非日常の始まり
不定期すぎるのをどうにかせねば
突然だが俺、黒霧 刀夜は元職業暗殺者、所謂殺し屋だった。
いや、わかっているこのご時世、俺実は殺し屋だったんだ。とか言っても一笑に臥されるだけだ。でも実際殺し屋だったのだから仕方ない。
殺し屋といっても仕事は多岐に渡り、要人の警護や凶悪犯罪者の捕縛、殺害などもやっていた。もちろんメインは目標の暗殺だが。
まぁそんな元殺し屋だった俺が学校なんかに通っている暇などなかった、勉強は一応一流大学へ進学できる程度は教えられている。が、殺しを辞めた俺には殺し以外ほとんどなにもしてこなかったので特にやりたいこともなかった、そんな時に、俺が殺し屋時代に世話になった人に学校に行ってはどうかと言われ、その人の経営する私立高校に通うことになった。
朝。出来るだけ音を立てて教室に入った俺を、目敏く見つけた男の娘が駆け寄ってくる。
「おはよう刀夜」
声を掛けてきたのはダークブラウンのショートボブに小顔でぱっちりとした目、背が低く華奢。という思わず守ってあげたくなる女の子のような容姿を持つ男の親友の小鳥遊 唯だ。女の子みたいな名前だがやはり男だ。というか男の娘だ。
「おはよう、今日も可愛いぞ」
自分の席に向かいながら、そういつものようにからかってやる。すると毎回顔を真っ赤にして上目遣いに
「ぼ、僕はオトコだぞ! そ、その……可愛いとか言われても、困るよ」
こう言ってくる。本当にこういうところが可愛いんだけど自覚ないみたいなんだよな、今もこっちを見てる男子生徒なんか顔をにやけさせてるし。男なんだけど男女共にかなり人気あるしな。あ、やべっ、こっち睨まれた。そっと視線を唯に戻す。
「そういえば知ってる? 」
「ん? 何をだ? 」
「この近くの学校で集団失踪があったんだって、しかも授業中にいきなり誰も居なくなったらしくて神隠しだーとか言われてるけど」
そういえばそんなのが今朝ニュースでやってたか
「あー、そういえば今朝のニュースでそんなのがあったな、まぁ信じちゃいないけど」
そう言うと眉間に眉を寄せて少し心配そうな素振りを見せる
「それでね、その学校のちょうど失踪しちゃったクラスに僕の従姉妹が居て……」
ああ、だからか
「大丈夫だ、きっと戻ってくるよ」
「うん、ありがと。話してちょっと元気でたかも」
そう言ってホッとした表情をする。やっぱりそういう仕草一つ一つが女の子にしか見えないが……男なんだよなぁ。
「それは良かった」
気づいたのはその時だった、この時間ならまだ騒がしい教室が妙に静かだった、そして一部の人達は教室の天井部分を見上げている。他の人達もクラスの異変に気づいたのか喋るのをやめ、天井を見る。それにつられ俺と唯も見上げるとそこにはファンタジー小説や漫画に出てくるような魔方陣が書かれていた。
その魔方陣は次第に光を帯びるようになった。我を取り戻した生徒がスマホを取り出して動画や写真撮ったりして騒ぎ始める。発光する魔法陣に飽きてトイレに行くのか数人が教室の扉に向かうが
「ああっ、くそっなんで開かないんだ! 」
と、言うと次は扉を叩き始める。こんなに音を立てて扉を叩いているのに廊下にいる他クラスの生徒が誰もこちらに意識を向けないことに少しおかしいと思い始めるなか天井を見上げていた生徒が
「ねぇ、あの魔方陣みたいなの近づいてきてない? 」
魔方陣を見ると確かに下降してきていて、床まで到達した瞬間に魔法陣が爆発したかのような強い光が俺たちを飲み込んだ。