過剰戦力?
おじいさんのありがた~い おはなし。
「あっ、クマラじゃないか。ここはどこだ。」
「ここは遠江の街道のそばだ。」
「明懐殿、見覚えはありますか。」
「さて、街道に出てみないと……歩いていくのですか。」
すると急に目の前の空間がゆがむと
「ヒヒーン」
「ヒヒヒヒーン」
「ギャアヒーン」
一行が乗っていた馬が目の前に転送されてきた。
「姉ちゃん、サービスいいな。俺の分は?」
「あんたの分はないわよ。自分で飛びなさい。」
一行が街道に出ると、廃寺はもう少し西の方角にあるということが分かった。
「廃寺は普通の人間の目にも見えるのか?」
「そうね。多分あなた以外は見ることができると思うわ。」
「俺だけ?」
「もちろんクマラは見えるし、その徳の高そうなお坊さんも見えそうだし、頼義さんは」
「八幡様か。」
「そうね。それよりも戦うことになったときね。」
「悪霊を切れる刀は俺と頼義殿が持ってる。クマラも持っているはずだ。」
「あっ、あれのことか? あれ大切に部屋に飾ってあるぜ。」
「十兵衛殿、私はお守りに触れないと霊は見えないんだ。」
「私は護身の法は仕えますが、明王の法力はまだまだですな。」
誘拐されているであろう場所に向かいながら作戦をたてるにも、まずは相手の数もわからない。姿も見えないかもしれない。とりあえず明懐が経を唱えて霊の動きを止めたところを切り込むという作戦になったが、十兵衛は一番大事なことを思い出した。
「まて、一番の問題は、ここで直方殿の妻子を救うのは頼義じゃないといけないんだ。」
「なぜ、俺が?」
「それが歴史に関わるということですね。」
「明懐さん、一体どこまで知っているのですか。」
「この国が滅びるという話を知ったから、私は動いているのですよ。」
興福寺の情報網はどれだけ優秀なんだと、周囲が驚いていると、明懐が空の一点を指さした。
「おお、静円殿が来てくれましたね。」
西の方から黒い大きな鳥と白い鳥がこちらに向かって飛んでくる。近づいて来ると上に人が乗っている。クマラは天狗の遠眼鏡を出して確かめている。
「おお、吉野の大天狗か。後ろは……後鬼。」
「復活して、静くんに従っているそうだよ。な、ヴィーナスさん……って、どこ行った?」
「ヴィーナスさんならあそこ」
明懐が指さすと、ヴィーナスは静のところに文字通り飛んで行っていた。
「し、ず、か く~ん」
「ああ、ヴィーナスさん。私は静円ですよ。」
「いいの、私にとっては、永遠に静くんなの。」
間もなく、前鬼後鬼に乗った一行が降りてきた。
「廃寺の場所はわかりましたか。」
十兵衛がたずねると、教通がうなずいた。
「晴明殿の護符が一枚残っていたので、見つけることができました。向こうに見える林の先ですね。」
「それは、私が記憶しているものと同じようですね。」
教通はここにいるはずもない僧の発言に驚いた。
「あなたは興福寺の明懐殿ではありませんか。なぜこんなところに」
「ああ教通殿。私は鎌倉に行く途中でこの寺に泊まったのですよ。」
「あなたも悪霊を見たのですか?」
「いや、京から来たという二人連れの男たちに会いましてね。」
「何かされたんですか?」
「いえ、一緒にういろうを食べました。」
「ういろう……。まさか十年近く前だ…。味はどうでしたか?」
「真空包装いうやつで、おいしく食べましたよ。」
「たぶん、その男たち……。その男たちははどこにいます?」
「房州へ向かうというので、一緒に東海道を下りましたが、その男たちと分かれる前に夜盗に襲われました。」
「夜盗に?」
「それで私は身ぐるみはがされて、命からがら逃げ出したところを藤原公成殿に助けられ、鎌倉に行くと、私の偽物がいました。」
「それで、その京から来たという二人連れは?」
「夜盗に襲われたときにいなくなりました。多分殺されたのでは……。」
「いや、その二人が怪しいな。それはいつ頃の話ですか。」
「もう、半年は立つかな。直方殿が関東に向かった後ですから。」
「中にいるのは、多分五、六人の盗賊と、直方殿のお子さん三人と身重の奥方、そして使用人が一人ですな。」
保昌が京で調べた情報と、教通、明懐が記憶していた中の間取りを元に戦略を立てた。
「普通に戦うのなら、俺、頼義殿、クマラ、保昌殿、前鬼、後鬼、ヴィーナス殿で、その盗賊だけなら十分すぎる過剰戦力ですよね。」
「しかし、人質の安全を考えたら、慎重にやるべきだな。」
「盗賊の一人に悪霊が憑いていると思いますよ。もう一柱は鎌倉にいるはずですから。」
「姿が見えないものとどう戦うんだ?」
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
攻めるときは、必ず相手よりも多い人数でやるんじゃぞ。
ちょっと戦力過剰かもw




