らせてくれたので、ネイマは再び離れていった。


―――――――――――――――


しばらくしてナナミ達と救助を終えた海防団の船が迎えに来た。


「メイー!無事だったか?!」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう。」


マーブルとコヨチールが心配そうに駆け寄ってきた。これからの事も含めて、私も海防団の本部へ連れて行かれることになった。

「滞在中のお前の面倒は俺が見てやるから!安心しろよ!!」とマーブルがかなり張り切っていた。

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