第十四話
ロックフォードを旅だった俺たちは武術大会の優勝賞金を手に街道を進む。周囲にはまだロックフォードから旅立った住人や旅人が大勢歩いていた。
「いやー勝った勝った。賞金がっぽりだなコウちゃん」
「チャンピオンさんには申し訳ないですが、これでしばらく路銀には困らないです」
「そうだね。俺は全身ボロボロだけどね」
「まあまあコウちゃん。私の顔でも見て落ち着きたまえ」
「落ち着くかよ! パンティしか見えねえじゃねえか!」
「だから落ち着くんだが?」
「だめだこいつはやくなんとかしないと」
「それにしても会場の声援は物凄かったのう」
「そうですね。確かに凄かったです……ブーイングが」
「そりゃなぁ。華麗な武術を見に来てるのに変な耐久力で粘り勝ちした挙句ギャラクティカアッパーだもの」
「言うな! 俺だって申し訳ねぇと思ってんだよ!」
「まあそう落ち込むなギャラクティカくん」
「ちくしょおおおお! ロックフォードの皆さん本当ごめんなさい!」
俺は両手で頭を抱えて叫ぶ。いやなんかもう、ほんと申し訳ない。
「そんなに大声出していると余計目立つぞ」
「そうですね。ただでさえ睨まれちゃってますし……」
「はっ。そ、そうだな。落ち着こう」
何度か深呼吸を繰り返し、どうにか落ち着きを取り戻す。その時変態が少し前まで走って思い切り息を吸い込んだ。
「みんな聞いて聞いてー! ここにいるコウちゃん耐久力だけで武術大会優勝したの! 凄いっしょ!」
「煽るんじゃねえ変態! なんで自慢してんの!?」
「私は今日ほど君という仲間を誇りに思ったことはない。褒めるのは当然じゃないか!」
「なんで今日に限ってまともなこと言ってんだよ! そういうのいいから!」
「あの屈強なチャンピオンを粉☆砕したんだぜ! 凄いだろうちのコウちゃん!」
えっへんと胸を張る変態。周囲の旅人からは突き刺すような視線と共にブーイングが返ってきた。
「ああああ! ごめんなさいごめんなさい! こいつ馬鹿なんで! すぐここ離れますんで睨まないで!」
「ああ、ついにここでもブーイングが……」
「魔王であるわしでもここまで嫌われんぞ―――おわっ!?」
「ちくしょう! 馬鹿にしやがってぇ!」
「魔王さん!? それにあれは、前チャンピオンさん!? 二人とも大変です!」
「どうした!? 変態は今やっつけるから安心しろ!」
「パンティが伸びる伸びる」
俺は変態の頭のパンツを引っ張りながらソラさんに返事を返したが、ソラさんはぶんぶんと顔を横に振った。
「そうじゃなくて、魔王さんが前チャンピオンさんに攫われたんです!」
「なにいい!?」
「それはもしかして一大事じゃないのか?」
「最初からそう言ってるよ姉さん……」
「こうしちゃいらんねぇ。ソラさん、前チャンピオンはどこに行った!?」
俺は周囲のブーイングを物ともせずソラさんへと尋ね、ソラさんは街道の先にある廃墟を指さした。
「あの廃墟の方に走って行きました!」
「よし、とにかく追いかけるぞ!」
「はい!」
「まかしとけぇ!」
「いや。変態てめーはダメだ」
「何故に!?」
「事態がややこしくなりそうだから来んな」
「ひどい! ソラ、コウちゃんったらひどくない!?」
「ごめんね姉さん。今回は姉さんが原因かも」
「なんてこった」
「よし、行くぞソラさん!」
「はい!」
俺とソラさんは呼吸を合わせ、廃墟に向かって一直線に駆け出した。