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第二十話

 無事路銀を確保した俺たちはトレジャーベースを後にする。街道を歩きながら俺は魔王へと視線を向けた。

「無事トレジャーベースを旅立ったわけだが……次はどんな街なんだ?」

「海の楽園と言われる観光地サンスターズじゃな。温暖な気候と美しい海が特徴で、観光業が主力産業のようじゃ」

「観光かぁ。楽しみたいところだが……」

「我々の路銀にそこまでの余裕はない。最低限街を楽しんだらすぐに出発すべきじゃろうな」

 腕を組んでうんうんと頷く魔王。確かに俺も同意見だ。

「あー。海って合法的にパンティが見られるイベントだよね?」

「姉さん。パンティというか水着だと思うよ」

「私はどちらでも一向に構わん」

「とりあえずこのバカにお金を持たせないようにしよう」

「じゃな」

俺と魔王は視線を交差させて深く深く頷いた。


「で、ここがそのサンスターズか。結構暑いな」

 常夏の楽園のような見た目。綺麗な海と青い空。確かにこれは観光地そのものだ。

「暑い分アイスの売店が多く出ておるな。水分補給も重要になるじゃろう」

「これだけ暑いと汗をかいてしまいますね」

「そうだね。うん近い。近いなぁソラさん。なんで近づいてくるの?」

「匂いを嗅ぐためです」

「あらやだ素直。でも離れてね」

 俺はすぐ傍でくっついているソラさんからカニ歩きで器用に離れた。

「はっはっは。ソラもまだまだだな。私なんてこの距離からくんくんできるぞ」

「すんな! 二人ともせめてもう少し自覚してくれる!?」

「美しさを?」

「変態加減をだよ! 街に入って数秒で注目の的じゃねーか!」

「まあ半分は変態のせいじゃが、おぬしを恐れる目もかなり多いぞ」

「やめてください魔王さん。死んでしまいます」

 そう言われれば畏怖の目もかなりある。あの目だけは本当慣れない。慣れたくもない。

「それにしても、海水浴場がずいぶん近くにあるんですね」

 確かにソラさんの言う通り、街の入り口からすぐ海が見える。浜辺ではカップルや家族連れが楽しそうに遊んでいた。

「ふむ。せっかくじゃ。少し浜辺に寄っていくか」

「いいんですか?」

「少し遊ぶくらいなら問題あるまい。水着も貸し出しておるようじゃしな」

「何故だろう。水着タイムだというのに欠片も心が踊らない」

 女子の水着をおがめるというのに何故だろうなー。不思議だわぁ。

「か、かかかか海水欲情だとぉ!? まったくけしからん! パンマスちゃん遊びにいってくゆ!」

「行くなぁ!」

「おけぷ!?」

 走り出そうとした変態に俺は容赦なくボディブローを入れた。

「いきなりボディなんて酷いじゃないかコウちゃん。内臓飛び出るかと思った」

「いっそ飛び出たらいいよ。俺のテンションが上がらない理由が今わかったわ」

「ムスコのサイズが小さくて心配なの?」

「お前がやらかしそうで心配なんだよ!」

「はっはっは。安心しろコウちゃん。私はやらかす」

「やらかすのかよ! せめて気休めくらい言って!?」

「私はできもしない約束はしない!」

「やだ男らしい。でもぶっ飛ばしたい」

 そのびっと立てた親指をへし折ってやりたいわ憎たらしい。

「まあまあ。とりあえず着替えましょう?」

「そう、だな。ここで喋ってても仕方ないし着替えるか」

「覗いてもいいのよ?」

「痴女かよ! いいからさっさと行って来い!」

「はぁーい」

 こうして俺たちは一度解散し、浜辺に設置された更衣室へと向かった。



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