第46話 故郷
通常更新に戻ります♪
『マリオン・モリー』は久しぶり、といっても半年くらいだが故郷に戻りいつもの所へと直行した。
「父さん、母さん!ただいま!」
一族が眠る墓に向かって、今回も無事に航海と漁が終えるようにとお願いした。そして、前回から今までの出来事を報告した。
「はぁー・・・。」一通り報告した後、地面にひっくり返り青い空を見上げた。
”疲れたぁ・・・。”
皆の前ではいつも気を張っている。
どれだけ頑張っても毎月くるあの日だけは・・・。どうしても気持ちが不安定になる。身体もしんどい。今がちょうどその時だった。
自分が女なんだと、自覚すると同時に周りは男ばかりだから気持ちを共有できる人がいないのがちょっと辛い。気が緩んだせいか突然寂しい気持ちが襲ってきた。
”母さん、会いたいよ・・・。父さん・・・。”
両腕で顔を隠した。「うっ・・・ひっく・・・。」
少し離れた岩場と木陰で、『カイト・キララ』と『ナイト・キララ』はその様子を見ていた。ナイトが飛び出そうとしたので抑え込んで、口を塞いだ。
”何すんだよ兄貴!!”
「バカ。そっとしといてやれ。」小声で弟を 窘めた。
何かあっては、と付いてきたがここは1人にした方がいいと思いナイトを抱えてその場を去った。
「あ~~・・・スッキリしたぁ・・・。」何分泣いていたのかわからない。
でも溜め込んでいた感情を全て出し切ったようで、身体が軽くなった。
「よーし。おばさん達に挨拶してくる!また来るから!!」と立ち上がり、帰りを待ってくれている人達の元へと向かった。
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「あの、銀貨7枚と銅貨30枚に交換お願いします。」
「金貨1枚だね?ちょっと待ってね~。」
私達は下の階のギルドで両替をしてもらっていた。『グァレンド・バズゥー』と契約精霊のフラウと別れた後、ギルドの掲示板を見たり、冒険者達の話を聞き耳立てながら換金の順番を待ったりとギルド見学を楽しんでいた。
『早く冒険者になって古代の魔道具とかレアアイテムを見つけたいねー。』
『海の中とかなら、かなりお宝が眠ってるんじゃない?!そうなったら私の出番ね♪』
”気が早いなー。まずはコツコツと冒険者ランク上げていかなきゃ。まぁ依頼は関係なく探索するのはありだけどね。”
「ハイよ。確かめておくれね。」ギルド嬢というよりはかなり年上のお姉さまが交換したコインとおまけに回復キャンディをくれた。
「はい、確かに銀貨7枚と銅貨30枚。おまけもありがとうございました!」
「ハイハイ。またおいで!じゃ、次の人~。」
回復キャンディをパクッと口に入れると『あ、いいなーメイ!』『私も食べたーい。』
”わかってるよ~。じゃあ屋台にでも寄ろうか!”『『賛成ー!』』
スリに持っていかれないように銅貨10枚だけ残して、あとは小袋に入れてお腹に巻き付けた。人通りの多い方へ向かうと、食欲をそそるいい匂いがしてそれにつられて歩いて行った。
”何食べたい?1人銅貨2枚だよ!”『『オッケー。』』
2人は食べたいものを探しに行った。何気なく周りを見渡すと、人族、獣人族、エルフ族、ハーフ系の人達も色々いて、ガラはよろしくないけど皆表情が活き活きしている。
ここは案外住みやすいかもなぁ。私も日本で下町やったから、ここの雰囲気は懐かしい。
「兄ちゃん!突っ立ってないで、何か買っていってくれよ!」
後ろから声をかけてきたのは、店番をしている男の子だった。
店に並べられていたのは、大きい貝と小さい貝、それと魚が少し。あれ?これ、ホタテっぽくない?
「これ、何て食べ物?どうやって食べるの?」
「大きいのはクウ貝、小さいのはマイ貝っていうんだ。魚はわかんねぇ。けど、全部焼いて塩をつけて食べるとおいしいよ!安くするよ!」
「うーん・・・。じゃあ銅貨2枚で買える分だけお願いするよ。」
「ありがと!」と、クウ貝2個、マイ貝10個くらいを袋にいれてくれた。ちょうどネイマ達も帰ってきたのでそれぞれの食べたい屋台へと向かった。
屋台通りを抜けて、住宅街に入ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「じゃあナイトはこれ買ってきてね。」
「はい!ジーナさん行ってきます!!」
「おばさん、そんなに買い込まなくていいって!食料いっぱいあるだろ?」
通りすぎようと早足になったが、ドアから出てきたナイトに見つかった。
「あ!!お前、なんでここに居るんだよ?!」
ただの通りすがりです。見なかったことにしてこのまま立ち去ろう。
「まぁいい。俺は忙しいからな!」と屋台通りへとナイトが走って行った。
「ん、メイか?待て待て!寄って行けよ!」
背後からモリー船長の声。ニコイチだよね~。
「お疲れ様です、モリー船長。」
「ここ、俺の実家!」
「里帰りなんですね。あ、お邪魔しては申し訳ないので・・・失礼します。」
「あら?知りあい?」
「おばさん、コイツ新人。今回の船に乗ってるんだ。」
「メイ・パロットです。お世話になってます。」
「まぁまぁ!1人2人増えたところで変わらないからあんたも夕飯食べていきなさいな!」
「だよな。さぁ入れよ!」
こ、これは断れない。おばさんの”まぁまぁ”には逆らったらアカン。そうや、さっきの貝。手土産代わりになるかな?
中に入ると、船の絵や木で造った模型とか、家族の肖像画みたいなものもあった。
「うちの旦那はね、今漁に出てるのよ。夕方には帰ってくるわ。」
「ジーナおばさんは母さんの姉妹なんだ。俺の両親が居なくなってからは親代わりでな。よくしてもらってる。」
「あ、これさっき屋台で買ったんですけど。よければ使って下さい。」
「ありがとねー。活きの良いクウ貝とマイ貝だね♪」
それからナイトが戻ってきて、しばらくワーワー騒いでたけどジーナの一声で大人しくなった。
里帰りするとモリー船長とキララ兄弟はここで御馳走になるのが恒例行事らしく、日が沈む頃になるとカイトとライトがやって来た。
ジーナの夫『ザカリア・ヨーク』も戻り、夜は宴会。ザカリアも身体の大きい男なので、ジーナが食材を買い足して正解だった。たくさんあった料理もあっという間に平らげてしまい、酒も途中でなくなり、男達は飲み足りないと酒場へいってしまった。ナイトは残りたがったが、強制連行された。
私とジーナ、モリー船長は片付けをして、食後のお茶とデザートを楽しんでいた。
「美味しい~。おばさんの作る砂糖漬けは絶妙!」
「カーラも大好きだったわねー。やっぱり親子ね。」
「父さんは甘い物全然食べなかったけどなぁ。」
こうやって見ると、モリー船長も女子やなぁ。
「あんた、甘いものは苦手だったかい?」
「いえ!好きです。美味しいです。」
「メイはさ、義兄弟の契りを交わした奴なんだ。だから、俺の秘密教えてやろうかなって。」
「マリオン。別に隠さなくったっていいんじゃないのかい? あの子達がいるんだし。」
「船長やってる限りはできるだけ公にしない方がいいんだよ。知ってる奴もいるけど、いざって時に足手纏いになりたくない。それに周りに気を遣わせるのも嫌だから。」
それから自分は女だって事、あと両親は死んだ事になっているが、正確には生死が不明で行方がわからない事を教えてくれた。
知ってることもあったので、リアクションがうまくとれなかった。
モリー船長は「あんまり驚かないんだな!メイはやっぱり不思議な奴だ。」と笑っていた。