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悪霊の作り方

おじいさんのありがた~い おはなし。

 その後、藤原公任が法成寺にやってきた。

 公任宅も武者たちに包囲されたのだが、息子の定頼のお経で、能信の従者を残して帰っていったそうであった。捕えた従者に聞き出したところ、残りの四納言である行成、斉信、俊賢邸にも公任襲撃後向かう予定であった。

 安倍兄弟の邸宅にも襲撃が行われたのであるが、晴明が生前から仕掛けたあったトラップにかかり、傷だらけで帰っていったとのことであった。


「これだけ大がかりな反乱を起こすとは」

 事件を聞きつけて急ぎやってきた斉信が驚いている。

「これは、酒呑童子がいよいよ亡くなるということでしょうな。」

 同じく、駆けつけた俊賢も襲撃の計画に驚きながらも冷静に状況を分析していた。

「多分、酒呑童子が亡くなる前に殺して、恨みを残させようということでしょうな。」

 公任も悪霊たちの計画を看破していた。


「既に頼信殿が大江山に向かっていますが、到着するまでに攻撃が行われたら、どれくらい持ちこたえられるか心配ですね。」

 教通は、周辺の武士団に連絡を取っているが、かなりの数が能信側についているようで反応が悪い。摂関家に対する不満が武士団の中に広がっているようだった。

「真の話では、静が大天狗と吉野天狗を率いて大江山に向かったそうです。我が家を救いに来た鞍馬の天狗たちも向かいました。」

 保昌は大江山に向かう天狗たちから聞いた情報を伝えた。

「大天狗?あの大峰山の前鬼坊か。」

 学識が深い公任は事の次第がわかってきた。

「それでは、静を守護しているのは行者様なのか。」

「カラス天狗たちの話ではそういうことらしいです。」    

「ということは後鬼の正体は酒呑童子ということですかな。」

 俊賢も学識の深さでは公任に劣らないところから、いつものように話をまとめた。

「なんでも酒呑童子の魂を後鬼に戻す必要があるのだそうです。」


 頼通は使者を御所に向かわせると、

「保昌と頼信を将軍として反乱軍の鎮圧を命じるよう帝に奏上した。既に頼信は向かっているが、保昌は兵が集まり次第、大江山に援軍に向かってほしい。」

「謹んでお受けいたします。」

 「小しきぶ」では和泉式部と引き換えに辞退した将軍位を保昌は受けた。

 その日の夕刻、保昌は集まった約四千の兵を率いて大江山に向かった。

 


 大江山上空に到着した一行は、酒呑童子を包囲する武者たちの頭上を越えて「酒呑童寺」の正面に着地した。正面には既に武装した鬼たちが平忠常の軍に備えていた。

「大天狗様が援軍に来て下さるとは心強い限りです。」

 鬼たちを指揮していた茨木童子が出迎えた。

「今どんな状況ですか?」

「寺の周囲で小競り合いはありましたが、まだ突入はありません。」

「なぜ、まだ突入してこないのでしょう。」

 静がたずねると、前鬼坊が「酒呑童寺」の図面を見ながら答える。

「応援の兵を待っているんでしょうな。」

「応援の兵?」

「城攻めは攻める側の人数が、守備側の人数よりも数倍いなければなりません。別動隊との合流を考えているのでしょう。」

 前鬼坊が子供に敬意をもって質問に答えているのを見た鬼たちは

「あの…。この子供はどなたなのでしょうか。」

「われらが主人、静様だ。」

「静?聞いたことがありますな……。」

「小式部内侍の長男、静です。」

「あ、あの秀才で有名な。」

「まだこれからの修行を待つ身です。それより銅像は何体出来ているのですか?」

「現在のところ、教通様から届けられた八体のみです。」

「それらを設置予定位置の鬼門、裏鬼門の位置に四体づつ設置してください。」

「うむ。残りの十六ヵ所に、お前たちが向かうのだ。」

 前鬼坊は上空から「酒呑童寺」に設置された結界を見て、二十四カ所の起点となる位置に銅像が置かれることに気づいていた。そこで配下の吉野天狗たちを残った十六カ所の起点に配置して銅像の代わりにすることを考えたのであった。当然鬼たちには訳が分からない。

「酒呑童子の魂が、悪霊たちに連れ去られないように防御するのだ。」

「大将は、助からないのですか。」

「残念だが寿命のようなのだ。」

「死んでしまうのがわかっていて、なぜ奴らは攻めてくるのですか。」

「命が尽きて死ぬのと、殺されるのでは違いますよね。」

 悪霊たちの意図がわかっている静が、こどもらしい声で答えた。

「そうだな。」

「大将には明るく笑っていて欲しいな。」

「そうだな、恨みをもって死なせたくないよな。」

 鬼たちが酒呑童子を見送ろうと相談しているところに、クマラに率いられた鞍馬の天狗たちがやってきた。

「真様たちは無事ですぞ。」

長老天狗がそういうと、静は安心して泣きそうな表情を浮かべた。気強く振舞っていてももちろん家族のことが心配でたまらなかったのだ。

「増援で、こちらに向かっている武士団と頼義殿たちの軍が戦っていました。増援は食い止められているようです。」

「それでは今のうちに奴らを追い払えばいいんだろ。」

 クマラが、羽が短いためやっと追いついた鬼一法眼を連れて武士団に突入していった。」


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

話が混乱してきた時は、最初から読み直すとよいぞ。

恨みを持って死ねば悪霊になるのです。

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