第十一話
霧咲姉妹に引きずられて外に出た俺は、ようやく今いる街の全貌を落ち着いて見ることができた。
ところどころ魔王に壊されているものの街自体は機能しているようで、商店なども通常営業しているようだ。
「半壊したとはいえでかい街だな。中世ヨーロッパって感じだ」
「でもそこかしこで魔法が使われてますし、やっぱり私たちの世界とは根本的に違う気もします」
確かにソラさんの言う通り、火をつけたりする場所も淡い黄緑色の光が変化して炎になったり、子どもたちがその光を蹴って遊んでいたりする。どうやら魔力やら魔法やらというものが身近にある世界みたいだ。
「お姉さんお姉さん。今日パンティの調子はどう?」
「きゃーっ!? 変態!」
「ソラさんのお姉さんも何かの魔法にかかっているのかな?」
「あれは元からです」
「重病だよちくしょう! おい変態! 変態行為に走るな!」
「ひっぱらないでコウちゃん。パンティが伸びる伸びる」
「街について少しは説明してやろうと思ったが、どうやら無駄だったようじゃな」
「わーっ! 待って待って! 是非解説してくれ今やっつけるから!」
「ああん痛い! チョップやめてチョップ!」
「えっと、それでは魔王さん解説をお願いします」
「ふむ。先ほど貴様らが言っていたように、この世界では普通に魔法が使われておる。魔法線という回線が街中に通っていてな。魔力が潤沢にある土地から街中に魔力が送られ、人々はその魔力を使って日々生活しておるのじゃ」
「なるほど。さっぱりわからん」
「えっと、つまり電力やガスがこの世界では魔力なのではないでしょうか。人の中にも魔力はあるようですから、厳密には違うのでしょうが」
「なるほどわかりやすい! さすがソラさん!」
「そうですか。じゃあご褒美にちょっとその辺りを全力疾走してきて頂けます?」
「汗のにおい!? ねえそれ汗のにおいのためかなぁ!?」
「ぷいふゅー♪ ふー♪」
「口笛吹けてないし誤魔化せてないし!」
「貴様! 人間の分際でわしの解説はわかりにくいというのか!?」
魔王は面白くないのか、今にも噛みつきそうな表情だ。
「いや、おかげでだいぶ理解できたぞ。ありがとな」
「撫でるな無礼者!」
「じゃあパンティを被せますね」
「無礼とかいうレベルじゃない!」
「まあまあ。とにかく飯にしようぜ。俺腹減っちまったよ」
俺は腹をさすりながらみんなに提案する。時間も十時を回っているわけだし、そりゃ腹も減るわ。
「そうですね。この世界の料理も食べてみたいですし」
「ちっ。確かに腹が減った。あそこにカフェがあるからそこで朝食にするぞ」
「賛成だ。しかし高そうな店だな」
外観もおしゃれだし、中にいるお客さん達も心なしかお金を持ってそうな雰囲気だ。
「ところでおぬしら、所持金はいくらじゃ?」
「ゼロだ」
「へっ?」
「無一文です」
「言い直さなくてもよい! ほんとに持っておらんのか!?」
「仕方ないな。私の秘蔵パンティコレクションを売って―――」
「どうやら本当に持っておらんようじゃな。あきれる」
「無視しないで魔王ちゃん! あとパンティください!」
「どさくさに紛れて要求するな! 貴様にだけは絶対渡さんぞ!」
「何故!? 私ほどパンティを愛している者はいないのに!」
「おぬしほどパンティを愛する者はいないから嫌なのじゃ!」
「なにこの矛盾!」
「あーもう、とにかく入るぞ。腹減った。魔王ちゃんの奢りな」
俺は魔王の手を引っ張り、カフェへと引きずっていく。このままじゃ一生朝食にありつけそうにない。
「あっおい引っ張るな! というか魔王にたかるな!」
「シカタナイネ」
「仕方なくなーい!」
こうして俺たちは魔王のお金で無事朝食を済ませ、宿へと戻っていくのだった。