ただの脳筋乙女ではなかった?!
エカテリーナの激昂により勇敢な挑戦者らは何とも無残に敗れた。
「まったく!乙女にかける言葉じゃないわねぇ。これだからモテない男どもは!」
憤慨しながらこちらに手を振るエカテリーナ。と、その後ろで何とか根性を見せた弓手がエカテリーナに弓を構える。
「おい、エカテリーナ!うしろ!」
手振りながら向かってくるエカテリーナは気づいていない。
弓手が矢を射る。
狙いはエカテリーナの頭部。
あの距離なら人間の頭蓋骨にひび以上のダメージを与えられる。
とっさにナフセは叫んでいた。
「おい!エカテリーナぁぁぁぁ!!」
矢がエカテリーナの頭部めがけ射られ直後着弾する。
カツッ
矢が頭蓋骨を貫く音でもなく矢が的を外した音でもない。
確かに着弾した。しかしエカテリーナの頭部を貫くどころか着弾直後矢は威力を全て頭部に伝え切り地面に落下した。
しかし、この音は確実に矢の着弾音である。
「ちょっとダーリンここ虫が多いんじゃなかしらぁ?アタシ虫は苦手なのよ。あの子達粉砕するととても臭いじゃないのぉ」
エカテリーナとって挑戦者の渾身の一撃は羽虫同然だった。
あ、そういやこいつはもう人間じゃなかったわ……
しかし流石は元英雄、いやさっきのエカテリーナは英雄時代より単純な威力は上じゃねぇのか?
「なぁ俺と対峙した時はー
「ねぇダーリン!ひと段落したことだし一緒にお茶でもいたしましょう。」
そう言って後ろを指差す。
やはり白のテーブルにティーセットご2人分
席に着きティータイムを始めようとした矢先、
ドシャン!ガシャン!
地鳴りが辺り一帯に響き渡る。
チッとエカテリーナは舌打ちをする。
エカテリーナによって広げられた山道から黒い4本足の巨大駆動体が3機、姿を現わす。
「何だ何だ?あれは?!」
当然の疑問を抱くナフセだがエカテリーナは違った。
「あれはアタシの友達の魔導兵器よぉ
あんな物を出してくるなんてもしかしたらあの2人も最奥にいるのかしら?」
困ったわねぇと呟く横で驚愕するナフセは声を震わせながらも呟く。
「まさかお前の友達ってまさかアイツか?」
脳裏に蘇る魔導兵器の持ち主の声
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「デルテンデ君!君の拳で粉砕すれば突破するだけの時間を稼げます!」
よく通る少年のような声。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんな声が頭の中で何回も再生されるが名前はおもいだせそうにない。
「え〜とアイツだよ。ほら、アレアレ思い出せねぇなー。おお!ドゥルテッティムだ!」
「違うわよぉダーリン。あの子の名前はクルス・ミロカッツェよ。もう〜ダーリンのお茶目さん」
思わずチューしたくなるわぁと、迫るエカテリーナとやいのやいのしているうちにも魔導兵器は直進してやってくる。
近くにつれ、魔導兵器の上に小さい影が見える。やがて魔導兵器はナフセらと10メートル程間を開け停止する。
すると上の人影が降りてきて話しかけてきた。
その男は以前とは違い綺麗な青のローブに仰々しい杖を持っている。
そして忌々しげに2人に言い放った。
「こんにちは、元魔族軍幹部『死ねず』のナフセ、それとガウレス君いや今はもうエカテリーナになったんでしたね」
「いつかは来ると思っていたけれど早かったわねぇ、クルス。この近くに貴方の拠点なんてあったかしらぁ?」
「ああ、僕の仲間の1人がこの街に滞在していまして、彼女に渡していた通信機から一報が入ったので。それに彼も来ていますよ」
『彼』という言葉に片眉上げる程の僅かだったが、確かにエカテリーナは反応を示した。
「そう、やっぱり…彼も来るのね」
そう呟くエカテリーナの眼は今まで見たことが無い決意に満ちていた。
その頃ナフセは『彼』の正体を一生懸命に脳内を巡らせていた。
彼?彼、彼…?こいつらの共通の人?ん〜?
目を右上に向け考えるナフセの思考をエカテリーナの言葉が遮る。
「ねぇダーリンあっちの魔導兵器の相手はお願い出来るかしら?流石にアタシ1人で3機+英雄1人に快勝は難しいわぁ。それにもう1人の英雄シン・グージン彼も来るのならその後が大変よぉ」
ナフセは釈然としない顔で英雄シン・グージンについて考えていた。
そんな強かったっけ?んー?
「ダーリン、彼の強さは突出したものが無いが全てができるその万能さにあるのよぉ」
やはり釈然としないナフセの顔を見てエカテリーナがまぁその気持ちは分かるわぁと言い今は英雄クルス・ミロカッツェに目を向ける。
彼はわざわざエカテリーナ達の話している間を余裕からか待っていた。
「話はもういいですか?なら、もう始めていいのですよね?」
行け!と魔導兵器に命令をすると、3機のそれはまたドシャン!ガシャン!と前進を開始、クルス自身も攻撃魔法を展開した。
「じゃ、ダーリンそっちのヤツよろしくねぇ。アレはダーリンなら余裕よぉだだ何物にも必ず心臓の様な物があるのよぉ」
それはどこに?と聞こうとした時
「火よ!敵を燃やし尽くせ!追尾せよ!」
魔法は属性、効果、付加効果を唱えるとその通りに発動する。
だが、精度、威力などは術者に由来する。
詠唱通り、激しい炎が4つエカテリーナめがけ突撃する。
エカテリーナは鼻をフンッと鳴らし手の日除け傘でその全てを薙ぎ払う。
炎はエカテリーナの前で爆散する。
そして目の前にいたクルスが次の詠唱を完成させた。
クルスのその手にはさっきの詠唱で呼び出した古びた極太の本が開かれている。
英雄時代エカテリーナは一度もあのような本を彼が持っているのを見たことはない。
本…?
訝しみながら視線をクルスに固定して本を警戒する。
まだ、本の使い方がわからない内にこちらから飛び込んむのは危険と判断し、じっと出方をうかがう。
詠唱することなく左手の上で開かれたページに右手が触れる。
右手を前に向ける。
この2動作で、さっきの炎の数倍大きい炎を放射する。
無詠唱エカテリーナにめがけ放射される炎に驚きはしたものの何1つ無駄なく炎を回避するが、回避先には既に魔法が飛ばされている。
次の魔法は先程の規模程のでは無いが無数の針状の雷撃が迫る。
エカテリーナも異常の発射速度に改め驚きながらもこれも回避した。
しかし雷撃は方向転換しまたもエカテリーナの回避先に迫る。
「ちっ」
追尾性は複雑な動きをして追尾機能を混乱させ落とすのが定石だが、クルス程の魔術師には意味は無い。
仕方なくエカテリーナは日除け傘で叩き落とす。
ッ
雷撃の1つがエカテリーナの迎撃を抜け太ももを傷もできない程度にかする。
落とし終わったエカテリーナは片膝をついた。
膝をつく姿を見てドヤ顔でクルスは語る。
「これはね魔法を展開して収納しておく本でね、そこに自動で使った魔法をリロード出来るようにしてある。まさに画期的なものなのですよ」
得意げに喋る間にエカテリーナは雷撃の痺れを弾いた。
「貴方がそんな顔で何かしている時に成功したことがあったかしら?」
「痩せ我慢はやめた方がいいですよ。この魔法は自動でリロードする、そして複数の魔法を収納しています。
あなたに勝ち目は、無い!」
それでもエカテリーナは余裕の笑みを浮かべ言う。
「なら、やってみるがいい、お前が俺に対抗できるなら、な?」
「あなたはいつもいつもぉ!そうやって下品な笑みを浮かべる!僕はあなたの笑みが嫌いです。しかし英雄時代あなたには確かな正義の信念があった!それなのに!」
ニヤリと口角を上げた笑みに積年の怒りをぶつける。
なおも表情を崩さず人差し指を立てた。
「1発だ、それでお前の魔法を破る」
ギリッ
奥歯を噛み締める。
「そうか、なら僕も全力の1発を繰り出しましょう」
そう言うと、本を開き光さえ弾く程の真っ黒な球体を浮かばすと、付加効果をの詠唱を一通り終えた。
「さぁいつでもどうぞ」
その続きは無くエカテリーナの姿が消える。と同時にクルスも無言で球体を飛ばす、エカテリーナはクルスの背後を取るがその背後を球体が取っていた。
構わずクルスに突進する。
しかし球体はエカテリーナの背中を捉えその背中に触れる。
直前、エカテリーナは振り返りつつ、球体に裏拳を見舞う。
すると、球体は少し離れた巨大な物体に接触、跡形も無く消し去った。
振り返る力の運動に逆らわずエカテリーナはその強靭な脚で蹴りを入れた。
辛うじて反応したクルスは本から防壁魔法を出すが、たとえ最硬度の防壁だろうと強化していないものではエカテリーナの蹴りは防ぐ事はおろか、軽減にもならない。
クルスは横からくの字に曲がり上に打ち上げられた。
巨大な物体…忘れた頃にやってきたのはナフセと戦っていた魔導兵器だ。
ナフセは3機の内エカテリーナの助言通りに2機を沈め、さぁあと1つと飛びかかろうと姿勢をとったところに謎の攻撃により最後の1つが撃沈し、驚きのまま球体の軌跡を辿ると蹴りを入れ魔道士クルス・ミロカッツェに勝利したエカテリーナの姿がある。




