第二話 新しい人生を
第二話 新しい人生を
メディアは大々的に私の顔と名前を晒した。もう大手を振って生きていけない。
間接的に人を殺した自分は、肩身が狭い思いをしていた。
おちおち外に出かけられない。家に引きこもった俺は新聞やニュースサイトで発表当時の反応について調べた。
数々の賞賛の声に顔が綻ぶ。この瞬間だけ自分が以前に戻れる時間だった。
そうやって調べていくうちに、興味を引く話があった。
この技術が普及すれば“もうひとつの地球”を作れるのではないか。
神の理に触れるとか、大袈裟な事を言う記者もいたものだ。以前の自分なら気にも留めなかった筈だ。
だが今の自分には魅力的な話だった。
新しい世界。それすなわち新しい人生。
それが俺とVRの世界との邂逅だった。
目標ができた。これまで常に誰かの言いなりだった彼に夢が生まれた。
自分が輝ける世界の創造。新しい人生を作る。
その為には足場を作らねばならない。彼は信頼ある部下を集め、会社を立ち上げた。
新しい人生と名付けた。
夢の実現の第一歩とするべく、VRメットの修正案を書き上げ、完全なVR体験を得るための土作りをした。安全性の確認の為、自分の身体で実験して。
部下の中には彼の身を心配し、引き留めようとする者もいた。
自分が代わりになると買って出た人もいた。
けれども、これは私のわがままで。
私は彼らを巻き込んだのだ。彼らは私と違い世間に名は公表されていないし社内に残っていてよかった。
何よりこれ以上、自分の所為で誰かを死なせる訳にはいかない。
寝覚めが悪いからな。