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「どうしてお嬢様は、ああ気が抜けているんだ……」
「あれでこそお嬢様の良い所なのですから、大目に見てもよろしいのではないですか?」
「ふっ―――」
「何故、鼻で笑ったのか教えてもらってもよろしいですか?」
「いや、お前はとことんお嬢様に甘いなと思ってな」
「それは当たり前です」
老人の話を聞き終え戻ってくるアリアを見つめ優しい瞳を向けて言う。
「あの方が託したものを私達が壊すわけにはいかないですから」
彼女の笑顔を眺め、ユースティスは同意する。
「それもそうだな……」
「どんなお嬢様であろうと、私はお守りすると決めていますから」
「それについては俺も同感だ。お嬢様ほどの人材は探してもそうそういないだろ。あれ程に優しいお方がこの時代にいることこそ奇跡と言える」
「貴方もたまにはいいことをおっしゃるのですね」
「たまには余計だ」
「お待たせーーー‼︎聞いて来たよ〜‼︎」
二人の熱が次第に帯びて行こうとしたその時ーーー。
二人の間を息を切らしながら膝に手を当てたアリアが戻って来た。
そこまで全力疾走で戻ってこなくても良かったのではないかと思った二人だが、何やらへらへらと笑っているアリアに何も言えなくなる。
自分達の守るべきものがここにいるということが、どれほどの生き甲斐となっているか。
当の本人は気が付いていないだろう。
だが、それでいい。
アルマリアとユースティスにとって、お嬢様が自分達の元にいるだけで幸福なのだと。
「場所はここから北に少し進んだモルベス街道だって」
「そうですか、なら早速行きましょうか」
「だな」
アルマリアはアリアに向かって優しい表情で笑いかける。
それに応じてユースティスも歩き出した。
場所を聞いたアリアは、これから自分達が行くモルベス街道に向かって歩いて行った。
ホルンマリン街を抜けた先にあったモルベス街道は、一本道が永遠に続くかのような細長い真っ直ぐに伸びた道路があった。
その両脇には一歩入れば出ることが困難な森林が生い茂っていた。
恐らくこの両脇の森林には尋常じゃないくらいの無人がいるはずだ。
しかし、その無人でさえ寄ってこないのが、今アリア達がいるモルベス街道だ。
硬く舗装された道は無人が通ったところで崩れることはないだろう。
激しい戦闘を行えば壊れてしまうが、簡単に壊れない仕様になっていると、老人の村長が教えてくれた。
この道はホルン街の影響を受けているためか、無人が一切寄ってこない幻の道と呼ばれているらしい。
確かに、不用心に歩いているアリア達に無人達が一切襲ってこないのがいい証拠だ。
おかげでアリア達は難なく進んでいくことが出来る。
「凄いね……無人が全くいないもの感慨深いものだよね」
「そうですね。何とも興味深い光景です」
「まぁ、俺達は無人のいない時代を過ごしていたから何とも思わないけどな」
「……」
アルマリアの言葉を打ち消すかのような発言したユースティスを睨みつける。
「事実を言ったまでだぞ?」
「それでもお嬢様の為に同意をするということを知らないのですか?貴方はいつもいつも考えも無しに行動するからそういう人格なのですよ」
「人格を否定されるとは思わなかったな」
「二人とも怖くないの?」
「何がだ?」
アリアの震えるような声に反応したユースティスが聞き返す。
「無人がいないなんて不気味で仕方ないよ。そりゃ、いない方がいいのは分かってるんだけど……、どうしても、どうしても無人がいる世界に慣れちゃってるから……」
……そう。
アリアは十年も無人がいる生活を送っているのだ。
今更無人がいない場所を見るのが不思議を通り越して、むしろ恐怖さえ感じることに二人は驚いた。
それほどに世界は変わってしまったのだ再び認識させられる。
確かに、アルマリアやユースティスにとって無人がいない世界の方が長い分、不思議に感じるという気持ちは一切ないわけではない。
二人にとっては何ら問題のない内容なのだが……。
だが、彼女ーーーアリアにとっては無人がいる世界で過ごした年月の方が長い。
それも十年となれば立派な年数になるだろう。
故に、彼女自身が無人がいない場所を見るのが不気味で仕方無いのだろう。
これが時代の流れというものなのだろうか?
二人は互いに顔を見やり、アリアの言葉に考えさせられた。




