改変の結果
おじいさんのありがた~い おはなし。
「それで、葛葉さん。あの件はどうなりました。」
いつもより長く、同期の時間がかかっていた葛葉に向かって十兵衛がたずねると
「どうやら、前から仕掛けは作ってあるみたい。」
「え?じゃあなぜ今まで」
「それがね。何か所か作ったんだけど、あのうさぎさんたちお昼寝するものだから、作業が止まっているうちに、増殖しちゃって、どれが本物かわからなくなったみたいなの。」
「よくわからないんだけど。」
「どういうことですかな。」
「だから、間違えなく一つはここなの。」
「伏見稲荷?」
「そう。ここは異界のものを異界に帰すためにあったの。」
「ということは稲荷神社か。」
「そうなの。信仰が起こって全国にたくさん大小の社ができちゃって、どこが自分たちが用意したものかわからなくなったみたい。」
「さすがバグうさぎクオリティだな。まあ江戸のアジトもだろうな。」
「もう一つ問題があって、まだ完成してないの。」
「今も?」
「そう、あの人たちこっちになかなか来られないみたい。」
「マーキュリー、直せる?」
「とりあえず、その装置はどこにあるの。見ないと何とも言えないわ。」
「いや、待ってくれ、それ600年前に完成してないとまずいんではないか?」
「600年前に行って完成させるの?」
「いや、600年も移動できるものは限られているのじゃ。」
「そうだな。こっちで作って運ぶということか。直接行けるのは俺だけ?ヴィーナスはどうなんだろう。」
「待たせたわね。私は物は運べないわ。」
と、言って、突然ヴィーナスが現れて、おやつの皿に手を伸ばした。
「それで、歴史はどう変わったんだ?」
「鎌倉幕府は出来たわ。」
「義経公は?」
「お兄さんの頼朝さんと対立して、奥州に逃れたわ。」
「うむ。そこまでは『大日本史』にも書かれておるぞ。」
「ただ、朝廷と鎌倉幕府と奥州政権が鼎立して」
「三国時代か?」
「元寇で、その対立を利用されて、あっさり滅ぼされたわ。」
「え?」
「約100年間、蒙古の支配という名の高麗人が幅を利かせ、多くの日本人が奴隷として売られ、金目のものは奪われたわ。あの人たち奈良の大仏も持っていこうとしたのよ。」
「奥州が強くなり過ぎたのが原因じゃな。」
「最悪の目がでたのか。」
「ね。大江山はどうなってるんだろう?」
「様子を見に行こう。」
「俺も行こう。」
ムーンと十兵衛が転送器のところに向かうと、転送器から「ぶたさん」を下げたぶーが出てきた。
「ぶーさん、大江山は?」
「急に無くなって、山の中に放り出されたんだ。」
「どうやってここに?」
「それは、大江山に簡易転送器を設置していたからね。」
マーキュリーが「ぶたさん」を渡しに行った際に往復の無駄を省くために設置していた。もちろん簡易なので、「大江山-稲荷山アジト」間しか使えない。
「ということは『酒呑童寺』は?」
「破壊されていまは山に戻っているってことか。」
「銅像は?」
「全て奪い去られたようですね。」
「鬼たちは?」
「改変の影響を受けない私一人ということは、全滅でしょうか。」
「元寇の一件で、朝廷は、鎌倉幕府に全国の武士団への命令権を出したんじゃ。それで全国の武士団が動員されて、撃退に成功したのが『大日本史』に書かれた『文永、弘安の役』じゃ。」
「そもそも『奥州政権』ってなかったよな。奥州藤原氏って三代で滅びているしな。」
「『奥州政権』は八代で滅ぼされたわ。」
「元軍にか?」
「そうね。光堂も戦利品として持ち去られたわ。」
「それで、どうやって支配から逃れたんだ?」
「逃れたわけじゃないわ。」
「大陸で弱体化した元を、滅ぼした明が独立して、その時に日本にも手を貸して追い出したんだけど、そのため属国にされたわ。」
「でも、その明も、満州族に滅ぼされて清になったろ。」
「それで、日本に逃れてきたの。」
「ということは、今の日本の朝廷は?」
「そう明国皇帝よ。」
「江戸の城が無くなっていたぞ。」
「街並みも中華街になってる。」
将軍様と金さんが、それぞれ「ぶたさん」をもって転送されてきた。
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
過去の小さな改変が後に大きな変化となる。
バタフライエフェクトというんじゃ。
どうしてこうなった?




