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「んなこと言ってる場合か!もうそんな状況じゃねぇ!あれは!俺達の目の前にいるのは無人の新種だ!倒し方が分からない以上、下手に対策を練って行動するより逃げるのが断然いい」

「い、嫌だ!私はコトノさんのお子さんの悲しい顔を見たくない!それに私はよく遊んだりもするの!あの子の笑顔はコトノさんがいるから笑ってられるんだ!」

「おい待てッ!馬鹿ッ⁉︎この命知らずのガキがッ⁉︎」


アルトの手を無理矢理振りほどいてリースは無人の近くに行く。


「いつものようにやれば、大丈夫……!」


そう。

いつものように無人を狩るだけ。


(私達の仕事は、安全な暮らしを守ること。ならば、力を持っている私が動かないでどうする!)


リースは力一杯弦を引き、新種の無人に向かって弓を引き矢を放った。


渾身の一撃にも近いその矢は、見事に大蛇の無人に向かって飛来する。


しかしーーー。


「嘘……」


溢れた言葉は、消えそうなくらいか細かった。

その現実を受け入れたくないというように絞り出した言葉。


リースが放った一撃は新種の無人には効かないようだった。


攻撃を食らった大蛇の無人は、リースの方を向き、巨大な尻尾で攻撃を加えようとする。


その凄まじい早さの攻撃は、リースに寸分違わず向かってくる。


いつものリースなら避けられるだろう。

だが、攻撃を弾かれたうえに、仲間達がやられている事実に打ちのめされたリースはじっと一点を見つめて呆けていた。


向かってくる攻撃は無情にもリースに向かい、


「リース‼︎」


後方からやってきたアルトが紙一重のところで彼女の背中を押した。


「あっ、あああああああああああ」


リースは背中を押されて気が付いた。

その場所は先ほど自分がいた場所だった。


当然攻撃はアルトに向かっていた。

巨大な尻尾はアルトに向かってその体を後方へと飛ばす。


「ぐぁああああああ!」

「アルト!」


アルトの断末魔がリースの耳を劈く。

聞きたくない声。


見つめたくない事実がリースを襲う。

彼は随分遠くまで飛ばされてしまった。


リースの目の前には新種に無人がじっと彼女を見つめていた。

このまま自分も食われてしまうと思った。


だが、無人はリースを襲うことはなく、その場から立ち去って行く。

お腹がいっぱいになったのだろうか。


無人が去った後は酷い残骸が残るばかりだった。

仲間は全員食われてしまった。


生き残ったのはリースただ一人。

圧倒的な絶望感と虚無感がリースを襲う。


誰もいなくなった空間で微かな呻き声が聞こえてきた。

その呻き声は遠くから聞こえてくる。


方角からしてアルトが飛ばされた方向だ。


「アルト!」


リースは全力で駆けた。

まだ行きがあるアルトの元へ走る。


そしてーーー


「アルーーーー」


彼女が駆け寄ると、彼の体はボロボロだった。

体から流れ出る血が止まらない。


このままでは確実に彼は死んでしまう。


「アルト!」

「リース……」

「しっかりしてアルト!今安全な場所に運ぶから!」

「はは、バカだなお前は……この体じゃどう考えても……無理だ。俺は……もう助からない」

「そ、そんな……。私のせいで……!アルトが……!」

「別に……お前にせいじゃ……ない。俺が勝手にお前を……助けただけだ!」

「私なんか助けなくても……!アルトが生き残った方がーーー」

「それ以上は言うな……っ!」


アルトは最後の力を振り絞ってリースに伝える。


「俺が生かし……たいと思ったから……行動したんだ。それをお……前が否定する……な。大丈夫だお前は……俺より強い。胸を張って生……きろ」


その言葉を最後にアルトは絶命した。

最後の言葉がリースには胸を打った。

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