第四話 βテスト
私はNewLifeOnlineにβテストを行わない。
それは一握りの人間のみがのしあがれる要因になってしまうからだ。
やり直したい先の世界ですら日陰に生きるしかないなんてあってはならない。
ジャンルにプレイヤースキルに深く左右されないRPGを選んだのは努力すれば必ず報われるからだ。
私の人生は報われなかったが――
そんなわけでβテストは行わない、あくまで公式には。
社内の人間でデバッグをする。
開発に携わった人間全員、つまり会社ぐるみでだ。
うちは有限会社で細々とやっているし、休業しても問題ない。
ちなみに、このテストは改良型VRメットの試験も兼ねてある。
小型化とゲーム性の更なる向上を求めた結果だ。これでもっと自由度を持った動きができるようになる、筈だ。
装着者は勿論私だけ、皆にも秘密だ。
「プレイヤーセレクト、モミジ。」
予め用意されたキャラクターは平凡な見た目の剣士。スタンダードなキャラクターだ。作ったのは滝口弓弦。私の拾った優秀な人材だ
地味じゃないかと抗議したら「あなたにピッタリですよ」と返された。
まぁ、βの間だけだ。終わったら理想のキャラを作ろう。
始まる NewLifeOnlineβ《新しい人生への試験》。