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7章 詮索の先にあったものは

アルマリアは目を鋭くさせて、深淵の森林には似つかわしくない奥地へと向ける。

その先には目を覆いたくなるほど強力な光を放っている場所があった。


アルマリアはそこに向かって歩き出した。


目に入り込む木々を手で掻き分けて突き進んで行った先―――

その先にあったものにーーーアルマリアは目を見開いた。


強力な光の正体は、なんとも単純な答え。

それは太陽の閃光をもろに浴びた地面が強い日差しを反射させ発光していたからだった。


太陽の光を反射した地面の前にあったものは、人が二・三人は入れるくらいの大きさがある不気味なトンネルが存在していた。


その雰囲気はまるで、この世とあの世を繋ぐ異界へと通ずる門のように構えていた。

そのトンネルの来るもの全てを深淵へと誘うかの如く迫る心象にアルマリアは思わず足が竦む。


女性が言っていた通りの証言のものが目の前に現れアルマリアは純粋に驚いた。


「ここがトンネル……ですか……」


寛大に構えるトンネルを見据えてアルマリアはポツリと呟いた。


暗がりのトンネルが太陽の暖かさをかき消すかのように独特の雰囲気を醸す。


雰囲気に呑まれたアルマリアは、トンネルの奥そこから先に行こうとするのを躊躇う。


だが、意を決してアルマリアは、深淵の暗がりに満ちた洞穴に向かってゆっくりと歩み出し、トンネルへと入ろうとする。


生唾を飲み込んで、奥に潜む正体を探ろうとした。

その時ーーー


『ーーーだから』

『ーーーまぁな』


突如耳に入ってきた男二人の声に反応したアルマリアは、咄嗟に身を隠すために近くにあった木陰へと動きなりを潜めた。


心臓を激しく動悸させながら木陰に隠れたアルマリアが、そっと警戒を怠ることなく伺うようにして顔を出し様子をみた。


アルマリアが顔を出した先にいたのは、大量の手荷物を抱えた商人あきんとらしき男二人。

その彼らが何やら楽しげな様子で談笑しながらトンネルの中へと入っていく様子だった。


よく見れば、二人の格好はホルノマリン街の商人とは装束が違っていた。


彼らの格好は群青色の羽織に体を纏えて、ベレー帽のように平べったく空気を圧縮し頭部に密着させた帽子を頭に被っていた。


彼らが他所から来た商人であることに間違いなかった。

男二人は小慣れた様子で難なくトンネルの中へと入っていく。


そのさまを見る限りでは、恐らくこのトンネルを使用している者で間違いないだろう。


それも数回とは言わない。

頻繁に来ている感じだ。


明かりのないトンネルへ迷いもなく突き進んでいく。

暗がりの深淵に消えた二人。


彼らが消えたのを見て訝しげな表情を浮かべたアルマリアだったが、彼らにバレないようにこっそりと木陰から飛び出してゆっくりと動き出し、二人の後に続いてトンネルの中へと入ろうとする。


忍び足で足音を一切立てず、熟年の尾行を思わせる所業で地面を擦っていく。


奥深くに入っていく男二人の後を離れないようにしっかりと適度な距離でくっつく。


息を潜めて二人の後を続いていると、ふと前方から話し声が聞こえてきた。

アルマリアは思わず聞き耳を立てた。


『今日もいい値段で買えそうだ』

『ここは絶好の場所だもんな』

『あぁ、商売にうってつけの場所だぜ』


隠し場所のような言い回しで言う二人の不穏な会話を聞いていたアルマリアの眉が窄まる。

このトンネルの中で商売を行う?


とてもそのような場所には見えなかった。

このトンネルを見る限りでも商売が表沙汰に出ているとは到底思えない。


一体彼らは何を買おうとしているのか気になった。

アルマリアが気になっていると、続いて会話が聞こえて来る。


『にしてもあれだな』

『どうした?』

『いや、何。この街も案外商売に困ってるんだなと思ってな』


男は不思議そうに言う。


『確かにそうだな……。何たって俺達に頼るくらいだしな』

『無人に襲われていない街って聞いて来てはみたんだがな』

『あ〜、今騒がしくなってるもんな。無人が現れたとか何とかーーー』


二人は会話を続けていく。


『無人が現れたとなれば、この街もどうなることやら』

『もしかしたら、近々このルートも危険かもしれねぇな』

『そうだな。早い内に離れるか?』

『そうするのも一つの手だな』


と、アルマリアが聞いているとも知らずに饒舌に会話を述べていく二人。

その話をひっそりと聞いていたアルマリアは一つの単語が気になった。


(ルート?)


彼らは確かにこのトンネルのことを『ルート』と呼んでいた。


商人の言うルートとは商売を行う上で必要な商売道のことを言う。


基本的にルートは一本線となっており、売り買いが同等交換される時に用いられる商人特有の言葉である。


彼らがルートと言ったということは、このトンネルも何らかしらの商売を行う上で大切な商売道となるということなのだがーーー。


彼らは何を売り、何を買おうとしているのか。


それらが指し示すことは一体何かと疑問に思っていると、地面を踏みしめる足に違和感を感じたアルマリアが顔を歪ませる。


直後、不意に足を滑らせたアルマリアが音を立ててしまう。


『何だ?今の音……』

『分かんねぇ……、俺ら以外にいたか?』


その音に気が付いた男二人が自分たち以外から発せられた音に違和感を覚えて立ち止まる。


ふと後ろを振り返る男達だが、幸い彼らがいる位置からはアルマリアを視認することは出来ない。


『いや、いなかったはずだがーーー』

『ちょっと俺見てくるわ』


そう言うと、男の一人がこちらに向かって走り込んできた。


その状況にアルマリアは下を巻く。


(……しくじりましたね)


どうやら詮索はここまでのようだ。

アルマリアは男の一人が迫って来る前に退散しようとする。


足音を立てずに立ち去るアルマリア。

ふと、近くから声が聞こえて来る。


『おかしいな……、誰もいない?』


そう男の声が聞こえてきて間一髪で逃げ切ったと思ったアルマリアは、光差すトンネルの出口を目指して向こう側へと走り去る。


数秒後トンネルを抜けたアルマリアの目に太陽の強硬な光力に目を締める。

あまりの眩しさに耐えきれなかったアルマリアが目を覆い、視界に入る光を遮断する。


そのまま目を塞ぐ形で外へと出たアルマリアが、出てきたトンネルを振り返って追いかけてきた男がこちらに来ていないかの確認をする。


トンネルに目を向けしばし見守っていたが、一向に来る気配がないことから難を逃れたということだろう。


アルマリアはふっと緊張の糸を解くかのようにして息を吐き捨てた。

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