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「それでは、逝ってみよう!」

おじいさんのありがた~い おはなし。

 谷あいに敵の大軍を誘い込んだ頼信軍は、一騎駆けで飛び出してくる敵の武者たちを側面の頼義隊の弓で射落とし、後方からの行軍で幅10mもない狭い谷あいに押し出されてくる兵たちを三交代で犠牲が出ないように防いでいた。忠常軍は側面の頼義軍を背後から襲おうと別動隊を両翼に500名ずつ派遣したが、これも巧みに仕掛けられた罠にはまり、失敗に終わっていた。正面の頼信隊への攻撃は既に二千名近い死傷者を出していた。

 三交代で敵正面に当たった頼信軍も犠牲は最小限に抑えていたが、疲労は限界を越えていた。

「頼義様からの伝令です。」

「うむ。」

「両翼に各五百名ほどの攻撃が二度ありましたが、一度目は撃退しましたが、二度目の攻撃があり、犠牲者が出始めているとのことです。」

「よし、それでは予定通り、陣を後退させるぞ。」

 頼信と頼義は谷あいを警戒するであろう忠常軍に備えて、谷あいの入り口、中央付近、出口付近の三カ所で迎え撃つ準備をしていた。

「大江山からの使者が来ました。」

「うむ。」

「現在、交戦中。『酒呑童寺』正面は確保したそうです。」

「よし、それでは防衛線を一気に出口付近まで移動させるぞ。」

 大江山を包囲する部隊との挟撃の可能性がなくなったと判断した頼信は、谷を抜け、広い平地に出る場所まで陣を後退させた。これを追う忠常隊は、谷の入り口付近に四千の兵を残して、一万を越える兵が狭い谷あいに長い列となって突入することとなった。

 頼信軍は、谷あいから出てくる忠常軍を一人、また一人と打ち取っていく。強そうな騎馬武者は、側面から、頼義が射落とし、矢が尽きた兵は、切り込みをかけていた。

そうして、忠常軍を削り続けて、さすがの頼信軍にも疲労の色が濃くなり始めたころ、忠常軍に動揺が走った。谷の入り口に待機させていた四千の軍が、谷あいに向けて進軍を開始したのである。忠常軍の先頭は押し出されるように前進するしかなかった。

「頼信殿、敵の後方に藤原保昌殿の軍が到着しました。」

 頼信軍の苦戦を知った保昌は、援軍約四千の全軍を頼信軍と挟撃できる谷の入り口付近に向かわせた。途中、大江山に向かう各地の武士団や、音楽や芸術に理解の深い保昌を「酒呑童寺」の守り神だと信じる若者たちが次々と、将軍となった保昌軍に合流し、保昌軍は既に一万を越える大軍となっていた。

 既に五千名をこえる死傷者を出している平忠常軍は、全軍が狭い谷あいに封じ込められる形となり、忠常は降伏の使者を頼信に送った。



「忠常、なぜこのようなことをしたのだ。」

 降伏に現れた、元は配下であった平忠常を頼信は、ここまで話せば説得できると思い、何度も使者を送ったが、無視されていた。そして降伏に現れた今になって初めてその考えを知ることとなった。

「私はお館様に逆らう気は全くありません。しかし、不平不満を抱える多くの坂東武者たちを止めることができませんでした。『鬼退治』が摂関家の独占的な荘園支配を終わらせるという話が広がり、『鬼退治』で有名な武門の家に使え、平将門の血筋でもある私がその頭にされました。私も『鬼退治』という正義には逆らえませんでした。」 

「それでは、なぜ私の問いかけに答えなかったのだ。」

「『鬼退治』を終わらせてから、頼信様への非礼をおわびするつもりでした。」

「うむ。その『鬼退治』が正義だという考え自体が問題なのだがな。」

「なぜですか。鬼は悪です。悪を倒すことが武家の務めです。」

 忠常のこの生真面目さがうまく利用されたのだろうと頼信は考えた。


 源頼信、藤原保昌の二将軍が率いる降伏してきた兵を含めて二万を越えることになった軍が、酒呑童寺に到着したころには、既にこちらも決着がついていた。




「酒呑童寺」のステージの中央に、大きな寝台が用意され酒呑童子が横たわっていた。最後はステージの上で死にたいという酒呑童子の気持ちを汲んだ配慮であった。「酒呑童寺」の危機に駆けつけた多くのファンたちが、観客席でそれを見守っている。その最後に立ち会いたいという多くの者たちも、戦いが収まった「酒呑童寺」に集まって来ていた。ステージ上には「おにふたーず」のメンバーや、多くの鬼たち、天狗衆、そして静がいた。

 


 突然、横たわっていた酒呑童子が立ち上がった。


「それでは、逝ってみよう!」


 ばばんば、ばんばんばん~♪

 いつものあの懐かしい温泉そんぐが流れ始めた。ステージ上のみんなが踊っている。

「香典もったか?」

ばばんば、ばんばんばん~♨

「線香は〇日香だぞ。」

ばばんば、ばんばんばん~♪

「あんまり泣くなよ。」

ばばんば、ばんばんばん~♨


 何故かあの世にいるはずの碓井貞光やミスターコブーも混ざって踊っている。客席の観客も踊っている。踊りながら涙を流し、そして笑っている。


「それでは、また来世~!」


 音楽が鳴り止むと共に酒呑童子は寝台に横になりそのまま昇天した。

 酒呑童子は、満足そうな幸せそうな顔をしていた。



【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

笑って逝けたらいいのう。

本日、「鬼ふたーず」のリーダーであった「酒呑童子」さんがお亡くなりになりました。

謹んでご冥福をお祈りします。

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