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洛中危機

おじいさんのありがた~い おはなし。

 多賀城を出発した十兵衛一行は、出羽に入る辺りで能信たちと合流し、最上川を下っていた。道中、多くの蝦夷の霊たちが阿弖流為たちに会いに来ては、昔を懐かしんでいた。

 そして、みな阿弖流為たちのために力を貸してくれるという。大きく最上川が西に曲がる新庄の地から、さらに北上を続けていると、胆沢付近を偵察してきた蝦夷の霊が、胆沢付近から怪異が次々と姿を消していると報告してきた。

「これはどういうことなんだ。」

「もしかすると転移しているのかもしれないな。」

 十兵衛は蘇我蝦夷だけでなく、遠江にあった位牌のようなものに「蝦夷」という文字があれば、「蝦夷」と呼ばれる者たちも転移できるのではないかという明懐の考えが正しいのではと思った。

「なあ、明懐さん。位牌って誰でも書けるものなのか。」

「それは字が書ければ書けますが、魂がこもるかは書く人の才ですね。」

「字がうまいだけではないということだな。」

「法力がない普通の人でも、三筆級の腕があれば確実ですね。」

「当代でいえば、三蹟の行成殿でしょうな。」

 能信は、そのように言った後、ふっと思い当たった。

「行成殿はかなり具合が悪いということでしたな。心配ですね。」

「もしかしたら、行成殿が襲われたのではないでしょうか。」

面識のない十兵衛でも三蹟の名は聞いたことがあったし、大江山二十四像にも含まれている人物であった。急いで、クマラが天狗ネットワークを使って京の保昌に警戒するように伝えた後、一行はまずは清原光方の居城のある横手の大鳥井山へ急ぐことにした。



 保昌が各地に送った使者が次々と帰ってきた。頼通は内裏に集められる神職を京中から集め、公任は定頼とともに教通の子たちを守って魔除けを施した屋敷に籠り、俊賢、斉信は道長のいる法成寺に向かうということであった。紫式部は大弐三位とともに自らを守護する霊たちと庵に籠るとのことであった。しかし、病気療養中の藤原行成の屋敷に向かった使者がいつまでも帰ってこない。


 日が暮れ始めたころ、保昌の屋敷に鞍馬山から長老天狗がやってきた。

「出羽に向かったクマラからの伝言を持ってきました。」

「今は出羽にいるのか。彼らがいてくれれば……。」

「胆沢近辺にいた怪異が次々と消えているそうです。京にある転移の位牌を破壊して、行成殿を早めに保護した方がいいとのことです。」

「京の転移位牌は結界で封印したって言っていたよな。」

 天狗たちにとっては仕えるのは真子と静円であって、あくまで保昌はその保護者であった。もうこの件については真子が司令塔であった。

「こっちにあった位牌の封印は無事みたい。」

「行成殿というとまだ使者が帰ってこないが……。」


 ちょうどその時、保昌邸の庭木の上からカラスの鳴き声がする。

 真子が右手をすーっと上げると、一羽の頭の禿げたカラスがその手にとまった。

「道満さん、内裏で何か起こったの?」

<いや、内裏は今のところ問題はない。蘇我蝦夷は複数の怪異を連れて、行成邸に向かった。>

「なぜ行成さんなの?」

<転移の位牌が封印されたので、代わりになるものを造らせようとしている。>

「行成殿に作れるのか?」

<今の行成の筆は神域に近づいている。行成の筆による位牌ならかなりの力を持つはずだ。>

「既に行成殿は操られている可能性がありますね。」

「長老、なんで?」

「今、安倍氏の本拠がある胆沢近辺から怪異が消えているって言いましたよね。」

「京近辺の怪異は一掃したのに……。」

 保昌は今握りしめている「神通剣」を見つめた。十兵衛が複製に持って行って以来、この剣に触れると、霊たちの話を聞くことができるようになっていた。そして怪異を切ることができる剣はいまこの一本しか京にはない。頼信、頼義親子は下総に、十兵衛とクマラ、鬼一は出羽に六本の怪異を切れる剣は分散していた。


「え、それは本当か? で、今はどのあたりだ。うん。」

 長老天狗が「天狗の糸電話」で鞍馬山に残る天狗と話している。

「真子様、保昌様。大変です数千を超える怪異が京に向かって飛んできています。」

「転移じゃないのか。」

<位牌に引き寄せられているのだ。>

「あの地域にいた鬼たちは、蝦夷遠征の前後で、鬼退治で根絶やしにされました。」

「それに恨みを持つ、蝦夷の霊が取り込まれたということか。」

「その蝦夷が取り込まれた怪異を引き寄せている存在が京にいますね。」



「じいじ、行成さんを助けなきゃ。で、長老さんは天狗さんたちを集めて」

「そうですね。結界の厳重な京の方が迎撃にはいいかもしれませんが、京全ては守り切れませんよ。」

「まずは、ここを守って、ママが奪われたら全てが終わるって、晴明さんが言ってるわ。」

 保昌は屋敷を教通と天狗たちに任せて、行成救出に向かうことになった。道満の話だと蘇我蝦夷に憑依された行成と怪異が複数。


「じいじ、あれ忘れずに持って行ってね。」

 保昌は源博雅の遺品「葉二」を「神通剣」と共に腰に差して、行成邸に向かった。


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

いよいよクライマックスじゃ。

京に危機が迫る。

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