おそるべし昭和のテレビ~義母から聞いた話
「「「アポロ!アポロ!」」」
「うわ。手を振ってくれた」
「男子、やめなって」
マイクロバスから子供が黒人に向かって叫ぶと、手を振ってくれたわ。
昭和の時代、外人は珍しかったわ。私は東京だったから外人は珍しくはなかったけど、それでも黒人は珍しかったわ。
黒人を見かけると、ボクシング映画の登場人物の名を言ったわね。
その日はマイクロバスでテレビ局に行ったの。
友達の幸子ちゃんに誘われてテレビ番組の観客として行ったの。他に近所の子が数人いたわ。
幸子ちゃんは子役の劇団に所属していてそのコネね。
番組の内容はね。
【夏休み。ちびっ子天才大集合!】
「さあ、鉄ノ道博士君、小五です。山之内線の駅全部言ってもらいましょう」
「次は料理の天才、魚を三枚に下ろせる魚捌木君、さあ、どうぞ」
観客は大げさに手を叩いたり。笑ったりしていたわね。皆子供よ。
不思議だわ。皆、熱狂的に拍手をしたり。笑ったりするわ。
私と数人、幸子ちゃんに誘われた子以外は、どこかおかしいと思ったの。
「え、何で・・・静かに見ないのかな・・・」
「私語だめだよ・・・」
そしてね。決定的な事が起きたの。
「さあ、次は暗算健君、暗算を披露してもらいます」
するとね。幸子ちゃんがスクッと立ってね。
【ちょっと待った!勝負させて下さい!】
幸子ちゃんがソロバンを片手に舞台に乱入したわ。
「「「えっ」」」
さすがにこれは驚いたわ。こんなことをする子じゃないわ。
【暗算なんて嘘に決まっているわ!私も一緒にソロバンをさせて下さい!一級です】
「おお~と、乱入者だ!」
「まあ、ソロバン少女の乱入だわ!」
そしてね。勝負が始まったけど・・・・
幸子ちゃん立ったままパチパチしているわ。ズレないのかしら。と思ったの。
結局。
・・・・+129は!
暗算君は・・「十万二千五五な~り!」
幸子ちゃんは「十万八百八十です」と答えて。
「正解は暗算君です!」
「ギャフン!」とは言わないけど幸子ちゃんは肩を落としたわ。
司会のアシスタントの女性がね。
【まあ、ソロバン一級でも間違えるなんて・・・】
と棒読みだったわね。それが印象に残っているわ。
後日、帰ったら幸子ちゃんに聞いたの。
「幸子ちゃん。ソロバンやっていたの?」
そしたらね。舌をペロって出したの。
その後、幸子ちゃんの芸能活動は、青年向けの漫画雑誌にグラビアとして載ったかな。
「〇〇〇〇大学の幸子ちゃん」
水着だったわね。街で見かけた美人大学生、素人という触れ込みだったわね。だけど、幸子ちゃん。短大に行ったわ。
それ以来、芸能活動はやめたわね。
今でもあの空間は何だったのか。もしかして、あの観客は全て子役を集めたのか。
聞きたかったわね。
・・・・・・・・・・・・・
昭和の時代のテレビの話を義母から聞いた。
「さすがに、子役が観客や素人として・・・あっ」
気がついた。我家には十年以上テレビがないのだ。
「もうね。それが分かってからテレビを見る気が起きなくてね」
通常、年配者はテレビを見たがるものだと思ったが・・・そういったものか。
大げさな演出は飽きられたのか。
さすがに現代は違うだろう。と思ったが・・・
SNSでこんなニュースが流れてきた。
‘’医師がXで告発、テレビ局に切り取り報道され真逆の意見を言っているようにされた!’’
コロナの時だ・・・SNS時代、テレビに取って相性が悪いのだろうな。と思う俺がいた。
最後までお読み頂き有難うございました。




