第54話 今だ!!!
今週も更新できました♪いつまで続けれるか・・・。
「間もなく第2試合が始まります。皆様、ご着席下さい。」王家の魔法使いの呼掛けがあり、ざわつく会場内。
V.I.P.席にも人が戻り始め、再びコロッセオに緊張が広がる。
テント内は沈黙が続いていたが、すっと立ち上がり、ウィルソンが先に外へ出て行った。
フレッドも深呼吸をし、その後を追った。
ウィンデルは2人を見送り、朝と同じように剣に祈りを捧げていた。
しばらくして国王の第2試合を告げる声が聞こえ、テントを後にした。
「第2試合、ウィルソン・マレ・リベロ!前へ!」
「はっ!!」
フレッドと向かい合い、剣を構えた。
国王が「始め!」と発すると、「うおぉーー!!」と剣を思いっきり振り下ろした。
「ぐぅぅっ・・・。」ウィルソンの剣をなんとか受け止めたが、身体中にビリビリとした痛みが走った。
“こんなの何度も止められない・・・!”
フレッドは次、勝負に出ようと決めた。
ウィルソンは余裕の表情で、ゆっくりと構え次の一撃を繰り出した。ワンパターンの上から振り下ろすだけの攻撃。
これを待っていた。
ウィンデル兄様は高速の剣だから、何度も攻撃をいなすのは無理だと思っていた。仕掛けるならウィルソン兄様の一撃必殺の剣が今回の作戦には向いているだろうとメイからも言われていた。
“兄様に悟られないように、直前まで受け止めるつもりでいく!”
フレッドも私もネイマもテテュスもここだと思った。
“『『今だ!!!』』”
渾身の力が込められた一振りをなんとか剣でいなし、反動で斜め横に移動。
ウィルソンは虚をつかれたが、体勢を立て直そうとしていた。フレッドはすかさず受け身で後ろに回り、一気に背後から突きを決めた。
“必殺 受け身返し!”
ウィルソンが振り向こうとすると、背中に剣先が触れるか触れないかのギリギリで止まっていた。
始まってまだ5分くらい。
コロッセオ内はシーンと静まり返っていた。
「そ、そこまで!!」国王が試合の終わりを告げるとドッと歓声が上がり、観客は惜しみない拍手を送った。
フレッドは剣を収めた。ゆっくりと立ち上がろうとすると、ウィルソンが手を伸ばした。
「ウィルソン兄様・・・ありがとうございました。」
「おめでとう。よかったな!」
「はいっ!」涙が止まらなかった。ウィルソンがフレッドの肩に優しく手を回し、テントへと誘導した。
『やったー!』
『うぅ・・・ほんとによかったわねぇ。』
「うん、よかったぁ・・・!」
無事に成人の儀が終了し、その場にいた全員が喜んだ。
「これにて成人の儀を終了します。」
大騒ぎのコロッセオ内では聞こえにくかったが、魔法使いの声がして一般客がぞろぞろと退場し始めた。
国王や王妃は?と思って辺りを見回したけど、いつの間にか闘技場に馬車の迎えが来ており移動をし始めていた。
『フレッドとは会えないかしらね。』
『今日は難しいかもねー。』
“この国を出る前にもう一度会いたいね”
特別席は人が少ないからいつでも外に出れたけど、モリー船長やゴウと鉢合わせすると面倒なので一番最後に移動することにした。
ボーッとしていると執事のサキシタに声をかけられた。
「フレデリック様がお待ちでございます。一緒に来て頂けますか?」
「あ、はい。」
案内されたのは、闘技場内に設置されたテントだった。
「フレデリック様、メイ様をお連れ致しました。」
「ありがとう。入ってもらって!」
「失礼しまーす・・・。」
一応声をかけて入ると、キラキラした笑顔でフレッドが立っていた。
「メイ!!」
「フレッド!良かったね!おめでとうー!!」
手を挙げてハイタッチの動作をすると、不思議そうにフレッドも手を挙げてくれた。
「やったね!」パチンッと手を合わせると「はは!」と声を出して笑っていた。
「んっ!んん!!」と咳ばらいが聞こえ、フレッドの後ろに兄ちゃん達がいることに気付いた。
「あ、僕の兄様達を紹介するよ。こちらがウィルソン兄様で、こちらがウィンデル兄様だ。」
「メイ・パロットです。こんにちは。」
「弟が世話になった。感謝する。」椅子に座ったまま、弱冠威圧感のあるウィルソン。
「フレデリックに飲ませたあの回復薬は一体何なんだい?」興味津々で、気さくな感じのウィンデル。
「あの回復薬はよくわからないんですけど傷も治るんです。旅の途中でたまたま数本手に入ったものなんですけど・・・。」という事にしておこう。
「ウィンデル兄様。あれは最後の回復薬だったみたいなんで、メイの手元にはもう残ってないそうなんです。」
フレッドがすかさず援護射撃。
「そうか、残念だな・・・。残っていたら高額で買い取ろうと考えていたのだが・・・。」
小声で「ウィンデル兄様は、薬草の研究とか実験とか好きなんだ。」とフレッドが教えてくれた。
「これから国王より成人の儀を終えた証を賜る事になる。フレデリック、友と喜びを分かち合うのはそのくらいにしておけ。」
「はい、ウィルソン兄様。メイ、悪いが後で時間をとってくれないか?ぜひ夕食に招待したいんだ。」
「え!・・・時間はいいけど・・・かしこまった席で食事なんかできないなぁ。お誘いは嬉しいんだけど。」
『美味しいもの食べたーい!!』『行こうよ!行こうー!』ネイマとテテュスが大合唱。
「大丈夫!私と2人での食事だから。母様や兄弟と一緒に食事することは滅多にないんだ。」
「ん?聞いていないのか、フレデリック?今日だけは父様達もご一緒されるはずだぞ。」とウィンデル。
「そ、そうなのですか・・・?」
「当たり前だろう。息子が無事成人の儀を終えたのだ。祝って下さるに決まっている。そうだな?サキシタ!」ウィルソンがテント前で控えている執事に大きな声で確認した。
「失礼致します。ウィルソン様やウィンデル様のおっしゃる通りにございます。メイ様とは明日、お2人で祝賀会をなさってはいかがでしょうか?」
「うーん・・・そうだな。すまない!メイ、明日でも構わないか?」
「もちろん!今日は大事な日だもん。家族でお祝いしないとね!」
「ありがとう!ではまた詳しい事は招待状を宿に届ける。」
「うん。じゃあこれで失礼します。」
王子様達に挨拶して、テントを出た。
『なんかよかったね!』『フレッド嬉しそうだったわね♪』
”さぁ!2人がお待ちかねの屋台にでも寄って、僕らも宿屋でフレッドのお祝いしようか!”
『『やったー!!』』
大量に買い込み宿屋に着くと、大興奮のゴウとロゼが待っていた。
モリー船長の事もあるので、フレッドの事を話したらかなり驚いてたけどちゃんと口裏合わせの約束をしてくれた。それからも話は尽きず、皆で夜遅くまで盛り上がった。