異母兄弟2
おじいさんのありがた~い おはなし。
「外夷ってこの間は刀伊を追い払ったぞ。また来るのか。」
「いえ、高麗と、宋を滅ぼした元が二回合わせて20万の兵を送って来ます。」
「その元とは、何なのだ。」
「何でも宋の北の長城を越えて侵入してきた蒙古と呼ばれる騎馬民族です。」
「騎馬民族が海を越えてくるのか?」
「いえ、主力は一回目は高麗軍、二回目は南宋と高麗軍を中心とするそうです。」
「高麗は最初から敵なのか?」
「朝貢して属国になったそうです。日本に攻め込むことを進言したのも高麗王だそうです。」
「新羅は敵国だったからな。しかし、海をわたってくる相手に上陸を許したのか?」
「本来の歴史では、10万を超える南宋軍は肥前の孤島に上陸できただけでした。」
「それが、占領されてしまうのか。」
「はい。背後から奥州政権、その上朝廷内からの裏切りがあったそうです。」
「つまり、奴らのとった行動が原因なのか。」
「気づいていたのですか?」
「いや、あの時は気づかなかった。ここで落ち着いて考えると腑に落ちた。」
「藤原家、摂関家に対する恨みを持った怨霊がいるのです。」
「それは異界の門事件の時に伝え聞いた。でもあまり信用していなかったんだ。」
「蘇我蝦夷、蘇我入鹿、伴善男、弓削道鏡の四人の怨霊のようです。」
「うちの従者は五人だったぞ。」
「ええ、一人には蘆屋道満が潜入していました。」
「なるほどな。あいつらと話すうちに、お前や兄に対する不満が大きくなってな。鬼と仲良くしていることや、権勢を極める父上の後継がお前たち兄弟だったりすることが許せなくなったのだ。」
「兄上、大江山の鬼たちはなにか悪いことをしましたか?」
「鬼は悪いものであろう。」
「それって、高麗や蒙古も同じように、この日本のことを考えてないでしょうか。鬼は自分たちと違うから悪ですか。だから攻め滅ぼしていいのですか。蝦夷の民も同じです。蝦夷だから滅ぼしていいのでしょうか。」
「うむ。お前の言っていることは、多分間違ってはいない。しかし、昔から鬼は……。」
「兄上、あの日、どれだけの人々が酒呑童寺に集まったと思いますか。」
「それは……。」
「あの日、兵ではない一般の若者や女性が、どのくらい酒呑童寺に集まったと思いますか。そして死にゆく酒呑童子を見送ったとお思いですか。それって人を惑わす悪なのですか。」
「ん……。」
「父は、人と鬼が仲良く踊る姿を見て、みんな仲良くとおっしゃいました。未来の国の消滅は、朝廷と武家と蝦夷を取り込んだ奥州の3つが争っている中で、それぞれに撃破されたそうです。中には攻めてくる元を利用して挟み撃ちにしたりしたそうです。」
「昔からある近攻遠交だな。蒙古に中華の頭脳が加わったのか。」
「きっと、悪霊たちも藤原氏を呪っているのであって、この国が滅びることを望んでいるとは私には思えないのです。」
「藤原の俺たちを滅ぼそうとした結果、国が亡びるということか。教通はどうしたらよいと考えているのだ。」
「これから、百年の間に武家が力を持つ世の中がやってきます。刀伊を撃退できたのも、今回の忠常軍を撃退できたのも武家の力です。これからは対立や争いに武家の力を使うことになるでしょう。そしてそれはいつの間にか利用しているつもりが利用されるようになる。」
「それが、武家が政権を持つということだな。」
「そうです。今回、平忠常に多くの関東の武士団が従いました。それだけ不満が関東にはあるのです。本来の歴史であれば、頼信の子孫たちが関東に幕府をおいて武家の頭領となります。彼らの子孫となら朝廷は上手く協調できるはずなのです。」
「そうであろうな。」
「しかし、今回の忠常の反乱に加担した者たちの土地や荘園はどこに行くと思いますか?」
「それは公地のものは公が接収するのが筋だな。」
「まだ、接収も始まらないうちにそのほとんどが最終的に摂関家と寺社のものとなりそうなのです。」
「父や頼通はそうやって利益を得ているのか。」
「いえ、父や頼通兄の名前を使って手に入れようとしている公家衆が多いのです。それに寺社は自領として取り込んでいます。」
「なぜ、寺社が?」
「刀伊の時もそうだったではありませんか。加持祈祷したから、わが神のお告げがあったからと多くの褒美を要求して来たではありませんか。そしてその土地で僧兵を増やしています。」
「つまり、今の荘園制が問題だといいたいのか?」
ここまで話をしてきて能信は、教通の思いが、自分が抱えている不満と近いということを感じていた。年下だと軽く見ていた教通、この男は賢くしたたかであった。
「兄上、これは内密でお願いします。私は時間をかけてこの制度を失くしていこうと考えています。武家の頭領に武家の管理を任せる。武家の頭領は将軍として朝廷に忠誠を誓う。そして武家は将軍に従う。そのためには実利です。名誉では飯は食えません。土地を与え、代わりに軽い税と武力、忠誠を提供させる。これから関東に源氏の基盤を作ってもらいます。」
「それは、今利権を持っている者たちが反発するぞ。」
「だから、少しずつ時間をかけるつもりです。私が聞いた本来の歴史の流れから外れないように、そして国中が仲良く力を合わせられるように」
「わかった、教通。それを俺に打ち明けるからには、俺の役割があるんだな。」
「はい。そうなんです。能信兄は既に摂関家に不満をもつ者たちが多く接触していると思います。そして、皇位の希望が無くなった三条帝の遺児たちとその支援者たちも兄に期待していると思います。」
「そうだな、妹も嫁いでいるしな。」
「能信兄にはその人たちの不満を吸収して、頼通兄の独走を止める働きをお願いしたいのです。そうやって私がその間に入って、少しずつ変えていきます。」
「公家や皇族の不満を我々の中で解消させるということだな。」
「その通りです。我々は連絡を取りながらも、表面は対立を装いましょう。」
ここで初めて両者は手を取り合った。
「今までも、俺を頼ってほしかったんだ。」
能信は最後にそう言った。
それから数日後、能信の出家の予定が取り消され、謹慎が解かれることとなった。
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
本心で語り合うことが大切だな。
密約成立




