第11章 挑戦状
帝体大キャンパスの正門に、不気味な黒い旗を掲げた一団が現れた。
鎧を纏った魔族の兵たち。先頭に立つのは背丈の二倍もある鬼面をつけた使者だった。
「帝国体育大学に告ぐ!」
その声は地響きのように響き渡り、学生も国民も足を止める。
「我ら魔王軍は、貴様らが誇る“スポーツ”とやらで勝負をしに来た!!!」
広場がざわめきに包まれた。
神宮寺が「……はぁ?」と眉をひそめ、矢田が思わず跳び上がる。
「きたぁぁぁぁぁ!!!」
「え、喜ぶとこか?」黒崎が呆れる。
使者は大きな声で宣言した。
「七日後大平原にて!貴様らを潰す!!!!!」
挑戦状を地面に叩きつけると、魔族たちは不気味な笑いを残して森に消えていった。
***
その夜、学生会議。
広い教室はぎゅうぎゅう詰めで、部長やゼミの代表、教授陣、そして国民までが集まっていた。
「受けるのか?こんなの」
黒崎が腕を組む。
「当たり前だろ!」矢田が即答。「スポーツで勝負?俺らの土俵じゃん!」
「土俵は俺たち相撲部のだがな」大江山がどっしり頷くと、場に笑いが広がる。
真田教授が眼鏡を押し上げ、冷静に言った。
「挑戦を避ければ“逃げた”と烙印を押されます。我々がここで築いた信頼も揺らぎかねない。避けられぬなら……受けて立つべきでしょう」
「なら決まりだ!」
神宮寺が拳を打ちつけた。「俺たちはどんな競技でも本気でやる!受けて立つ!」
「おぉぉぉぉ!!!」
応援団が太鼓を打ち鳴らし、チア部が拳を振り上げる。
「帝体大!帝体大!帝体大!」
広場にコールが響き渡り、子どもたちまで一緒に跳ねた。
***
翌日。
マジーナ王国から派遣されていた兵士たちが、この熱狂を目にしていた。
「……信じられん。敵の挑戦を、笑いながら受け入れるとは」
「だが……胸が熱くなるのも事実だ」
兵士たちは真剣な顔で頷き合った。
「陛下に進言しよう。我らマジーナ王国も参戦の意を示そうと。彼らに引けを取っていては王国の名が折れる同じフィールドに立つべきだ」
「そうだ。これは遊戯などではない。我らの誇りを示す場でもある」
その声はやがて、王都へと届けられることになる。
***
キャンパスの夜。
矢田がグラウンドでラグビーボールを思い切り蹴り上げる。
「魔王軍だろうがなんだろうが、スポーツで負ける気しねぇ!」
神宮寺が横で腕を組んだ。
「よし、練習だ。あいつらに“帝体大流”を見せつけてやる」
「練習って、まだ競技決まってないけどな」
黒崎が冷静にツッコみを入れる。
応援団の太鼓が鳴り響き、チア部の声援が夜空を揺らした。
篝火に照らされた帝体大の面々――学生も教授も、国民も。
その顔には、不安よりも笑顔があった。
七日後の決戦を前に、帝体大の熱狂はますます高まっていった。




