第20章 帝体大 vs 魔王軍 ― 決戦とPK戦
夜の帝体大グラウンドは、もはや戦場のようだった。
篝火の熱と観客の歓声が混じり、空気は震えていた。
スコアは3対0。
だが、帝体大の選手たちの目には、まだ火が灯っていた。
神宮寺が拳を握る。
「ここからだ。スポーツは最後まで、諦めた奴が負けだ。」
矢田が笑って頷く。
「そうだな。――行こう、帝体大!」
笛が鳴った。
後半戦、開始。
***
魔王軍の猛攻は止まらなかった。
血斧ガルドが地面を抉るような踏み込みで突進し、
双子の獣人・バルゴとバルガは獣のようなスピードで回り込む。
ガンッ!
黒崎の足元からボールが弾け飛んだ。
そこへ幻影ヴァルナが舞い込むように現れ、
つま先でボールをすくい上げると――そのまま華麗にターンして前線へ送った。
「来い人間共ォォ!!!」
ガルドの咆哮とともに、帝体大の守備ラインは再び崩壊。
矢田も小宮も地面に叩きつけられ、芝生に転がる。
それでも――帝体大の誰も折れなかった。
「くるぞ!!!」
黒崎の叫び。
神宮寺が歯を食いしばりながら最前線に立つ。
ガルドの質量が突き刺さる――
地響き。土煙。観客席から悲鳴が漏れる。
が。
「……退かねぇよ」
神宮寺は踏みとどまった。
膝が軋み、肩が震えている。それでも、倒れない。
「お前らの戦い方――もう見切った!」
黒崎が滑り込んでカバー、ボールを掻っ攫う。
会場が息を呑んだ。
黒崎が右サイドへロングスルーパス。
矢田が全速力で走り込み、胸トラップから前へ押し出す。
「小宮ィィィッ!」
矢田が叫び、右サイドの翼、小宮が走る。
迷いのないクロス。
――ズドンッ!
ボールが矢田の足からゴール左隅へ突き刺さる。
「ゴォォォォォォル!!!!!!」
観客席が爆発。
スコアは【3 - 1】。まだ2点差。
それでも勢いは確かに傾いた。
「まだだァァァ!!帝体大ぁぁぁ!!!」
応援団の太鼓が鳴り響き、チア部の目に涙がにじむ。
帝体大は呼吸を合わせ始めた。
黒崎が司令塔。神宮寺が鉄壁。矢田が突撃兵。
まるで一つの生き物のように動き始める。
幻影ヴァルナの足技にも動じない矢田。
フェイントを読み、逆を突く。
そこから単独突破――そして再び、右足を振り抜く。
ゴォォォル!!!!
【3 - 2】
魔王軍の観客席にざわめき。
ガルドの眉間では汗が光る。
「この人間……進化している……?」
ヴァルナの声がわずかに震えた。
「スポーツってのはな――呼吸だ!」
矢田の声が響く。
帝体大全員の心拍が、どこかで同じリズムになる。
黒崎 → 小宮 → 神宮寺 → ワンタッチで矢田。
ラインを切り裂く光のような連携。
神宮寺が足で流し、矢田が滑り込みながら押し込んだ――
ゴォォォォォル!!!
スコア【3 - 3】!!!
歓声は地響き。
帝体大、奇跡の同点!
王国兵も、魔王軍観客でさえ息を呑んでいた。
***
ピピーッ!!
後半終了。スコアは3対3。
観客席は総立ち。
だが試合は、まだ終わらない。
土屋学生会長が旗を掲げ、声を張り上げる。
「――勝負はPK戦で決する!!!」
会場が静まり返る。
篝火の炎が、三本の旗を照らした。
三つ巴の最終決戦、その行方を決める時が来た。
***
両陣営はコイントスで順番を決めた。
帝体大が先攻。
蹴るのは、試合に出ていた5人――黒崎、神宮寺、矢田、大江山、北野。
守るのは魔王軍の守護鬼・ドレイク。
交互に5本ずつ。先に多く決めた方が勝利だ。
観客の息が止まる。
1本目:黒崎
黒崎が助走を取る。
「外すなよ、黒崎!」矢田が叫ぶ。
「言われなくても!」
鋭いキック。ボールはゴール左隅へ吸い込まれた!
帝体大 1 - 0 魔王軍
バルゴが蹴る。北野が飛ぶ――届かない。
1 - 1
2本目:神宮寺
「守るだけが俺の仕事じゃねぇ!」
神宮寺が鋭く蹴り込み、右下隅へ決めた!
帝体大 2 - 1 魔王軍
続くバルガも落ち着いて決める。
2 - 2
3本目:矢田
篝火が揺れ、風が吹く。
矢田は深呼吸をひとつ。
「俺らのサッカー、ここで証明する……!」
助走――一瞬止まる。
フェイント! キーパーが右へ飛んだ瞬間、逆方向へ流し込む!
決まった!帝体大 3 - 2!
魔王軍はヴァルナが蹴る。妖艶なフェイントをかけ、左隅へ突き刺す。
3 - 3
4本目:大江山
「俺が決めなきゃ誰が決める!」
相撲部の怪力シュート。ゴール右上へ突き刺さる!
帝体大 4 - 3!
続く魔王軍キャプテン・ガルド。
「俺の一撃、止められるかァ!」
豪快なシュート――北野が反応!
左手一本で弾き出した!
帝体大リードを守る!
5本目:北野
キーパー北野。これはサッカー部の意地だ。
「決めたら優勝だ!」神宮寺が叫ぶ。
北野は静かにボールを置いた。
「守るだけじゃない。勝利も掴む!」
助走――
ドン!
ボールはゴール右下へ吸い込まれた!!
帝体大 5 - 3!
ドレイクが動けなかった。
笛が鳴る。
「試合終了――勝者、帝国体育大学!!!」
歓声が夜空を裂いた。
チア部が泣き崩れ、学生も国民も肩を組んで叫ぶ。
「帝体大ァァァァァァ!!!」
神宮寺は空を仰ぎ、矢田はその場に膝をついた。
北野が笑いながら駆け寄り、全員が抱き合う。
魔王軍の選手たちは黙って彼らを見つめ、やがてガルドが歩み寄った。
「……認める。お前らの戦い方、悪くねぇ。」
矢田が手を差し出す。
「次は、もっとフェアにやろうぜ。」
ガルドは笑い、力強くその手を握った。
「望むところだ、人間。」
***
篝火が夜空に舞い上がり、三本の旗が風に翻る。
花火が上がり、観客が叫ぶ。
「帝体大ァァ!!初代ワールドカップ王者ァァ!!!」
矢田は笑いながら呟いた。
「俺たちやったんだな…」
剣も魔法もいらない。
心と体でぶつかり合う――それが、スポーツだ。
こうして、異世界初の“ワールドカップ”は、
帝体大の勝利によって幕を閉じた。




