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多賀城集結

おじいさんのありがた~い おはなし。

 クマラは、京の情報を前鬼からの連絡で受けた。奥州から飛来した数千体の怪異は、比叡山-石清水八幡宮の京防衛結界と興福寺をはじめとする南都七大寺で作り上げた結界に阻まれ、天狗たちが奮戦したが、最後は静円と、静円に最後の力を与えた小式部内侍によって全て浄化されたという。十兵衛、能信はその知らせを聞いて思わず手を合わせた。


「それで、蝦夷はどうなったんだ?」

「藤原行成に憑依して、位牌と呪符を書かせたらしい。」

「やはり狙ってきたか。」

「しかし、行成殿が前から仕込んでいた誤字で、効き目を半減させたらしい。」

「誤字?」

「それで、怪異たちは転移できず、引き寄せられるように飛んでいくしかなかったようだ。」

「蝦夷は退治できたのか?」

「保昌殿が憑依された行成殿を追い詰めた時に、静円殿の光を見て慌てて転移していったらしい。」

「ということは、転移先は、奥州か下総相馬ってことか。」

「相馬は頼義殿が破壊していると思いますよ。」

「行成殿が書いた位牌と、呪符は処理したってことだから、京には戻れないな。」


「しかし、これで寺社はでかい顔するんだろうな。」

 能信は「刀伊の来寇」の後の寺社の過大な要求を思い出して不快な表情をした。

「いや、そのようなことは多分起こりませんよ。」

「あっ、明懐さん、今までどこに?」

 明懐は清原氏の居城に入らず、一人で周辺の寺や山野を歩いていた。

「奈良では、今回の件で法力を持たない高僧が淘汰されるみたいです。多分、比叡山や石清水でも同じようなことが起こるでしょうね。」

「そうか、修行を怠って、蓄財に励んでいた破戒僧は排除されるってわけか。」

「で、明懐さん。今まで何を?」

「いや、ここの寺で連絡が取れるのでな。それに阿弖流為殿の居場所も用意する必要があるしな。」 

「阿弖流為殿の居場所?」

「本当は奥州がいいのだが、とりあえずここで清原の子たちを守って、頼義殿たちを待ってもらいましょう。」

<オレモ イザワイク。カイイ タオス>

「いえ、阿弖流為殿が取り込まれたら、今までの苦労が水の泡になってしまいます。」

「明懐殿、あなた霊と話せるのか?」

「一緒にいるうちに聞こえてくるようになりました。この旅で私の法力が上がっているようなんです。遠江では不動明王呪が使えましたし、自分でも驚いています。」

「旅は修行なのかもな。」

 十兵衛もこの長い時空の旅で自身が変わって来たのかもしれないと思った。


「とりあえず、多賀に戻れって。」

「誰が?」

「ねーちゃん。」

 クマラはヴィーナスとも通信が取れるようだ。


 その翌日、一行は多賀城まで戻ることになった。横手の寺では阿弖流為と母禮の菩提を弔ってもらい、二人の石碑を立てた。阿弖流為たちはここで清原武則と共に源氏を救うため、故郷に戻る日まで、この地の蝦夷の霊たちと人々を助けることとなった。

 クマラの携帯扇風機型転送器を使って、能信、十兵衛、明懐、鬼一が、行きと同じように尺取り虫移動法で、多賀城についたのは翌日の朝であった。


 多賀城では源頼義が待っていた。

「頼義殿、お疲れ様。」

「いやぁ、ここまで武者たちがついてきたがって、断るのが大変だったよ。」

「安倍氏と全面戦争は避けたいからな。」

 ここで、頼義が武者たちを率いてやってきたら、前九年の戦いが30年以上も前倒しになってしまう。   さすがにそのような事態は避けなければならなかった。

 房総三国は無事平定が終わり、本領安堵された地元の武士たちは役に立ちたくてたまらないらしい。将軍頼信は来るべき日のために武を磨き、軍略を鍛え、そして土地を豊かにするようにと、関東一円の武士団の頭領たちに命じた。


「ほとんどの怪異が京に行ってしまったから、胆沢まではあまり問題がないのか。」

 京での出来事を知らされた頼義は、小式部の入滅に言葉を詰まらせた。覚悟はしていたが、もう一度会えることを期待していたのであった。しかし、小式部が人の身では納まりきれなかった強大な力を解放したのだと、掌の八幡様のお守りは告げていた。


「しかし、京で浄化された怪異たちはどうなったのだ。戻ってくるんではないか?

 怪異と戦うすべを持たない能信は、自分が足手まといになるのではないかと恐れていた。


「それはないわ。待たせたわね。」

「ねーちゃん!」

「ヴィーナスさん来てくれたのか。」

「蝦夷の霊は浄化されて、異界の霊は伏見稲荷の『おかえりなさい』で帰って行ったわ。」

「あれが役に立ったのか。あれ結構大変だったんだ。」

 奇しくも、京にしかない「おかえりなさい」が効果的に使われたようだった。十兵衛は、こちらに来る前に設置が終わっていて良かったと思った。実はあまり信じていなかったのだ。


「あ、そろそろ来るわよ。」

 東の空から黒い大きな鳥と白い大きな鳥がこちらに向かって飛んできていた。


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

物事は順調に行っているときが一番危険だったりするぞ。

いよいよ最終決戦か。

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