第15章 マジーナ王国 vs 魔王軍
開幕セレモニーの熱狂が冷めやらぬうちに、第1試合の火蓋が切って落とされた。
「マジーナ王国 vs 魔王軍」――三つ巴総当たり戦の最初の一戦だ。
「第一試合!!!マジーナ王国 vs 魔王軍の試合を開始する!!!!」
審判役を務める土屋学生会長の声が響く。
両陣営の選手たちが中央に進み出る。
王国側は金獅子の紋章を掲げ、精鋭の騎士たちが規律正しく整列。
対する魔王軍は、筋骨隆々のオーガ、鋭い牙を持つ獣人、妖艶な赤髪の魔族――まるで闘技場に解き放たれた猛獣の群れのようだった。
観客席の一角、帝体大の学生たちが固唾をのむ。
「……これが魔王軍のフィジカルか」
神宮寺が腕を組み、険しい目で相手を見据える。
矢田は隣でボソッと漏らした。
「いや、いくらなんでもデカすぎだろ……」
試合開始の笛。先攻はマジーナ王国だ。
最初に攻めるのは王国のキャプテン、将軍アレクサンドロスだった。
力強い一蹴りでボールが前線へ送られる。王国兵たちは規律ある隊列を崩さず、まるで軍隊行進のような整然とした布陣で前進した。
「行けぇー!」
観客席から王国兵の声援が飛ぶ。
だが――。
次の瞬間、魔王軍キャプテン“血斧”ガルドが突進。
まるで戦場の突撃のごときラリアットで前衛の騎士を吹き飛ばし、その勢いでボールごと蹴り奪った。
「な、なんという…あれは反則じゃないのか……!」
王国の将軍が叫ぶが、審判は笛を吹かない。
土屋会長が冷静に掲げた旗には「プレー続行」の文字。
「これが“ファールなし”ルールだ……!」
黒崎が苦い顔で呟いた。
ガルドは巨体を揺らしながらドリブル。
その背後から双子の獣人バルゴ&バルガが並走し、まるで獲物を追い詰める狼の群れのように騎士たちを蹴散らしていく。
王国の守護者ミューラーが立ちはだかるも、双子の同時タックルで吹き飛ばされ、その隙にガルドが豪快にシュート。
ゴオォォォル!!
魔王軍サイドが爆音のような咆哮を上げる。
「血を見せろォ!」「もっと壊せぇ!」
観客席から地鳴りのような声援が響き、王国兵たちは顔を青ざめさせた。
その後も王国は必死に反撃を試みる。
弓兵出身の俊敏な選手がサイドを駆け上がり、クロスを上げる。
だが、ボールは空中で赤髪の魔族“幻影”ヴァルナに攫われた。
彼女は華麗に足でボールを操り、まるで舞うように相手を翻弄する。
その動きに王国選手たちは一瞬立ちすくみ、次の瞬間にはまた得点を奪われていた。
「おい、なんだあのフェイント……!」
矢田が頭を抱える。
「いや、もうフェイントとかの次元じゃねぇ……」神宮寺は歯を食いしばった。
前半だけでスコアは3対0。
後半に入っても流れは変わらない。
王国兵たちは盾のように体を張り、何度も倒されながら立ち上がるが、その度に魔族の圧倒的なフィジカルが叩き潰した。
観客席では帝体大の学生たちも思わず沈黙する。
「……俺たち勝てるのか?」
誰かがつぶやき、周囲の空気が張り詰めた。
最終スコアは――7対0。
マジーナ王国の惨敗だった。
王国兵たちはうなだれ、観客席からは悔し涙の声。
だが彼らのキャプテン、アレクサンドロスは倒れ伏しながらも歯を食いしばり、拳を握りしめて叫んだ。
「我らは……敗北を認める!だが誇りは折れていない!次は必ず……!」
その声に、王国兵たちも剣を掲げて応えた。
対照的に魔王軍の選手たちは嘲笑を浮かべ、観客席に向かって胸を叩き、牙を剥いて勝利の雄叫びを上げる。
「人間ども、震えて待て!次はお前たちの番だァ!」
帝体大サイドの観客席に向けられたその挑発に、矢田は拳を握った。
「負けらんねぇ……絶対に」
神宮寺も静かに頷く。
「次は俺たちの試合だ。ここで引いたら、この国ごと潰される。まずは次の試合、マジーナ王国との戦いに備えよう」
矢田は拳を握りしめ、燃えるような目でグラウンドを見つめた。
「絶対に勝つ。俺たちのやり方で――スポーツで、勝つんだ」
魔王軍の強さを目の当たりにしながらも、帝体大の心には確かな闘志が芽生えていた。
その炎は、さらに燃え広がることになる。
――次戦、「帝体大 vs マジーナ王国」。




