第63話 守護する者達
年内更新分は本日で終了です。今年一年、マイペース更新なのにお付き合い頂きましてありがとうございました!よいお年をお迎えください♪
日も落ち、辺りは薄暗くなってきた。
宿代の支払いは済ませているため、このまま船内に残ることもできたが、やはりあの泥棒からお金を取り返すことを思案していた。
闇魔法で姿を隠したら何とかできるかもしれない。
ゴウはぐっすり眠っているけど、しばらくしたらお腹がすいて目を覚ますだろうな。よし、夜中まで待とう。
“ネイマ、テテ。夕飯の買い出ししてくるよ”
『僕も行く!』『じゃあ私はゴウと荷物を見ておくわね。』
適当に露店を回って、食べ物を調達。もちろん、ゴウの分もね。
案の定、匂いにつられてゴウは起きてきた。食事をしながら、さりげなくいくら盗まれたかを確認する。
『メイ。何か企んでない?』『そうそう!あの泥棒の所行くつもりでしょ?!』
・・・やっぱり2人には隠し事できへんなぁ。
“夜中に取り戻しに行くつもりだよ。カコに闇魔法教えてもらったからさ。試してみようと思って”
『危ないよー。』『お金を取り戻すだけなら、私達に任せて!』
“ダメだよ!もしグレさんみたいに聖霊が見える人がいたら大変だからね”
『じゃあ皆で行こう!』『それがいいわ♪』
“・・・わかったよ。よろしくお願いします!”
「あー、腹一杯!メイ、俺はもうここで寝る。お前も居るだろ?」ゴウがベッドに寝転がってあくびをした。
「う、うん。僕もそうする。明日は早朝に出発だしね。」
「よかったー。2人なら安心だな!じゃ、おやすみぃ。」「もう寝るの?おやすみ。」
灯りを消して、私は寝たフリをしていた。
波の音が心地よく、しばらくするとうつら、うつらとまぶたが重くなっていくのを感じた。
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「ん・・・。外明るい・・・?」
寝室の窓から、朝日が差し込んでいた。
やってもうたー!!普通に寝てしまったやん!
“ふ、2人とも・・・いる??”
『おはよー!』『ふふ!おはよう。』
ネイマもテテュスも朝食を済ませていた。
“本当に昨日はごめんね!完全に眠りこけてしまってたぁ”
『いいのよー。メイも疲れてるんだから!』『僕達で取り返して来たからね♪』
ネイマがいきなり小袋を見せた。
“えー!2人で行ったの?!大丈夫だった?!”
『うん!泥棒を見張ってた時に隠し場所も確認してたんだ。』『そうなのよ。あいつら、仕事終わりにお金を触ってたからコッソリ返してもらってきたわ♪』
ドヤ顔で2人は話してくれた。
“嬉しいけど、あんまり無茶はしないでよね”
『これくらい大したことないよ?』『そうよ。もっと私達を頼ってくれていいのよー。』
“ありがとう。とりあえずゴウのは荷物に入れとこうかな”
『そうだね。説明できないからねー。』『きっと不思議がるでしょうねぇ。』
そんな念話でのやり取りをしていると、ゴウも起きてきたので先に出港準備に取りかかった。ある程度終らせて、朝食を食べていたら船長をはじめ、船員達がやって来た。
「お前らここに泊まったのか?」モリー船長に聞かれたので、水浴びをしてたら服とお金を盗まれた事を話した。
「あははは!!そりゃお前らが油断しすぎたな!どこにいても自分の身や物は自分で守ること、警戒心は怠るな。ま、いい経験になったんじゃないか。」
モリー船長に言われて、あっけにとられると同時に、改めて平和ボケしてる自分に気付かされた。
日本も基本安全やったし、きっとこれまでの国も運が良かっただけなんやなぁと思った。だけど、泥棒する奴らが悪いねんけどな!
”船長が1時間後に出港する”、と宣言したので急いで食べ終えた。
私もゴウもあと数日、フリナドゥ諸島を廻るのかと思うと、かなり気が重かった。同時にこの国が最後だから、楽しめない自分がもったいない気もして、空元気を出すのだった。
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『今回はちょっと気を付けておいた方がよさそうね。』テテュスがネイマを見た。
『うん。他の島でも何かあるかもしれないからね。』ネイマも頷く。
ネイマとテテュスは、大抵いつもメイの近くにいる。たまに聖霊の姿になって、お互い自由に過ごすこともある。
そんな時、遊んでるようにみせてはいるが、実は船やメイに危険が及ばないよう対処していたのだった。
ここまで航海が順調だったのも、2人が人知れずメイ達を守っていたからだ。
サンカクラークみたいな生物がほとんど現れなかったのも、近付いてきたら海流を変えて遠ざけたり、荒くれ者が船を狙っていたら、強風を起こして撃退していたのだった。
聖霊コンビの影の活躍によって、この航海はかなり順調に進んでいた。
メイはもちろん気付いていないが、モリー船長やキララ3兄弟は今回の漁が順調すぎるので逆に警戒を強めていた。
フリナドゥ諸島を選んだ理由のひとつはこの遠洋漁業を最後まで無事に終えるため、この国をまとめる者に通行料を支払い、出来るだけ厄介事を避けようとしていた。
この海域は海賊が頻繁に出没する。ハラ王国に辿り着くためには通らざるを得ないが、殆どはフリナドゥ諸島の住民がなりすまして襲っているのが現実だ。
闇ギルドもあるため、各国の王や統治者達はここを排除したいと思っていた。しかし、闇市は普通の流通では手に入らないものを売買するのには都合がよく、グレーな存在として黙認されているのだった。
フリナドゥ諸島は島ごとに 島主がおり、そこに通行料を支払うことである程度安全が確保出来る仕組みになっていた。島主達は制約はあるが自治権も認められているため、小国の独立国家といってもいい。そして宿や店を利用しお金を落とすことで、住民達の懐を暖め、船を襲わせないようにしているのだ。
「あー!さっさっとここを出てぇー!!」モリー船長が叫んだ。
「落ち着け。まだこれからだ。」カイトが諌める。
「俺もここの奴らのやり口が嫌いだぜ!」ライトは腕を組み、ドカッと椅子に座った。
「毎回ここへの支払いは高くつくよなぁ。ま、ここらの海域は魚は豊富だからそれだけが救いだけどな。」ナイトは船長室の窓からを海を見ていた。
「 船員達にも負担をかけるが、ここが正念場だ。お前ら、頼むぞ!」
「「「おう!!!」」」
キララ3兄弟は、何よりもマリオンが心配だった。
女性という意識が今一つ本人には欠けているので、自分が襲われるという危機感が薄い。しかも他の場所に比べてもここは、人攫いや女子供が狙われる可能性が異常に高い。ナイトだけでは守り切れないかもしれないため、この海域を通る時だけは絶対にマリオンから離れないと3人で決めていた。
優先されるべきはマリオン。兄弟の誓いであった。
来年の更新は、1/1~1/3の3日間連続をお年玉企画として予定しております!お暇潰しにぜひどうぞ(*´∀`)つ