木幡権僧正
おじいさんのありがた~い おはなし。
「平直方は鎌倉所領を持つ武士団の頭領で、藤原頼通に仕えている。それで、平忠常の乱で討伐を命じられたのね。」
マーキュリーがデータベースを調べている。しかし、源氏の血を引いている建前になっている金ぴか将軍様と御老公はこの辺りの歴史には詳しい。
「坂東武者はこの頃は将門以来の平氏に従っていたからのう。この直方の娘との婚姻で頼義は関東の基盤を得たとされておるな。河内源氏に将門以来の平家の血も持つのが八幡太郎義家じゃ。」
「源氏の伝説の英雄、源義家を始めとする三兄弟が誕生しなければ、足利も新田なく、三男の義光が誕生しなければ武田もない。それでは歴史も変わるな。」
「とりあえず十兵衛に連絡しちゃどうだい。」
金さんは転送器にむかった。
「金さんどうするの?」
「呼んでくるよ。」
「無理よ。あなたは時空の門を越せないわ。」
「彼女に頼んでみるさ。」
「プルトー頼むよ。」
「だめ、無理よ。」
「いいだろ、責任はとるよ。」
「ダメったらダメ。」
「ちょっとだけでいいから。」
「ちょっと……。」
「ああ、先っぽだけでも……。」
「あなたたち何やってんのよ。」
時空の門の前で、金さんがプルトーを口説いていると思った葛葉が、真っ赤な顔をしている。
「なるほど、向こうの私が、同期しない限り情報は共有できないけど、お手紙を届けることはできるわよ。向こうに行ったら、私が二人になるから弾かれるけど、アジトに手紙を置くことはできると思うわ。」
「どうするんだ?」
「転送器から机の上に飛ばすわ。」
「わかった。すぐ手紙を書くぜ。」
金さんは手短に書状を書くと葛葉に渡した。
「ちょっと待って、これも届けてほしいの。」
転送器に戻った金さんに、ムーンがマーキュリーを連れて声をかけたが、既に遅かった。
「これは何なんだい?」
「香炉よ。ただし、歴史が変わりそうになったら煙が出るの。」
「『ぶたさん』の応用です。」
「向こう側の人間にもわかるようにするってことかい。」
「そう。でも誰に持たせるかが問題なんだけど、とりあえず十兵衛さんが持ってればいいのかな。」
「それって、十兵衛はずっと帰ってこれねえぜ。」
「今回の件が解決するまでは、いてもらうしかないのかな。」
「それってどのくらいかわかるのかい?」
「ん~。」
「そうですね。誰か向こうの人に頼む必要がありますね。」
「じゃあ、小式部さんね。」
「小式部さんは……。あの時代なら頼通さんとか、教通さんが長く生きるから」
「あまり有名な人物はまずいんじゃねえか。」
「どうして?」
「時代を動かせる権力者だと、自分たちに都合のいいように変えられるんじゃねえか。」
「そうだよね。自分の子孫が不利になるようなことに力は貸さないよね。」
「誰かいませんかねぇ。」
「いるわよ。」
どこからか、いつものようにヴィーナスが現れた。
「誰よ。」
「木幡権僧正静円。静くんね。」
「小式部さんの子か。」
「あの子は並外れた法力をもってるわ。そして歴史上の有名人ではない。」
「うん。好都合な人物ではあるな。でも十兵衛がいる時間でいくつなんだい。」
「多分、十歳になるわ。」
「いくら優秀でも、まだ子供ですよね。」
マーキュリーがデータベースを検索している。
「確かに、人脈は道長の孫で、教通さんの子、法成寺住持で、後年は木幡に隠棲してる。」
「何だか、都合がよすぎちゃいねえかい。」
「どういうこと?」
「歴史が、それを正すために存在させたようじゃねえか。」
「多分、そうだわ。」
「ヴィーナス?」
「あの子、役小角から前鬼後鬼を託されて、空海とか超大物に守られてるのよ。その上、鞍馬山の天狗達とか、観音様まで力を貸しているわ。」
「まさに女神の子なんだな。」
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
「ちょっとだけは、ちょっとだけじゃないんだ」
気を付けような。
静円は実在の人物なのです。




