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男の的確な一言に、


「うぐッ―――‼」


頬を引き攣らせたアリアは心が抉られるような痛みを感じる。


彼女はキツく胸を締め付けられたかのような痛さを感じながら、男の方を見つめた。


ぐうの音も出ない。

彼女の目は少しだけ潤んでいた。


そんなアリアの前を陣取る形で二人の男女が立つ。


主人に仕える者が羽織る衣装で身を固めた綺麗な顔立ちの淑女と、彼女の隣に立つ全身が白と黒で彩られた燕尾服と呼ばれる服を身を纏い、クールな雰囲気を醸し出す男。


彼はこちらを見るや否や、食い気味で店の商品を見ていたアリアに対して、全てを見透かすかのような鋭い目で睨み付ける。


その目からは彼の思いがひしひしと肌に伝わってくる、

男は軽蔑の意味合いを込めた瞳で彼女を威圧する。


その視線から逃げるようにアリアは素早く目を逸らす。

二人の言葉を受け止めた彼女は顔を少し膨らませながら、明後日の方向に目を向けて言った。


「べ、別にいいじゃない……ッ‼︎何ッ⁉私が宝石に目を輝かせて何が悪いのッ⁉悪くないわよねッ⁉︎そうでしょ‼︎私だってそりゃ、光り輝く者があったら目を輝かせて食い付くばかりに店の前をうろうろするわよッ‼それに二人は私のことお嬢様って呼ぶけど、私はもうお嬢様じゃないし、関係ありませんッ‼︎」


アリアの怒りが爆発したのか。

鼻を鳴らして男女に向き直る。


そんな子供染みた態度をした彼女に男と淑女の二人は、呆れ返った様子でアリアを見つめる。


不意に彼女の気を宥めようと、メイド服に身を纏った淑女が一歩近付いてくる。


ゆっくりと無言のまま近付いてくる彼女にアリアは、一歩慄おののいてその様子を見守っていた。


やがて、少女の前まで来た女性が彼女と同じ目線の高さまで膝を曲げて言った。


「申し訳ありませんお嬢様。軽率な発言をお許し下さい。しかし、私達はお嬢様がお嬢様だった頃からお仕えしている身であります。中々癖というものは抜けません。お嬢様だって、癖が身に付いてしまった行動は簡単に修正することが出来ないくらいご存知のはず」

「そ、それは……そうだけども……」


彼女の言葉にアリアは言葉を詰まらせる。


確かに目の前の淑女の言う通り、癖というものは一度染み付いたら中々取り除くことは出来ない。


私には私なりの癖というものがある程度生じる。


無意識のうちに行ってしまうものをどうすることも出来ないのは分かっている。

分かっているのだが……。


その話と今回の話が果たして結びついているのだろうかと、アリアは胸に抱いた疑問で一杯になる。


気が付けば話をすり替えるのが上手なのが、目の前にいるアルマリアという仕用人なのだ。


「そうだな。アルマリアの言う通りだ。私達は一応お嬢様が権力を振るって御乱心していた時から仕えていたからな。ガサツなお嬢様に付いていくのも一苦労したんだぞ?この気持ちが分かるか?」


後に続いた男の言葉がアリアに考える余地さえ与えてくれない。


「えぇい‼ユースティスは一言多い‼︎」


アリアにユースティスと呼ばれた燕尾服に身を纏った男ーーーユースティス・クラウド。


彼は事あるごとにアリアに対して修正点があれば文句を言いながら、小言を告げてくる。

ユースティスは呆れたように溜息を一つ吐いた。


彼の辛辣な言葉が相当精神的ダメージが響いたのだろう。


小言を言われたアリアは、過去の記憶が甦り何度も注意されたことを思い出した。

肩をがっくりと落として露骨に落ち込む。


どっと疲れが出るようだった。


彼はそんなアリアから視線を外して辺りを確かめるよう周りを見渡した。


彼らが今いる場所は繁栄ある街並みが特徴的な一角。


新しい文化を取り入れた高貴な雰囲気が漂う街ーーーホルノマリン街。

アリア達がいる周りの雰囲気は活性的で賑やかだった。


街全体が派手やかで、活気付いている栄えのある雰囲気に包まれていた。


この街は特徴的で新緑が辺りを囲む形で成している遠く離れた辺境の地となっている。


聞くところによると、無人の被害を受けることなくひっそりと佇む辺境の街で有名だった。


人が住まう街だが、それでも辺境の地ということもあり、栄えているとは程遠い位置にあるようだ。


あくまで栄えている雰囲気を纏っているだけで、本当のところは栄えとは無縁にも近しいこの街で三人は、少しばかりの休息を取ることにした。


しかし、いくら無人の被害を受けておらず、平和とは言えてもどこかに綻びは生じるものである。

例えば建設物を建てる部品やら体を動かすために必要なエネルギーの源である食物の存在は欠かせない。


だが、街の四方が緑で囲まれ取り残された街では、到底満足のいかない商事と食事で日々の生活を何とか繋ぎ止めているだけに過ぎない。


他の街から供給する為にホルノマリン街の外に出れば、どのタイミングで無人に襲われ、その身に危険が及んでしまうかも分からない。


そもそも街の外に出る機会があったところで、無人の恐怖に立ち向かう勇敢な商人は極僅かだろう。


この街の外は多くの障害が存在する。

障害の一つとして挙げるとすれば、ホルノマリン街は他の街と離れ過ぎている。


その為、商売がてら他の街に行こうにも必要以上の労力が必要になるのだ。


外から隔離された街としても有名になっているということだが、アリアはおろか二人すら知識に入ってはいなかった。


街が隔離されていれば、当然ながら住み続けるにも色々と不憫が付いてくる。


最も一番の危険は無人の襲来なのだが……。

何故かこの街には無人が寄り付かないという。


その不可解な現象に誰もが説明出来ない。

一体どのような原理で寄り付かないのか説明が出来ない以上、不安感が募るというものだ。


いつかは無人の被害を受けるのではないかという想像が掻き立てられてしまう。

街行く人々は日々募る無人の活性化に怯えつつも必死に生きながらえていた。


その街を探索するように三人は街道を歩いていた。


「無人の被害を受けない街か……」


周りの風景を視界に映しながら、ユースティスは訝しげに顔を歪ませた。


「どうしたのユースティス?」


その彼の表情に気がついたアリアが不思議そうに彼を見つめ問う。


問われたユースティスはちらっと彼女を見て、手を顎に置き答えた。


「あくまで自身の見解で話すが、この地の下に何かあるのかもしれんな。無人を寄せ付けない何かが……」


アリアから視線を外して地面を見据える。


「彼なりに何か思うところがあるといった感じでしょう」

「ふ~ん……」


彼の言い分に少女もまた地面を見て沈黙する。

二人が黙っていると、


「少しよろしいですか?」


二人の横から声がかかった。


ユースティスの見解に食いついてきたのは、アリアの隣を陣取った淑女ーーーシャーロット・アルマリアが彼の意見に対して口を挟んできた。


「彼の話が事実だとしたら、そんなものがあれば、至る地域でとっくに無人を寄せ付けないよう同じような待遇にしますよね?」

「確かに‼」


彼女の言葉にアリアは驚いたように声を上げる。

そして、ユースティスの方を見る。


見つめられたユースティスは返答に時間を空ける。

確かに彼女の意見も最もである。


そんな画期的な代物が存在するならば、一刻も早く対処の余地が必要であろう。


だがーーー


「それはあくまで量産体制を取ればの話だろう?」


と、ユースティスは反論の意見を述べた。


「確かに人類が平等にその力を貸せば、無人を二度と寄せ付けない領域が成せることだろう。だが、人間という生き物はそういう特別なものをーーー特殊な力を持ってる時こそ大抵独り占めしたくなるものだ。独占欲が強いというのだろうな。こういう時は……あるいは、取引材料として使っているのかもな。他の街との接触が難しいともなれば、交換条件として出すのにうってつけだろう。例えば、無人を寄せ付けない装飾品があるとかな」

「そういうものなんですか?」

「そうだ」


二人の会話が熱を帯びていく。


その間に入っていた小柄なアリアは、二人に挟まれて板挟み状態になっていた。


「貴方は頭が固いんですよ。考え方の柔軟性がないです。貴方みたいな人がいるからそういう思想に至る人が出てくるんじゃないですか?」

「お前は柔軟過ぎる。そうやってやんわりとした考えを持っている奴が増えるから、導かなければいけない奴が生まれるんだ。そうして上に立つ喜びを知った人間が財を独り占めし、成り上がろうとするのだ」

「全くもって不愉快極まりない発言です。撤回を要求します。それにしても相変わらずの分からず屋ですねあなたは……」

「こちらの台詞だ」


次第に二人の熱がゆっくりと終息していく。

二人はいつもこうだ。


何かある度に喧嘩してはアリアを困らせていた。

しかし、大抵は話が終われば互いの熱は消えていく。


自己解決にも等しい。

二人にしか分からない方法で終わりを迎える。


その姿を見ていたアリアは深く溜息を吐いて熱が冷め終わるのを待つ。


そして、互いに吐く言葉が無くなった二人は、唐突に首をアリアに向けて見つめてくる。


「で、お嬢様。この街に来た理由わけは何ですか?」


喧嘩を終えてこちらを向き直るアルマリアがアリアの顔を見つめてくる。


見つめられた彼女は、ドヤ顔をして答える。


「良くぞ聞いてくれました」

「何故嬉しそうに話すんだ?」

「ユースティス黙って」


彼女の異様なテンションに口を挟んでくるユースティスを黙らせて、アリアは胸を突き出した。


無い胸でも張っているのかと疑問に思ったユースティスは、じっと彼女が口を開くのを待った。


「実は――――無人討伐の依頼が来てるんだけど……」



♦︎♢♦︎

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