第14章 開幕セレモニー&選手入場
帝体大グラウンドは、未だかつてないほどの熱気に包まれていた。
仮設の観客席はぎっしりと人で埋め尽くされ、立ち見まで様々種族で溢れかえっている。
帝体大の学生や国民たちに加え、王国からやってきた兵士や貴族、さらに魔王軍の観客までが入り乱れていた。
旗が風にひらめき、太鼓とラッパが鳴り響き、祭りの最高潮のような雰囲気だ。
「ただのグラウンドが……まるでスタジアムだな」
神宮寺が腕を組んで呟く。
矢田はその横で胸を高鳴らせながら頷いた。
「いよいよだね……!」
***
マジーナ王国宰相の合図とともに、開幕セレモニーが始まった。
篝火に照らされ、中央に三本の旗が掲げられる。
青と白の「帝体大旗」、黄金の獅子が描かれた「マジーナ王国旗」、そして黒に赤い稲妻をあしらった「魔王軍旗」。
三枚が並ぶ様は壮観で、会場は一瞬静まり返る。
「今ここに、歴史に残る大競技会の幕が開かれる!」
司会役を務める小畑教授が張り上げる声は、もはやスポーツ実況さながらだった。
「三つの勢力が、剣や魔法ではなく“スポーツ”で覇を競う――第1回ワールドカップ!!」
会場から大歓声。帝体大側は「帝体大!帝体大!」の大合唱、王国側はラッパを吹き鳴らし、魔王軍の観客席からは低い唸り声のようなブーイングが轟いた。
「人間どもが戯れておるわ!」
「足で球を蹴る?愚かしい!」
「血で決着をつけろ!」
罵声は重く響いたが、逆に会場の緊張感をさらに高めた。
***
いよいよ、選手入場だ。
最初に姿を現したのは――帝体大チーム。
吹奏楽部が勇ましいマーチを奏で、チア部がポンポンを振りながら先導する。応援団の太鼓に合わせて帝体大コールの掛け声が響き、選手たちが胸を張って入場してきた。
「キャプテン、神宮寺!」
背番号4を背負った神宮寺が大きく手を振ると、スタンドから割れんばかりの歓声。
「鉄壁のディフェンダー!ラグビー仕込みの突進力!」
「ストライカー、矢田!」
矢田はボールを足元でリフティングしながら登場。観客から黄色い声が上がる。
「スピードとノリで突破する帝体大のトリックスター!」
続いて剣道部の黒崎、相撲部の大江山、ボクシング部の村瀬――と、サッカー部に加え、各運動部から選りすぐられた猛者たちが紹介されるたびに、帝体大サポーターは総立ちになった。
最後にゴールキーパー、サッカー部の守護神・北野が両手を掲げると、観客席から「北野ォォォ!!!」と熱狂的な声援が飛ぶ。
帝体大チームは整列し、胸を張って観客へ一礼。チア部が花火を打ち上げ、夜空に光が弾けた。
***
続いて、マジーナ王国チームの入場だ。
黄金の獅子の旗を先頭に、鎧姿の兵士たちが堂々と行進する。
「攻守共にマジーナ王国最強!キャプテンはこの男!将軍アレクサンドロス!」
巨体を誇る男が槍の代わりにサッカーボールを掲げると、王国兵たちが「ウォオオオ!」と一斉に咆哮した。
「マジーナ王国の守護者!戦場では彼の後ろが安全地帯!鉄壁のミューラー!」
実況めいた紹介に、帝体大の観客が「おぉ~!」とざわめく。
続いて弓兵隊出身の俊敏な選手、騎士団の馬上槍試合経験者、さらには若き王国騎士の女戦士まで――武勇を誇る精鋭がずらりと並ぶ。
鎧を脱ぎ、革の軽装に身を包んだ姿はまさに「軍の誇りをかけたサッカーチーム」だった。
王国の観客席からは「我らの誇り!」「勝て、王国!」と熱い声援が飛ぶ。
***
そして最後に現れたのは――魔王軍チーム。
黒と赤の旗が翻り、会場全体がざわついた。重厚な足音が響き、獣のような魔族たちが次々と姿を現す。
「キャプテン、“血斧”ガルド!」
巨大なオーガが咆哮し、会場の空気が震える。
「ファウルなしルールを最も喜ぶ男!全てを蹴散らす勢いだ!!」
「彼女の幻に惑わされた戦士は千を超える!“幻影”ヴァルナ!」
赤髪の女魔族がしなやかに足を上げ、ボールを宙に蹴り上げる。妖艶な笑みを浮かべる姿に、人間の観客席から思わず悲鳴混じりの歓声が上がった。
「魔王軍最恐の双子!“双牙の獣”バルゴ&バルガ!二人のコンビネーションは魔王軍随一!!」
双子の獣人が同時に吠える。その迫力に子供たちが怯えて母親の後ろに隠れるが、帝体大応援団は逆に「負けるなー!」と声を張り上げた。
魔王軍の観客席からは地響きのような声援と罵声が入り混じる。
「人間など蹴り潰せ!」
「血を見せろ、血を!」
「ワールドカップ?笑わせる!」
帝体大と王国の観客がそれぞれ声を張り返し、三つ巴の応援合戦となる。
***
三陣営の選手がグラウンド中央に並んだ。
篝火の炎が風に揺れ、三本の旗が夜空に翻る。
「さあ――!」小畑教授の声が最高潮に達した。
「これより三つ巴の大競技会、“第1回ワールドカップ”が開幕する!!」
帝体大の学生たちは肩を組んで「帝体大コール」を響かせ、王国兵は剣の柄に拳を叩きつけるように声を揃え、魔王軍の観客は獣のような遠吠えを上げる。
熱気と緊張と狂気が渦を巻く中――歴史的な一戦の幕が、いま切って落とされようとしていた。




