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おじいさんのありがた~い おはなし。

 辺りが暗くなるころ、怪異たちは京の鬼門に相当する北東の方角から次々と飛来し始めた。最初は先行する数体が京に侵入したが、鞍馬山から飛び立った天狗たちに迎撃された。しかし、数十体単位で飛来し始めると、鞍馬山の天狗たちは後退し。保昌邸の手前の上空の守備についた。代わりに吉野方面から到着した天狗たちが迎撃に向かった。

 それでも途切れることなく次々と飛来する怪異たちに、吉野の天狗たちも保昌邸近辺の守備に専念し始めた。

 遂に天狗たちの守りを突破した怪異が屋敷に接近はじめたが、屋敷の結界に阻まれていた。しかし、次第にいつまで持つかわからないほどの数になっていた


 そのときであった。

 黒い大きな天狗と白い大きな天狗が、屋敷の周囲の怪異たちを一掃すると、苦戦する天狗たちを救援に向かった。

 屋敷の上空で、派手な空中戦が繰り広げられている中、静円が保昌邸の庭に下り立った。

「静!!!!来てくれたのね。」

「ああ、真、母さんは?」

「母さんは無事よ。でもそろそろ産まれるみたい。」

 小式部は怪異が襲来し始めたころから陣痛が始まっていた。

「静、これ、どうなるの?」

「うん。もうそろそろだと思うよ。」


 既に京の上空には数千体の怪異が飛来していたが。地上の御所、法成寺など、地上の重要な箇所にはまだ侵入を許していなかった。しかし、既に鴨川の付近では地上に下り立った怪異たちも出始めた、京の町のあちらこちらから火の手が上がり始めるのも時間の問題と思われた、その時であった。


 京の鬼門を守護する比叡山が明るい光を放ち始めた。北東から飛来する怪異たちから次々と脱落者があらわれる。院阮座主が率いる高僧たちが一斉に護法を唱え始めたのであった。そして、それに呼応するように京の裏鬼門の方角にある石清水八幡宮からも清らかな光が、そして、その光は比叡山と石清水を一直線に結んだ。そして南の南都、興福寺をはじめとする南都七大寺からも、その光が加わると、三つの光は京を包み込んだ。そして京内の大小さまざまに寺社からも、本当の法力、神力を持つ高僧、神官たちがその持てる力を発揮しはじめたのであった。 

そして、三つの光が重なり合う位置にある保昌邸では、静円が真言を唱えていた。

 そしてその周囲には、六柱の明王が静円を守護していた。


 京に侵入した怪異たちは霊力の弱いものから脱落していき、後続は比叡山に阻まれていた。しかし、まだ千体近くは動きを鈍らせながらも健在で、この京を覆う大結界の中心にいる静円めがけて突入しては、明王に消し飛ばされていた。


 行成邸に向かった保昌は、玄関に使者として送ったはずの使用人が倒れているのを発見した。そして玄関を入ったところに見覚えのある貴族の男が倒れていた。保昌が抱き起こすと男は目を覚ました。

「あなたは、保昌殿。それでは保昌殿も鎌倉へ、いらっしゃったのですか。」

「公成殿、しっかりしてください。ここは京の町の中。行成殿の屋敷ですぞ。」

「え?あのとき偽明懐殿があらわれて……。覚えていないなあ。」

「なるほど、あなたを使ってここまで来たのですね。」

「私を使って……。ああ、思い出しました。何だか夢を見ているようでしたが下総で、」

「相馬の城跡に行ったのだろう。」

「ええ、確かそんなところでした。」

「わかりました。公成殿は、近くの寺社に避難してください。」

「どうしたのですか?」

「京が怪異に襲われています。」


 保昌はここに来るまでに数体の怪異に遭遇していた。その全てを神通剣で切り落としたが、その数は増えていた。空を見ると顔見知りの天狗たちも戦っていた。

「怪異に出会ったらどうするのですか。」

「祈りなさい。」

「いや無理ですよ。」

「天狗が助けてくれるでしょう。」

「天狗?そんなものいるんですか。」

 保昌は黙って玄関から見える空を指さした。公成は再び気絶した。


 保昌は室内に入ると、行成の居室を探した。しかし、居室には行成の姿はなく、何枚もの文字を書いた紙が散乱していた。

<おい、聞こえるか?>

 刀に手を置いた保昌は、霊の声が聞こえた気がした。

「どなたかいらっしゃるのですか?」

<わしじゃ、道風じゃ。>

「ああ行成殿のところによくいらっしゃっていると聞いています。行成殿はどこに?」

<ああ、悪霊たちにさらわれたのじゃ。>

「やはりそうですか。どこへ行ったか分かりますか。」

<多分、広いところ、ここからだと三条か四条の河原だと思うがのう。>

「道風殿は事情をご存じですか?」

<ああ、こんなこともあろうかと、行成と決めておったことがあるんじゃ。>

「位牌を使って霊が転移できることをご存じでしたか。」

<でな、ここで位牌を書かせようとしたのじゃよ。>

「それが狙いでしょうね。」

<それで、わざと間違えさせたのじゃ。>

「間違え?」

<「蝦夷」の「コ」のところを「ロ」にしてな、右にくっつけさせたんじゃ。>

「それってどうなるのですか?」

<当然、嘘字じゃからのう。位牌の効果は半減じゃ。>

「それで、怪異たちは転移できずに近づいてきているんですね。」

 行成は自分が利用されるとすればと、万が一に備えてそのような準備をしていたのであった。


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

誤字もたまには役に立つものじゃ。

さすが三蹟コンビですね。

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