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興福寺

おじいさんのありがた~い おはなし。

「なるほど、藤原氏に恨みを持つ悪霊ですか。しかし、その蘇我氏が、鎌足公が起源で、不比等様が創建した我が寺の僧だと、なぜ偽るのでしょうか。」

「興福寺の名で悪評を立てれば、それを摂関家が許したとすれば、どうですか。」

「では、初めから私は狙われていたのでしょうか」

「霊は呼ばれない限り、誰かに取り憑いた状態でしか移動できません。ここに来るまでに同行者はいませんでしたか。」

「遠江の廃寺に泊まった時に京から来たという二人連れの男たちに会いましてね。房州まで行くというので同行しました。」

「遠江の廃寺?」

「はい。いっしょに『ういろう』を食べましたよ。」


 頼義は、以前教通が悪霊たちに遭遇したという廃寺のことを思い出した。もしやその廃寺に悪霊たちは自由に移動できるのではないだろうか。

「その男たちに憑いていたのでしょうね。で、その男たちはどこに?」

「夜盗に襲われたときに見失いました。多分、殺されたのではないでしょうか。」

「では、その偽僧は何者なんだ。」

「頼義殿、直方殿はその偽僧の言うがままに従っているようなのです。」

「公成殿、それが直方殿が軍を動かさない原因だというのか?」

「脅迫されているのではないかと思います。」

「何か、弱みを握られているのか。」

「私が調べたところ、直方殿には三人の子と身重の妻がいます。」

「この鎌倉にいるのか。」

「いえ、ここでは見かけません。多分京にいると思うのですが……。」

「とりあえず、父が直方殿の帰還命令書を持っている。明日それを渡す予定だ。」

 頼義は明懐を頼信軍で保護することにして、兵たちの宿舎に送っていった。


 そして、その翌朝。

「おっ、いたいた。俺の言ったとおりだろ」

「いや、だから鎌倉に行くのはわかってんだから、直行すれば良かったろう。」

 何だか宿舎の前が騒がしい。頼義が外に出ると見知った顔が二つ。

「十兵衛殿、クマラ。よく来てくれたな。」

「ああ、朝廷工作は手間取ったが、あっという間に三国従えたようだな。」

「まあ、能信殿のお手紙作戦のおかげさ。」

「能信殿?」

「ああ、あれは名文だな。あの手紙でみんな恭順したよ。」

「いや、それも頼信殿、頼義殿の武威があってのことだろ。」

「まあ、あそこで甲斐にとどまったのが功を奏したよ。それも能信殿の提案だがな。」

「それで、こちらに悪霊はいるのか?」

「多分な。」

「取り憑いているのは平直方なのか?」

「いや、間違いなく、偽明懐だな。」

「偽明懐?」

「ああ、そこにいる僧の偽物が直方殿の傍にいるのだ。」

「だったら、本物連れて乗り込めばいいじゃないか。」

「そうはいかないみたいなんだ。公成殿が言うには脅迫されているようなんだ。」

「脅迫?」

「おそらく人質を取られているらしい。そうだ、クマラ。」

「なんだよ。」

「京の直方殿の屋敷の様子がわかるか?」

「直方の屋敷?」

「直方殿の妻子をこの鎌倉で見ないようで、多分、京の屋敷にいるはずなんだが」

「わかった。小天狗たちに調べさせる。」

 クマラは鎌倉を囲む山の一つに飛んで行った。

「京に戻るんじゃないのか?」

「この辺りにも天狗はいるらしい。天狗の伝言駅伝網だな。」


直方の妻子が人質に取られているとすれば、無事に救出しないと、頼義との婚儀はない。せめて娘だけでも救出しなければ……。十兵衛はこれは大変なことになったと焦りを感じた。殺されてしまったら元も子もない。歴史が変動しているのはこれが原因だろう。


「屋敷にはいないって言ってるぜ」

「では、どこに?」

「あの、よろしいですか。」

 それまで事情が分からずに話を聞いていた明懐が、遠慮がちに話し出した。

「あの遠江の廃寺が怪しいのではありませんか。」 

「なぜですか?」

「霊は誰かに取り憑かなければ移動できないとおっしゃいましたよね。ではなぜ、あそこにいたのでしょうか。あの廃寺まで京から移動する人に取り憑いたとして、取り憑かれた人はその先まで行きますよね。」

「多分、そこは教通殿が迷い込んだという廃寺と同じだと考えると納得いくな。」

「あそこにはあの悪霊たちが移動できる何かがあるんだ。」

「教通殿にも正確な場所を確認しましょう。」

「ちょっと待った。明懐殿がなぜ事情がわかるのですか?」

「われわれも愚かではありません。わが興福寺が摂関家に関わるこの一連の怪異事件について何も知らないと思ったのですか。」  

都で起こる怪異事件について、確かに寺社が何も知らないということはないだろう。全ての事件は寺社に絡むことが多かったのだ。

「今回は、この地が一連の事件に関係があると思い、私から鎌倉に行くことを志願しました。まだ我が寺にも利権や武力と言ったものを主張しているものがいますが、静円殿の比叡山の一件も把握しているのですよ。」


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

隠し事はけっこうバレバレだったりするんだよ。

ここに来て新キャラ登場

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