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藤原行成

おじいさんのありがた~い おはなし。

 小式部の出産が近づくと、和泉式部と真子は上東門院への出仕を休ませてもらい、保昌邸の離れで、小式部の面倒を見ていた。この時代の女性の出産は、死産率も産婦死亡率も高く一大事であった。また、出産の血の穢れを忌み、中宮や女御であっても宮中では出産せず、実家で出産が行われていた。


「ママ、そんなわざわざ休みを取らなくても平気よ。もう4回目だし」

「そうね、最初の時は双子でもうだめかと思ったわ。」

「あのときは、みんなが助けてくれたから、静と真と私、みんな無事だったわ。」

「ね。私生まれた時ってどうだったの。」

「そうね。最初に静がすんなり生まれたの、本当に生まれてすみませんってな様子で、大人しかったのよ。ところが、次に出てきた真は泣くわ、暴れるわで、超元気だったわ。」

「うん。あれは教通さんと小式部にそれぞれ似ているって、みんなで笑ったわね。」


 そっと戸を叩く音がするので開けるとそこには、教通と保昌が心配そうに立っていた。

「あ、まだ出産は始まらないから、入ってもいいわよ。」

 二人は心配そうに離れの中に入ってきた。

「頼義殿たちが下総に入ったそうだ。あちらもそろそろ落ち着きそうだって」

「十兵衛さんは?」

「そろそろ胆沢について、能信兄と合流するころじゃないかな。」

「頼義殿が気になることをいってきてな。」

 

 突然、真子が話に入ってきた。

「悪霊のこと?残ったのは蘇我蝦夷さんでしょ。」

「それをどうして?」

「道満さんが晴明さんに報告したって、でも今は都にいるみたいだって」

「やはりそうなのか。いや明懐が言うには、名前つながりで蝦夷に行けるなら、どこからだって行けるんじゃないかって、他にも遠江のような場所があるんじゃないかって、で、調べたら、下総に入ってからいなくなった貴族いたそうなんだ。」 


 保昌は遠江から戻って、京の能信の従者たちの隠れ家に向かった。廃寺で捕えた盗賊団が、この辺りから転移したという、遠江で見た位牌が転移できる仕掛けであれば、ここにもあるはずだった。しかし、見つかった怪しげな祠には何もなかった。


「保昌殿、下総というと滝夜叉姫のいた相馬の城ですね。たぶん生きていたころに滝夜叉が位牌を作ったのでしょう。京はどこにあるのだろう。」

「京の能信殿の従者たちのアジトは探ったのですが、今回遠江に行くまでは位牌ということに気づかなかったんです。それで、改めて探しに行ったら、既に持ち出されたようでした。」

 偽明懐に憑依していた蘇我蝦夷は、鎌倉に来ていた貴族たちの一人に憑依して、下総まで、頼信、頼義に同行して、そこから相馬に向かった。そこから京に転移したということらしい。


「その京の位牌は道満さんが持ち出したんだって、ただ蘇我蝦夷が京に転移した後だったんだって」

「それでは位牌は確保しているんだな。」

「位牌は結界で封じているらしいんけど、かなり通過させたみたい。」

「かなりって、蘇我蝦夷だけではないのか?」

「位牌に他の名も書かれているのか……蝦夷。まさか?」

「うん、なにか恐ろしそうな怪異を引き連れているって言ってたわ。」

「そんなものまだ残っていたのか。」

「保昌殿、多分それは、殺された恨みを持った蝦夷の霊が……。」

「あの地方の異界のものの魂と結びついたんですかね。」

「蝦夷討伐の中で、鬼退治の話も結構ありましたよね。」

「では、ここを襲撃してくるとすれば、蘇我蝦夷一体ではないということですね。」

「うむ。しっかり備えないと行けないな。」

「じいじ、もう悪霊退治隊(ゴーストバスターズ)のみんなが見張っているわ。」

「悪霊退治隊?」

「頼光さんと四天王のみんなだよ。晴明さんも息子さんたちに結界を張らせているわよ。」

「しかし、内裏の守備は大丈夫なのか?」

「内裏だけじゃないな。道長殿、四納言の皆さん、紫さん……。」

「京のどこを襲撃しても一番の狙いはここですって。」

「真、それはだれが?」

「晴明さんよ。」

「陽動はありうるということか。」

「大江山の時もそうでしたね。」


 保昌と教通も、京の様子も気になっていたが、まず小式部を優先したかった。出産の機会が一番危険だという。前回までは晴明殿や頼義殿もいた。今や頼りになる人の数は守るべき人の数よりはるかに少なくなっていた。保昌は藤原公任邸に使いを出して、藤原定頼に警戒するように伝えた。定頼はここで経を誦み続けることを約束した。更に源俊賢、藤原斉信には結界の厳重な法成寺か、御所に避難するように、頼通、紫式部、行成……。主だった者たちに次々と使者を送った。真子も上東門院に使者を送った。宮中の女性たちは道満が結界を用意するという。


 使者が訪れた時、藤原行成は病床についていた。この数か月体調がすぐれない日々が続いていて早めに床に就いていた。そして夢の中で、師匠である小野道風と語り合い、そして目を覚ますと、書を書くという毎日が続いていた。

<うむ。最近は書に魂が入っておるのう。>

<いえまだまだです。命のあるうちに道風様の域にたどり着きたいのです。>

<うむ。わしも自分の命が尽きるのがわかったころそんな気持ちになったわい。>

<もっと時間が欲しい。寝ている時間ももったいないと思うのです。>


<その時間、分けてもらうとしようじゃないか。>

<え?>

霊体の道風が異形のものに取り押さえられていた。 


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

常に最悪を想定して準備をすることが肝心じゃな。


怪異現る。

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