第三話 ゲーム完成
New Life Online、その開発は難航に難航を重ねた。
世界を一から作るというのは空想上の神と同じ事をするという事だ。
簡単ではなかった。
しかしそこは努力の成せる技か、滞った状況を打開するためのVR用の開発エンジンを完成させ、未だ骨組みしか完成していなかった世界に色を、光を与えた。
次に性能の問題。
コンピューターの進化はメモリーの大容量化、高速化を促進し、RAMという存在はなくなっていた。
全データがストレージで賄われる時代。すなわちリアルタイムでデータが保存され、ストレージが超高速なキャッシュとなる。
VR世界の建物とNPCを含む全フィールド、オブジェクトを同時表示できる。広大な世界がロード無く縦横無尽に移動できる。
懸念されていたのはCPUだ。ダイサイズの微細化は既に極限の領域。並行処理でNPCを、風を、草木のざわめきを落ちこぼすことなく演算した。
それができたのは開発用のワークステーションだからだろう。
だが一般家庭にはこの環境が整っていない。
新しい人生と夢を与える世界を金持ちの道楽で済ませたくなかった。
何よりスタートダッシュに遅れた夢見るユーザーが人生を楽しんでいる片手間の奴らに新しい人生でも蹴散らされる様子は見たくなかった。
彼らにとって人生の始まりは平等でなくてはならない。
故にVRメット及びそれに対応するパーソナルコンピュータの普及を待った。