第十七話
「で、ここが紹介されたダンジョンなわけだが」
「冒険者だらけじゃな」
石造りのダンジョン入り口には冒険者がひしめき合っている。ハッキリ言うと人混み状態だ。
「これじゃ観光地だぜ」
「でも、ちょっとホッとしました。ダンジョンって怖そうだし」
「ふむ。冒険者たちのホットなパンティも良いな」
「俺は横にいる変態が何より恐ろしいよ」
「あ、あはは……」
「しかしこれだけライバルがいるとなると、完全に競争じゃな」
「確かに。俺たちもうかうかしてらんねぇ。さっさと進もうぜ」
「よぉし! まだ見ぬお宝に向かってゴー!」
「お前に号令取られるとなんかしっくりこねぇな……」
こうして俺たちは路銀のため気合いを入れてダンジョンの中に入っていった。しかし―――
「ダンジョンっていうか完全に洞窟じゃねえか。ていうか薄暗いな」
「都合がいいね」
「何の!? いやいいやっぱ言うな!」
「もちろんイタズラするために都合が良いのさ」
「言うなっつってんだろ! お前がイタズラって言うと妙にこえーんだよ!」
「それより、はぐれないように気をつけないと」
ソラさんは不安そうに周囲を見回しながら胸元に握った手を当てる。確かに薄暗いし人は多いし、はぐれないようにしないとな。
「気を付けないとな。こんだけ暗いと―――うわっ!?」
「明かりが消えた!?」
どうやら洞窟内を照らしていた松明の魔力が切れてしまったらしく、突然の暗闇が俺たちを包む。いきなりだったこともあってほとんど何も見えない。冒険者たちも混乱して走り回っているようだ。
「な、なんじゃ!? おわーっ!」
「高凪さん! 魔王さんが人の波にのまれて洞窟の奥に!」
「なにぃ!? くそっ、何も見えねえ!」
「そうだ! スマホの明かりを使ったらどうでしょう!?」
「それだ! って今スマホは全部魔王が持ってるぞ!」
「そうでした!」
「ふっ、仕方ない。我が奥義を披露しよう」
恐らくだがドヤ顔で腕を組んでいる変態。俺はジト目になりながら返事を返した。
「頼む。嫌な予感がするからやめてくれ」
「奥義! パンティフラッシュ!」
「うおっまぶしっ!?」
「説明しよう! パンティフラッシュとは頭に被ったパンティのパンティ力を極限まで高めることによりパンティを発光させる奥義である! 見たやつは死ぬ!」
「死ぬの!?」
「嘘。死なない」
「意味のない嘘つくなよ!」
「それより、魔王さんは!?」
ソラさんは心配そうに周囲を見回すが、周りに魔王の姿はなかった。
「くそっ。明るくはなったけど近くにはもういねぇな」
「それに私たち、物凄く注目されちゃってます」
「なぜだろう」
「そりゃそうだよ変態が発光してるんだから!」
「明るくて便利じゃないか」
「明るくてこえーんだよ!」
「哲学かコウちゃん」
「一般論だよ! ああもう周囲からの視線が痛い!」
最初は呆然としていた冒険者たちだったが、その目が段々と敵意に変わってくる。そりゃそうですよね。
「なんだあいつら!? まさか魔物!?」
「そうに違いねえ! ボコれボコれ!」
「いででで! なんで俺に集中砲火なんだよ!?」
ボンボンと火炎魔法や物理攻撃がとんでくるんですけど。めちゃくちゃ痛い。
「集中砲火は顔のせいだろう」
「顔のせいかと」
「ひどくね!? ていうか痛い!」
「仕方ない。このまま先に進もう」
「ごめんなさい航太さん。魔王さんが心配なので」
「俺のこともちょっとは心配してくれる!? 俺炎の上級っぽい魔術とかめっちゃくらってるんですけど!」
「大丈夫。コウちゃんなら耐えられるさ」
「が、がんばってください」
「くそがぁぁぁぁ!」
こうして俺は冒険者たちからボコボコにされながら洞窟の奥を目指し歩いていった。