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初手からツンケンした態度の二人に間に挟まれたアリアがハラハラしていると、視界の端に映っていた人物に気が付いていたアルマリアがユースティスに問いただした。


「ところで、その方はいつ頃戻られたんですか?」


そう言ったアルマリアの視線の先にいたのはーーー

バンダナを頭に巻いた男、ロンドが腕を組みながら仁王立ちしている様だった。


彼は壁に寄りかかりながらアルマリアとユースティス二人のやり取りを耳で聞いていた。


「ん?俺か?」


目を瞑っていたロンドは、自分のことを言われたと気が付いて寄りかかっていた壁から体を離すと、扉の前に立っていたアルマリアの側に近付いた。


アルマリアに向かって歩いていく最中で、彼は口を開く。


「まぁ、なんだ。俺は姉ちゃんが来る数分前にこっちに合流したんだ」


そう言ってアルマリアに目を合わせ、近くにあったベットへと腰を掛ける。


「そうですか」

「素っ気ねぇな〜……。聞いてきたのは姉ちゃんなのに。まぁ、いいけどよ」


ぽりぽりと頭を掻いてロンドは言った。

彼女の冷たい態度はロンドにも扱われているらしい。


なぜ彼がこの場にいるか理解出来たアルマリアはロンドから視線を切ると、アリアがいるベットへと近寄った。


「お嬢様、体の具合は大丈夫ですか?」

「え?私?」


流れるような仕草でアリアの心配をする。

キョトンとした彼女は、突然話を振られたことに答えるのに少々時間を有す。


「はい、私も今日一日この街を散策していましたが、やはり慣れない街とあって体に疲れがきてます。お嬢様とて万全の状態ではないはず」

「え……?」


理解していない様子のアリア。

自分の言葉が理解出来なかったのか。


アルマリアはアリアに問いかける。


「お嬢様も街を探検なされたのではないのですか?」


彼女もこの街の違和感には気が付いていたはずだ。

ならば、正体を少しでも知るために探索なりなんなりするはずだ。


だというのにアリアは応えられないのか冷や汗を流しながら視線をあらぬ方向に向けていた。

アリアから答えを得られないアルマリアだったが、彼女の答えを熱弁してくれる者がいた。


「残念だが、お前は大きな勘違いしている。お嬢様は今日一日この宿から出ていない」


そう口走ったのはアリアではなく、刀磨きを一生懸命行なっていたユースティスから発せられたものだった。


その言葉を聞いたアルマリアはすぐさま察知し、それ以上何も言わなかった。


静かな空気が部屋を包み込む。

その状況に、アリアは口を開く。


「あれ?これって私が悪い感じ……?」

「全面的に悪いな」

「全てッ⁉︎」


驚愕の事実にアリアは思わず声が上擦る。


「し、仕方ないじゃん‼︎ルニーとの料理作りが楽しくってついーーー」


アリアは申し訳なさそうに言う。

今日一日アリアはずっとルニーと共に料理作りに没頭していた。


その楽しさのあまり、本来の目的などすっかり忘れて料理作りに勤しんでいた―――ということだ。


ユースティスとアルマリアが聞き込み調査をしている中で、一人だけ楽しんでいたという事実に、その場で刀磨きを黙々としていたユースティスは、納得がいかないといった様子でアリアを見つめていた。


対してアルマリアはというと、目を瞑っていた。

話を聞いて何も思わなかったのか、それとも目を瞑るしかない状況からなのか。


それはアリアには分からなかった。

だが、辺りに立ち込める不穏な空気を鋭敏に感じ取った彼女は、潤んだ瞳を露わにして言った。


「ご、ごめん……なさい。確かに私一人だけ料理作りに没頭していて本来の目的を忘れていたのは事実だし、否定なんて材料が見当たらないから素直に認める……。でも、料理作りが楽しかったのは、私自身が覚えて二人に料理を振る舞いたかったからでーーー」


少女は精一杯の力を振り絞って声を上げる。

自分が料理をしていたのは、ユースティスとアルマリア二人に食べてもらいたかったからと熱弁した。


料理が楽しかったのは事実だし、もし自分が覚えれば、二人が忙しい時に美味しいご飯を食べてもらえると思ったからだ。


二人の喜ぶ笑顔が見たかったからこそ、アリアは料理をしていたと述べた。


ユースティスはじっと彼女を見つめる。

息を殺して辺りに静寂が訪れる。


やがて、口を開いたユースティスが言った。


「別に料理をすること自体悪いことじゃない。自分の知識として増やすのならば大いに結構なことだ。だが、お嬢様がそうしている間に外で何があったのかどうかを調べることが出来たかもしれない。それを無駄にしたということは大きいことだ。今日一日でお嬢様が出会うべき人間に会っていれば、もしかしたらその中に有力な情報を持ち得ていた人物に出会えたかもしれない。と考えると、今日一日の行動には反省をしてもらわないといけない。これは時間を大切にしろと言っているのと同義だ」


ユースティスはユースティスなりの持論を展開する。

確かに今日アリアが外に出て聞き込みをしていれば、もしかしたら有力な情報を得たかもしれない。


その確率論に確実はない。

確証もないし、判断材料もない。


ユースティスはあくまで可能性の話をしている。

だが、その逆もまた然りと言える。


今日一日出て何も収穫がなかった場合、料理をして自分の力を蓄えることの方がこの先十分に良かったと思える時が来るかもしれない。


別の行動をしていた場合の先の未来は、いくらでも予想出来る。


出来るからこそーーー


「後悔のない道を選ぶことこそ、この先の未来を生きるのに必要なことだ。一つの選択肢のミスが後々大きな失態に繋がることだってある。それを経験することはおぞましいことだ……」


ユースティスの瞳が僅かに揺らいだのをアルマリアは見逃さなかった。


彼がアリアに諭すように言う。

目を向けられた少女は、顔を下に向けて答えた。


「分かってる……。それは私も重々承知してるよ。だって、あの時私が二人に助けてもらわなければ、今頃私はこの世にいなかったかもしれない。そう考えると、道をたがえるってことの大切さを私は私なりに理解しているつもり……」


アリアは力強く握り拳を作った。

彼女は経験していた。


後悔の先にある苦痛を。

いたたまれない情景を。


だから、彼女は思う。


「私は間違えのあることはしない。もう二度と辛い思いをしたくないもの。ユースティス。貴方の言う通り……ううん、貴方と同じだからこそーーー」


アリアの魂の灯った瞳が紳士に訴えかける。

向けられた強気目を見たユースティスは、ふっと鼻で笑って言った。


「その目が出来るうちはまだ大丈夫だろう。根は腐らせるなよお嬢様」


笑った彼の笑顔にアリアとアルマリア、延いては側で固唾を飲んで見守っていたロンドでさえ驚きのあまり言葉を失った。


彼が笑うところなんてあまり見たことがないとアルマリアは思い、ユースティスも笑うんだと新たな発見をしたアリアは感傷に浸り、固そうな男が笑みを零したと驚きが隠せないロンド。

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