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叡山革命

おじいさんのありがた~い おはなし。

 山麓一体が白い清澄な光に包まれ、比叡山の各院にいた僧たちも何が起こったのかと集まり始めていた。

「静? 静くんか?」

 集まった僧の中から長禅(道長三男顕信)が声を掛けた。静はまっすぐ長禅を見て頷いた。

「静」という名前に反応した僧は多かった。修行に真剣に励む僧たちには、その真偽が気になっていたのだ。

「あの子が大江山の神童。」

「噂は本当だったのか。」

「あの光を見たか。あれこそ本当の毫光(ごうこう)というものだ。」

僧たちは口々に感嘆の声を上げた。あの年でもう自分たちより遥かに先を言っているではないか。


「みなさん。そろそろいいでしょう。戻りなさい。」

 立派な身なりの老僧が杖をつきながら、数名の僧に支えられて現れた。

「私は天台座主(でんだいざず)院源です。久しぶりですね静殿」

「え、覚えていらっしゃるのですか。法事の際に後ろの方にいただけなのに」

「うむ。静殿のところに仏の光を感じてな。あの子は誰だと聞いておったのだ。」

「そうだったんですか。」

「まあ、その後は道長殿や公任殿の孫自慢でよく聞いてましたよ。大江山の件を聞いた時には、その名を聞いて驚かされました。それに最近は夢枕に伝教大師が現れましてな。」

「最澄様が?」

「おお、その様子、話したことがあるのかな。」

「はい。修行の最後に最澄様のところに行くようにと空海様が」

「高野山でも修行をしたのか?」

「はい、空海様が言うには如来様と、明王様の声を聞いたと教えてくれました。」

「真言を得たということか。」

院源は老境となり、天台座主をなった今になって最澄の声が聞こえるようになったというのに、この子供は本当に仏の生まれ変わりではなかろうかと思った。


 院源はこの比叡山をめぐる問題の対処に頭をかかえていた。元貴族上がりの僧たちは僧としての修行より、僧としての利権や、公から拝領した荘園か上がる利益を求め、経も読めぬ僧兵が仏を盾に暴力を振う。教通から聞いた後の歴史では、その武力で朝廷を威嚇し、興福寺と争い、国難に至っては何もせず、加持祈祷のみで多額な恩賞を要求し、武装を固め、遂に約五百年後には全山が焼かれてしまうとのことであった。鎮護国家の役割も果たせず灰となってしまう未来を考えると、教通から伝えられた、寺社の抱える荘園と僧兵を放棄する政策も納得できたが、これを今、そのままやると、たとえ座主といえども追放されてしまうであろう。


 ところが、静が荒くれ者の僧兵を民のために奉仕する、行基大僧正の時代のこの国の仏教の原点に戻るように変えてしまった。この変化は次第にいい変化をもたらすかもしれない。国や民のための仏教。本来あるべき仏の慈悲ある未来に……。


ーいいか。院源よ。この国と民を守るための比叡山だー

 夢枕に立った最澄の言葉が、院源の頭の中に響いていた。


「静殿、ここで修行を続けるなら、戒律を授けなければなりませんが、加冠もまだとのこと、しかし既にその法力は高位にある。これからは静円(じょうえん)と名乗り、山に坊をもつことを許そう。加冠後に改めて戒律と法位を授けましょう。」

「静円ですか。」

「円は丸のこと、そして完全な丸は完結しておる。人の輪、輪廻の輪。」

「ありがとうございます。」


 それは、静が修行に出てからちょうど百日目のことであった。

それからも、静は比叡山に建てられた小さな坊で、経を読み、時々現れる最澄に曼荼羅を学び、そして密教についても意見の違う空海と最澄の討論を聞き、時には自らの意見や感想を延べ、それから小角に誘われ山岳修行にも出かけていた。

 来るべき日のために日々修行に励むのであった。




「ってことは頼義と、平直方の娘が結婚しないと歴史が変わるってことかい。」

話は一か月程前に戻る、十兵衛は稲荷山のアジトに送られたメッセージを読んで、江戸時代に戻っていた。十兵衛は早速、将軍様と御老公、ど〇きつねたちと情報共有を行った。

「ああ、頼義と直方の娘との間の三兄弟に始まる家系が多すぎるんだ。」

「鎌倉幕府、室町幕府、足利氏、新田氏、今川氏、武田氏……か。徳川もか。だったら将軍様とか、御老公は消えたのか?」

「いや、わしらはおるぞ。」

「え?なぜだ。もしかして噂は……。」

「みなまで言うな。将軍は源氏じゃなければならんのじゃ。」

「でも、その源氏がないんでしょ?」

「そうだよね。」

「まあ、その娘と頼義を結婚させるように話をまとめればいいんだろ、簡単じゃないか。」

「いや、そうもいかんのじゃ。平忠常の乱の発生と終結が早すぎてな、十兵衛の行ける時代にはまだ娘は五歳なんだ。」

「え?五歳。」

「十兵衛の行ける時代の十五年後に義家は生まれるんじゃよ。」

「そんな先か。あいつ、もう三十半ばになりそうだから……。歳の差あり過ぎだな。」

「義家が生まれたのが頼義が五十になるころじゃ。」

「とりあえず、頼義とその娘さんを守るってことだな。」

「直方の身も大切じゃぞ。」


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

子供は自由にじゃな

歴史の修正は可能なのか。

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