第17章 帝体大 vs マジーナ王国
試合開始の笛が鳴り響く。
第1回ワールドカップ――第2試合「帝体大 vs マジーナ王国」。
グラウンドを包む歓声は、まるで地鳴りのようだった。
王国の兵士たちは昨日の雪辱を果たすために、燃えるような気迫で並んでいる。
その眼には、怒りと執念、そして何よりも“意地”が宿っていた。
「王国の誇りを取り戻せぇぇぇ!!!」
キャプテン・アレクサンドロスの雄叫びとともに、試合が始まった。
***
試合序盤、主導権を握ったのはマジーナ王国だった。
彼らは魔王軍との戦いで学んでいた。
“このサッカーは、倒れた者が負ける”。
だからこそ、序盤から肉弾戦を仕掛けてきた。
大柄な騎士たちが体当たりで帝体大の選手を吹き飛ばし、ボールを強引に奪う。
観客席からはどよめきが起こる。
「やべぇ、気迫が違う!」
「昨日より速ぇぞ……!」
神宮寺が身体をぶつけ、なんとかボールをカットするが、受けた衝撃で砂を蹴り上げた。
「……強くなってやがる。昨日の敗北で、目が覚めたか」
黒崎が矢田へとボールをパスするが、すぐに騎士団のタックルが飛び込んでくる。
矢田はギリギリでかわすも、勢いで転倒。
「痛ってぇ……!あいつら、マジで殺す気かよ!」
王国の攻撃は止まらない。
力任せに押し込み、何度も帝体大のゴール前に迫る。
守護神・北野が全身を投げ出してボールを弾く。
「ナイスセーブ!!!」
応援席からの歓声が響いた。
だが、帝体大のベンチは焦っていなかった。
「帝体大はこんなもんじゃ負けはしない。」
矢田が立ち上がりながら、静かに呟く。
「よし……想定通りだ」
***
10分を過ぎたころ、帝体大が徐々に息を吹き返す。
肉弾戦を避け、ボールを横に、後ろに、斜めに。
パスの連鎖が広がり始めた。
「黒崎、右サイド流せ!」
「了解!」
矢田、黒崎、神宮寺――それぞれの個性が見事に噛み合い、ボールが滑らかに動き出す。
ラグビー部の神宮寺は体幹の強さで相手の突進をいなし、剣道部の黒崎は竹刀さばきで培った精密なフットワークを披露。
陸上部のスプリンターがサイドを駆け上がり、相撲部の大江山が敵の進路をブロックする。
まるで多種目の競技が一つの舞台で融合したような、異世界サッカーの真骨頂。
矢田が笑う。
「なぁ、これが“帝体大スタイル”ってやつだろ?」
ボールが前へ、前へ。
観客が息を呑む。
黒崎が中央へ切り込み、ラストパスを出す。
矢田が走り込み――
ドンッ!!
一直線に放たれたシュートが、王国のゴールを貫いた。
ゴオオォォル!!!
帝体大応援団が爆発したように歓声を上げる。
「帝体大!帝体大!帝体大!!!」
「ふざけるなあああ!」
王国の守護者ミューラーが怒号を上げ、再び突撃する。
だが、帝体大は冷静だった。
「焦るな。相手は荒れてる。冷静に技術で圧倒しろ」
神宮寺がチームに声をかけ、ボールを落ち着かせる。
その後の展開は、まるで芸術のようだった。
帝体大は一切の無駄な接触を避け、技術と連携だけで試合を支配。
パス、ドリブル、トラップ、フェイント――
それぞれが学生時代の訓練の積み重ねであり、“スポーツ”そのものだった。
そして後半30分、再び矢田が放った弧を描くシュートが、ゴールネットを揺らした。
スコア――2対0。
帝体大の勝利。
***
試合終了の笛が鳴ると、王国の兵士たちは膝をついた。
悔しさを滲ませながらも、どこか晴れやかな顔をしていた。
アレクサンドロスが神宮寺に手を差し出す。
「見事だ……お前たちの“戦い方”を、学んだ」
神宮寺はその手を握り返した。
「俺たちは戦いじゃなく、スポーツで勝った。それだけだ」
矢田が笑って付け加える。
「またやろうぜ、次は普通のルールでな!」
観客席からは拍手と歓声が沸き起こった。
スポーツの力が、国境を越えた瞬間だった。
***
しかし、その様子を黙って見ている者たちがいた。
遠く、観客席の最上段――魔王軍の選手たちである。
「人間が……あの程度で喜んでいるか」
“血斧”ガルドが腕を組み、牙をむいた。
「まるで遊びだな。だが、その“遊び”を次で終わらせてやる」
赤髪のヴァルナが妖艶に微笑む。
「ふふ……ようやく、私たちの番ね」
黒と赤の旗が静かに風になびく。
帝体大の勝利に沸くグラウンドの空気を裂くように…
魔王軍の瞳が、次なる獲物を見据えていた。
最終決戦、「帝体大 vs 魔王軍」
運命の笛は、すぐそこまで迫っていた。




