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体育大学まるごと異世界転移 ~帝体大魂が世界を変える~  作者: 空腹原夢路


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第30章 帝体大の野球

報告会から一夜が明けた。


帝体大のグラウンドには、朝日とともに各部活の面々が集まっていた。


狩野がホワイトボードの前に立つ。


「状況を整理する」


白石がタブレットを操作しながら説明を始めた。


「派遣組の4人――大賀、米倉、速水、井戸川は、それぞれマジーナ王国と魔王国に残る。つまり、相手チームの戦力になったってこと」


ざわめきが広がる。


「なんで野球部のエース級を派遣したんだ?」


誰かが疑問を口にした。


狩野が答える。


「簡単な話だ。マジーナ王国も魔王国も、野球は初心者。そこに俺たち野球部がフルメンバーで挑んだら、ただの虐殺になる」


「それじゃスポーツじゃねぇ」


神宮寺が頷いた。


「そういうことだ。あいつらを派遣したのは、相手を強くするため。同じ条件で、真剣勝負をするためだ」


矢田が口笛を吹いた。


「つまり、俺たちも野球初心者の寄せ集めで戦うってことか」


「そうだ」


狩野が全員を見回した。


「野球部で残ってるのは俺と白石だけ。他の野球部員は異世界謳歌組として外に出てる。だから、お前たちの力を借りたい」


「面白ぇじゃねぇか」


神宮寺が拳を鳴らした。


「サッカーの次は野球で世界を獲る。それが帝体大だろ」


「おう!」


声が上がった。


白石がホワイトボードにポジション図を描いた。


「まず、スタメン9人とベンチメンバーを決めるわ。各部活から希望者を募ったから、順番に決めていく」


狩野が頷いた。


「まず、俺が投手をやる。元々中学までは投手だった。大賀の160kmには遠く及ばないが、制球と変化球でかわすタイプだ」


「キャプテン自らマウンドか」


「他に投げられる奴がいない。俺がやるしかない」


「次、捕手」


白石が続ける。


「投手と捕手の連携は野球の要。誰かいる?」


「俺がやる」


手を挙げたのは大江山だった。


「大江山?経験は?」


「ねぇよ。でも、俺の体格なら本塁のブロックは誰にも負けねぇ。どすこいで守り抜く」


狩野が大江山を見た。


「配球は俺が出す。お前は俺の球を受け止めて、本塁を死守してくれ」


「任せとけ」


「内野を決める。まずセカンド」


「俺だ」


矢田が手を挙げた。


「中学まで野球部でセカンドやってた。高校でサッカーに転向したけど、感覚は残ってる」


「経験者か。助かる」


「サードは?」


「俺がやる」


神宮寺が一歩前に出た。


「サードは強烈な打球が飛んでくるんだろ?ラグビーで鍛えた反射神経と体幹なら、どんな打球も止めてみせる」


「頼んだ」


「ショートは?守備範囲の広さと肩の強さが必要よ」


白石が問いかける。


「……俺がやってみる」


手を挙げたのは黒崎だった。


「剣道で培った反応速度と足さばきがある。送球は練習で覚える」


「黒崎なら大丈夫だろう。頼んだ」


「ファーストは?」


沈黙が流れた。


そのとき、一人の男が手を挙げた。


「俺にやらせてくれ」


レスリング部の男だった。


狩野が頷いた。


「お前は確か……レスリング部の」


「鷹野勇一だ。2年」


がっしりとした体格。低い重心。


「ファーストは送球を確実に捕るのが仕事だろ?レスリングで鍛えた下半身と、相手の動きを読む目がある。どんな球も逸らさねぇ」


狩野は鷹野を見た。


「……いい目してるな。鷹野、ファーストは任せた」


「おう」


「次、外野3人」


白石が続ける。


「センターは守備範囲が広いから、足が速い人がいいわね」


「俺がやる」


手を挙げたのは北野だった。


「北野?お前、サッカーでキーパーだろ」


「ああ。でも、元々足には自信がある。広い範囲をカバーするのは得意だ。それに、野球のキーパー……キャッチャーは大江山がやるんだろ?なら俺は外野で貢献する」


「わかった。北野、センターだ」


「レフトは?」


「俺に任せろ」


手を挙げたのは村瀬だった。


「ボクシングで鍛えた動体視力がある。飛んでくる球を目で追うのは得意だ」


「村瀬、レフトだ」


「ライトは?」


「俺がやりたい」


小宮が手を挙げた。


「サッカーでは右サイドをやってた。右側の守備は任せてくれ」


「小宮、ライトだ」


白石がホワイトボードに書き出した。


帝体大スターティングメンバー

1番 センター 北野(サッカー部)

2番 セカンド 矢田(サッカー部)

3番 サード 神宮寺篤(ラグビー部)

4番 キャッチャー 大江山剛志(相撲部)

5番 ファースト 鷹野勇一(レスリング部)

6番 レフト 村瀬(ボクシング部)

7番 ライト 小宮(サッカー部)

8番 ショート 黒崎翔(剣道部)

9番 ピッチャー 狩野陣(野球部)


「これでスタメン9人が決まった」


狩野が頷いた。


「次、ベンチ入り6人を決める」


白石が続ける。


「控えがいないと、怪我や交代に対応できない。希望者、前に出て」


数人が手を挙げた。


「順番に名乗ってくれ」


最初に前に出たのは、細身だが引き締まった体つきの男だった。


「陸上部3年、風間翔太。短距離専門だ。100mのタイムは10秒台前半。代走要員として使ってくれ」


「足が速いのは武器だ。風間、ベンチ入りだ」


次に前に出たのは、長身の男だった。


「バスケ部2年、中島啓介。身長は190cm。高いフライを捕るのは得意だと思う。外野の控えとして使ってくれ」


「でかいな。中島、ベンチ入りだ」


次に前に出たのは、ずんぐりとした体格の男だった。


「柔道部2年、田村健。受け身と組み手には自信がある。キャッチャーの控えをやらせてくれ」


「柔道の下半身は捕手向きだな。田村、ベンチ入りだ」


次に前に出たのは、眼鏡をかけた女性だった。


「アーチェリー部3年、弓削真琴。目には自信があるわ。遠くの打球の落下点を読むのは得意よ」


「弓削、外野の控えでベンチ入りだ」


次に前に出たのは、日焼けした肌の男だった。


「水泳部2年、河合健太。肩の可動域が広いから、投げるのは得意だと思う。内野の控えで使ってくれ」


「肩が強いのは内野で活きる。河合、ベンチ入りだ」


最後に前に出たのは、小柄だが筋肉質な男だった。


「体操部2年、藤本翼。身体の柔軟性と瞬発力には自信がある。どこでも守れるユーティリティとして使ってくれ」


「器用なのは助かる。藤本、ベンチ入りだ」


白石がホワイトボードに追記した。


ベンチ入りメンバー

・風間翔太(陸上部)――代走要員

・中島啓介(バスケ部)――外野控え

・田村健(柔道部)――捕手控え

・弓削真琴(アーチェリー部)――外野控え

・河合健太(水泳部)――内野控え

・藤本翼(体操部)――ユーティリティ


「これで帝体大野球チームの完成だ」


狩野が全員を見回した。


「野球部は俺ひとり。あとは全員、他の部活からの助っ人だ」


「寄せ集めってことか」


神宮寺が苦笑する。


「そうだ。だが、それでいい」


狩野の目が光った。


「マジーナ王国には大賀と米倉がいる。魔王国には速水と井戸川がいる。どっちも野球部のエース級が教えてる」


「つまり、相手も強い」


「ああ。でも、相手も初心者の寄せ集めだ。条件は同じ。だからこそ、真剣勝負になる」


矢田が拳を握った。


「サッカーの足さばき、ラグビーのフィジカル、剣道の反応速度、相撲の不動、レスリングの下半身、ボクシングの動体視力……」


「全部を野球に活かす」


狩野が続けた。


「それが帝体大の野球だ。誰もやったことのない、俺たちだけの野球を作る」


「おう!」


全員が声を上げた。


「じゃあ、練習を始めるぞ!」



練習が始まった。


まずはキャッチボール。


「神宮寺、もっと身体全体を使って投げろ!手投げになってる!」


「こうか?」


「そうだ!全身を使え!」


神宮寺はラグビーで鍛えた肩を活かし、低い軌道の送球を覚えていく。


矢田はセカンドの位置でノックを受けていた。


「矢田!さすがだな!ちょこまか動くプロだ!」


「ありがと!ってそれって褒めてる!?」


サッカーで培った足さばきを、野球の守備に応用する。


大江山はキャッチングの練習だ。


「大江山、ミットをフラフラ動かすな!」


「こうか!」


「そうだ!!ピッチャーを信じてどっしり構えとけ!」


相撲で培った不動の構えが、キャッチングに活きる。


黒崎はショートでノックを受けていた。


「黒崎、補玉も送球が安定してきたな!」


「剣道の構えを応用してる。送球も体の軸を意識すれば、腕は安定する」


剣道の体さばきが、野球の守備に活きていた。


北野はセンターでフライを追っていた。


「北野、落下点の読みがいいな!」


「キーパーやってたからな。ボールの軌道を読むのは得意だ」


サッカーのキーパー経験が、外野守備に活きている。


鷹野はファーストで送球を受けていた。


「鷹野、どんな球も逸らさねぇな!」


「レスリングで相手の動きを読む訓練をしてきた。ボールの軌道も同じだ」


低い重心と柔軟な対応力が、ファーストの守備に活きている。


村瀬は打撃練習に入っていた。


「村瀬、いい当たりだ!」


「ボクシングのパンチと同じだ。腰の回転で力を伝える」


ボクシングの体重移動が、バッティングに応用されていた。


狩野はマウンドで投球練習をしていた。


大江山が構え、狩野が投げる。


パシッ。


「いい音だ、狩野」


「まだまだだ。もっとコーナーを突けるようにならないと」


狩野は黙々と投げ続けた。


ベンチ入りメンバーも、それぞれの持ち場で練習に励んでいた。


風間は走塁練習でベースを駆け抜ける。


「速ぇ!」


「当たり前だ。100m10秒台を舐めるな」


中島は高いフライを追いかける。


「身長があると、守備範囲が広いな」


「バスケでリバウンド取ってたからな。落下点を読むのは得意だ」


田村は大江山の隣でキャッチングを学ぶ。


「捕手は奥が深いな……」


「柔道の受け身と同じだ。相手の力を受け止める」


弓削は外野からの返球練習をしていた。


「弓削、肩も強いじゃねぇか!」


「弓を引く筋肉は、投げる筋肉と同じらしいわ」


河合は内野の連携練習に参加していた。


「河合、動きがいいな!」


「水泳で全身を使う感覚があるからな。野球も全身運動だ」


藤本はあらゆるポジションを試していた。


「藤本、器用だな!」


「体操で色んな動きをしてきたからな。身体の使い方は得意だ」



夕暮れ。


練習が終わり、全員がグラウンドに集まった。


狩野が全員を見回す。


「今日の練習、どうだった?」


神宮寺が笑った。


「正直、野球ってこんなに難しいとは思わなかった」


矢田も頷く。


「サッカーとは全然違う。でも、面白いな」


大江山が汗を拭いた。


「捕手ってのは、想像以上に奥が深い。米倉の凄さがわかった」


黒崎が拳を握る。


「でも、それぞれの競技で培ったものが活きてる。無駄じゃなかった」


北野が空を見上げた。


「サッカーも野球も、結局はチームスポーツだ。仲間を信じて、自分の役割を果たす」


鷹野が頷いた。


「レスリングは個人競技だと思ってた。でも、チームで戦うのも悪くねぇ」


村瀬が拳を握った。


「ボクシングも一人で戦う。でも、こうやって仲間と一緒に練習するのは……新鮮だな」


狩野は笑った。


「いい顔してるな、お前ら」


そして、全員に向かって言った。


「俺たちは寄せ集めだ。野球部は俺ひとり。あとは全員、違う競技の専門家だ」


「でも、それが帝体大の強みだ」


狩野は拳を突き上げた。


「マジーナ王国も、魔王軍も、同じ条件で俺たちと戦う。野球初心者同士の真剣勝負だ」


「だからこそ、俺たちの"スポーツ力"が試される」


「各競技で鍛えたフィジカル、反応速度、判断力、チームワーク……全部を野球にぶつける」


「俺たちの野球を見せてやろう。マジーナ王国にも、魔王軍にも、そして――大賀たちにも!」


「「「「おおおおお!!!」」」」


グラウンドに、帝体大の咆哮が響き渡った。


白石はベンチでタブレットにメモを取りながら、小さく微笑んだ。


「寄せ集めの野球チーム…でも、皆んな頼もしいわね」


夕日がグラウンドを照らす中、帝体大の新たな挑戦が始まっていた。

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