第五話
「やっと宿屋に到着したわけだが……」
俺たちの目の前には今にも朽ち果てそうな木造の家? が鎮座している。宿屋と看板は出ているが、どう考えてもこれは―――
「廃墟かな?」
「今だけは同意する」
「ま、まあまあ。内装は綺麗かもしれないですし」
「……内装はもっとひどいのう」
「あぅ」
「まあまあ、屋根がありゃ上等さ。宿の係員はどこかな?」
「む、何か置き手紙があるぞ」
変態の声を聞いてカウンターに行ってみると、確かにボロボロになった手紙が一枚置いてあった。
「なになに? “勝手に泊まれ。宿賃は一人五千ボルド”」
「や、やる気がない……」
「魔王ちゃん。五千ボルドって高いのか?」
「格安じゃな。一般的な定食が五百ボルドじゃから、普通宿賃は安くても一万ボルドはする」
「半額か。それならここしかないな」
そもそも俺たちはお金を持ってない。まだ魔王には言ってないが魔王のお金を頼りにするしかないのだ。
「えー!? やだやだ! もっとえっちな宿に泊まるの!」
「邪な願望を抱くんじゃねえ! お前は外で寝てろ!」
「放置プレイか? コウちゃんもやるな」
「そうだな。できれば一生放置したいよ」
「と、とりあえず宿はここで決定ですね」
「そうだな。じゃあ魔王ちゃん支払いよろしく」
「よろしくお願いします」
「よろぴく~」
「このわしにたかる気か!? 貴様らプライドはないのか!」
「だって無一文だし」
「お金ってなに? おいしいの?」
「ごめんなさい……」
「あ、頭痛くなってきた」
魔王は頭を抱えながらふらふらとする。変態はすかさずそんな魔王の体を支えた。
「大丈夫? パンティ嗅がせて?」
「悪化してんじゃねーよ! ちょっとはいたわってやれ!」
「ど、どうやらこいつらの中でまともなのは貴様だけのようじゃな」
「あはは……」
魔王は素早くソラさんの傍に移動し、その後ろに隠れた。
「あっソラずるい。私も幼女と戯れたい」
「やかましい! わしは魔王だと言っておろうが!」
「魔王だと凄いプレイができそうだな」
「聞いていない……」
「とにかく飯にしようぜ。どうせコックなんていないだろうから、ある材料を適当に……お、結構置いてあるじゃん」
「肉、魚、野菜……いろいろ揃ってますね」
「パンティはないの?」
「自分の食ってろ!」
「自給自足」
「で、誰がその材料を料理するのじゃ? わしは料理なぞできんぞ」
「パンティの丸焼きなら自信がある」
「わ、私は皿洗いくらいなら……」
「え。嘘だろ」
結局その晩から料理担当は俺になり、執拗なおかわり攻撃に辟易しながら夜は更けていくのだった。