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出羽 清原氏 

おじいさんのありがた~い おはなし。

 そのころ、十兵衛一行は。横手の大鳥井山にある清原光方の居城にいた。

「権大納言様が、こんなところまでどのようなご用件ですかな。」

 対面した光方は、突然の京の高官、能信の訪問に戸惑いを隠せなかった。

「いえ、私は今、出仕を自粛しているところで、今回はなんというか。」 

「面倒だな。鬼一、ちょっと力を貸せ。」

 クマラは鬼一の肩に乗ると、部屋内に異空間を出現させた。隔離された空間の中には、能信、十兵衛と光方の他に、二人の見知らぬ蝦夷の男と、阿弖流為、母禮、田村麻呂が実体化していた。

「これは、え? お父様、お爺様。」

 二人の蝦夷は、阿弖流為と母禮と抱き合って泣いていた。それを田村麻呂が黙ってみていた。

「ま、そういうことだ」 

 クマラが鬼一の肩から降りると異空間は消失した。

「父や祖父と抱き合っていたのは誰ですか。」

「あれは阿弖流為と母禮、立って見ていたのは坂上田村麻呂です。」

「あ、あれが、阿弖流為様だったのですね。」

「あの親子とは親しかったようだな。」

「あなたは何者ですか?」

「俺は鞍馬山のクマラだ。」 

「有名な鞍馬天狗ですね。クラマ様ありがとうございます。」

「だから、鞍馬は地名、俺はクマラ!」

 能信は、阿弖流為を陸奥に帰しに来たということと、もう一点、都で起こった事件について話した。

「なるほど、阿弖流為様の霊を悪用しようとしたのですか。無事戻れて良かったですね。」

「だが、胆沢のある陸奥六郡では大武丸の魂を確保しているようなんです。」

「大武丸?昔話で聞いたことがあります。確か爺様たちが田村麻呂様と一緒に退治したとか。」

 そこで十兵衛が、鬼や天狗は月や金星の世界から移住してきたもので、死んでも地球の輪廻の輪に入ることができず、彷徨うことになるらしいということと、それが恨みを持った人の悪霊と結びついて怪異になり、災厄をもたらすこと、特に阿弖流為など強力な霊と、酒呑童子や大武丸などの強力な異世界の霊と結びつくと、とてつもない事態になるということを話した。。

「そこで、二つほど頼みがあるのですが……。」

 能信は、阿弖流為の霊を廟を建てて祀ってほしいことと、阿弖流為は八幡様との約束でこれから現れる源氏の勇者を守護することになっている。この地方で源氏が危機に陥ることがあれば力を貸してほしいということを語った。

「阿弖流為様はわかります。八幡様も田村麻呂様が祀ったものをわれわれも信仰しています。しかし、源氏というのは?」

 十兵衛は未来を語り過ぎないように慎重に話した。

「光方殿、私は六百年後の未来から、この時代に参りました。」

「まさか、しかし確かに京の人とも恰好が違いますね。」

「では、そうですね。あなたには二人の優秀な息子さんがいます。一人は政治に優れた光頼殿、もう一人は武芸に優れた武則殿。」

「それは調べれば、わかるでしょう。」

「そして、隣の安倍氏との戦いで、光頼殿は出羽を、武則殿は陸奥で将軍として活躍することになります。」

「まだ、二人とも十に満たないのに、そうなるのですか。」

「あくまでも、歴史が正しく流れたらです。」

「正しく流れるとは?」

「今のこの時代に歴史を改変するような事件が多発していて、未来が目まぐるしく変わっているのです。ただ一つ言えるのは、清原武則殿が源氏を助けないと、日本の歴史が変わってしまいます。」

「武則はまだ八歳ですぞ。」

「あくまでも未来の話です。この源氏の総大将の息子が日本の未来に関わってきます。そして、この時安倍氏を滅ぼさないと、日本が他国に占領される未来がやってきます。」

「この国が滅ぼされるのか?」

「国が滅びたり、九州が占領されたりと結果は様々ですが、その原因は安倍氏が力を持ち過ぎたのが原因です。」

「たしかに、昔は安倍氏とは同じ俘囚として、上手くやっていたのだが、最近はわが出羽の近辺を荒らしまわったりしている。怪異のうわさも多いし、それはありうる話だな。」

「私は、必要以上に歴史に干渉して、自然に起こる変化を妨げる気はありません。ですからこの話は光方殿の心の中に治めていてほしいのですが、奥州の覇者となったあなたの子孫が源氏の武者を大切にすることで歴史が動きます。それほどにあなたの一族は歴史上重大な役割を果たすことになります。それは、ここにいるクマラ、鬼一判眼、そして阿弖流為の霊たちと一緒に作っていく未来になります。」

「それで、私は何をすればいいのですか。」

「気たるべき将来に向けて二人のお子さんをしっかりとお育てになること、それから蝦夷の民を心からあなた方に従わせ。あなたと阿弖流為の下に守ることです。」

「今の安倍氏についてはどうするのだ。」

「今はまだ争ってはいけません。ただ歴史を変更する要素のある悪霊と怪異については我々が解決していこうと思います。」

「それでは、あなた方だけで安倍氏と戦うのか。」

「いえ、怪異と悪霊の排除が最優先です。安倍氏が反乱するのは少なくともまだ三十年ほど先の話です。」

「ということは、その時に私がいない可能性もありますな。」

「ええ、ですから、子孫には蝦夷の民と源氏を守れと」

「それがわが家の発展、日本の未来につながるということですな。」


 その夜、大鳥井山の城にいる十兵衛たちに京の怪異の襲来と小式部内侍の死の知らせが届いた。


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

俘囚には謎が多いんだ。

俘囚とは、蝦夷の民から朝廷に従うようになった者たちで、安倍氏や清原氏は俘囚長が始まりである。

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