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法成寺

おじいさんのありがた~い おはなし。

「大江山の様子が、おかしなことになっています。」

 道長の居室にやってきた頼通が大江山の異変を報告した。

「どうなっているのだ。」

「多くの武者たちが周囲を封鎖しております。」

「反乱なのか?」

「いえ、酒呑童寺付近を取り囲んでおります。」

「誰が指示しているのか。」

「どうやら、関東の武士団が動員されているようなのですが。」

 その時、道長の身の回りの世話をしている従者の一人が、能信の来訪を告げた。

 能信は戦装束で現れた。

「父上、大江山の鬼たちが反乱を企てています。」

「何だと?」

「今、平忠常が坂東武者を率いて包囲しております。総攻撃のご指示を」

「能信、それはおかしいだろう。彼らはわれわれと共存しているではないか。」

 頼通は、これは朝議にもかけずに討伐をおこなう強引なやり方だと反論したが、内情を探るいい機会だと考え、従者に教通を呼びに行かせた。

「何を兄上はおっしゃる。相手は鬼だぞ。」

「酒呑童寺からは毎年きちんと税は収められておるし、特に問題はないぞ。」

「だから兄上は甘いんだ。鬼は、何をしでかすかわからない悪だ。悪は滅ぼすべきだ。」

 道長も何かこれは裏があると思いつつ、上手く能信から情報を聞き出そうとした。

「彼らが反乱を企てている証拠があるのか?」

「酒呑童寺の門に大きな鬼の銅像を立てています。これぞ反乱の証拠です。」

 そこに使用人を通さずに教通が駆け込んできた。

「父上、酒呑童寺が武者たちに取り囲まれて職人たちが入れないと鬼たちから報告が…。」

ここまで言って、教通は能信が戦装束でこの場にいることに気が付いた。

「教通。お前が反乱の首謀者か。誰かこのものを捕えろ。」

 能信は、教通にとびかかると羽交い絞めにした。

「能信何をする。」

「能信、やめるんだ。」

「離せ!」

「父上、こいつが鬼たちと結んで、人心を惑わせています。」

「落ち着け能信。話を聞くのだ。」

「そんな場合ではありません。こいつを始末しなければ大変なことになります。」

「なぜじゃ?」

「鬼たちと気脈を通じているからです。」

「仲良くしてはならぬのか?」

「鬼は悪です。そんなものと通じているこいつも、側室の小式部も悪です。」

「どうするつもりなんだ。」

「鬼も、その協力者も処刑して、晒すべきです。」

「小式部は側室などではない。彼女に手を出すな…。」

 教通は羽交い絞めにされながらも必死で振りほどこうともがいている。

「もう遅いな。今ごろは、頼宗兄が率いる武士団に捕えられて、死刑を待っているころさ。」

「何だと?頼宗も加担しているのか。勝手にそのようなことが許されると思っているのか?」

 頼通もあまりの能信の独断専行に対する怒りに冷静さを失っていた。

「兄上、兄上も教通や鬼たちをかばうなら同罪だ。父上、捕えましょう。」

「そんな勝手なことが許されると思っているのか?」

「許されるさ。この寺も兵たちが包囲してる。兄上も一緒に死罪だな。」

 

「それは、どうですかな。」

 突然、武者姿の源頼信が頼義を連れて、姿を現した。

「寺の周囲の坂東武者は降伏したぞ。」

「鎮圧は終了しました。」

 寺の周囲の坂東武者たちは頼信、頼義親子にあっさり降伏していた。

「これから、大江山に向かいます。」

「頼義殿、その前に小式部を助けに行ってください。」

 力が緩んだ能信から逃れた教通は、去ってゆく頼義に後ろから声をかけた。

「それは心配ないと思いますよ。」


 小式部捕縛に向かった頼宗率いる武者の一団は、藤原保昌とそこに居合わせた柳生十兵衛によってこれまたあっさりと鎮圧されていた。

 保昌は、屋敷を十兵衛に任せると、捕えた頼宗を連れて法成寺にやってきた。


「道長殿、十兵衛が申すには酒呑童子の死期が迫っているとのことです。この度の反乱は……。」

「魂を奪うのに邪魔な人物を排除するためか。」

「ええ、安倍兄弟の安全もこちらで確認しました。酒呑童寺に向かっているそうです。」

 道長には、保昌の報告に今回の全貌が理解できた。


「それで、お前たちこの度の責任どうとるのかな。」

「父上、騙されてはいけません。鬼は禍を呼びます。退治するのが正義です。」

「小式部は教通に任せては危険です。私が責任を持って管理しなければなりません。」

 能信も頼宗も操られているのではなく、本気でそう思い込まされているようであった。

「おまえたち、反乱を起こすにも考えが浅すぎる。今回は謹慎程度ではすまないぞ。」

 道長は悲しそうな複雑な表情を浮かべると、つぶやいた。

「出家してもらうしかないのかのう。」

 出家するということは現在の地位と藤原家との関りをすべて失うことである。

 道長はまた、「帝の権威」を全く考慮に入れない二人の頭の悪さにも失望したのであった。


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

クーデターは帝を確保することが肝心だぞ。

こういう場合は、帝の玉璽や印綬が必要なんですよね。

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