第七話
食卓を囲むメンバー四人。ソラさんはお茶を一口飲むと話を切り出した。
「さて、これからどうしましょう」
「そもそもここはどこなのかもよくわかんねぇな」
「ここはファンタジーショウセツカイ。貴様らの世界はギャグショウセツカイじゃ。そんなことも知らんのか」
「いや、だからそのギャグショウセツカイって何だよ」
「この世界とは違う世界じゃ。その世界に生きる住人はあらゆる攻撃に耐え、あらゆる装甲を貫通する攻撃力を持つと恐れられている。まさに先ほどの貴様のような状態じゃ」
「ああ、そういや俺ドラゴンブレスで焼かれたんだよな」
「ウケる」
「ウケんな! まあともかくここは俺たちにとって異世界ってことだな」
それならこの見慣れない世界の説明もつく。あまりにも非現実的だが、事実は事実として受け止めるしかないだろう。
「姉さんの滅茶苦茶でとんでもない儀式が異世界転移の原因……ということですね」
「あれ? 私今ディスられてる?」
「ぶん殴られないだけ良しとしろ」
「こわぁーい♪」
「てめぇはぁあああ……!」
「わぁぁぁん! パンツ伸びる! パンツ伸びる!」
俺は怒りのあまり席を立ち変態の頭のパンツを思い切り引っ張る。変態はいやいやと顔を振るがパンツが脱げる気配はない。どういう仕組みだこりゃ。
「ま、まあまあ。とにかく儀式の道具を取りに行きましょう」
「遠くに見える城にあるんだよな。魔王城ってやつか?」
「その通り。わし自慢の城じゃ」
「子ども部屋にしちゃデカイな」
「子ども部屋じゃないわい! わしの城だと言っておろうが!」
「そうだった。そういやこいつ魔王だった」
「こんなに可愛い魔王なら是非私のことも征服してほしい」
「いや、お主はいらぬ。何か怖い」
「スリルショック」
「無理もねえな。変態だし」
「姉さんドンマイ」
「落ち込みすぎてパンツのゴムが伸びそう」
「調子のバロメーターかよ! 一生伸びてろ!」
「コウちゃんひどぅい」
「ええい! 話が進まぬ!」
「そ、そうですね。私たちは魔王城に行くとして、魔王さんはどうするんですか?」
首を傾げるソラさんに対し、魔王は腕を組んで答えた。
「わしも魔王城に帰る。いつまでも留守にはしておけぬからな」
「そういや、なんで魔王がこんなとこにいんだよ」
「ぎくっ」
「あ、今ギクッて言った」
「言いましたね」
「言ったなぁ」
「わ、わしは別に、魔王城を何者かに乗っ取られた上に追い出されたとかそういうのじゃないぞ! 断じて違うからな!」
「魔王城を乗っ取られた上に追い出されたんだな」
「ダサ可愛い」
「ええいうるさいうるさい! わしはもう行くぞ!」
魔王は椅子を飛び降りて怪獣のような足音を出しながら外に出るドアへと歩いていった。
「えっ!? あの、一緒に行きましょうよ!」
「誰が貴様らと一緒になぞ行くか馬鹿め! この始まりの街で野垂れ死ぬが良いわ!」
魔王はあかんべーしてからドアを勢いよく開けて外に飛び出していく。俺たちはしばらく呆然としていたが、ソラさんの言葉で状況を理解した。
「追いかけなきゃまずいですよ! 魔王がいるってことは魔物もいるはずです!」
「いやぁ、大丈夫だろ魔王だし」
「そうだな魔王だし」
「いや、今子犬並みの戦闘力しか無いんですよ?」
「「あ」」
ソラさんの言葉に改めて状況を理解する俺と変態。気付けば俺たちは外へと飛び出していた。