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襲撃

おじいさんのありがた~い おはなし。

「保昌殿、頼宗殿が数十名の武者を率いて屋敷を取り囲もうとしています。」


 屋敷の周囲を見張っていた袴垂が報告に現れた。保昌は急いで戦支度を整えながら、屋敷に作った緊急用の蔵に家族を避難させるように袴垂に命じた。慌ただしくなった屋敷の様子に十兵衛も保昌から武具を借りて襲撃に備えた。和泉式部はまだ安定期に入っていない小式部をかばうように三人の孫たちを連れて蔵へ向かった。

「ママ、大丈夫?」

「保昌様がこんなこともあろうかと土蔵を作ったのよ、これで火をかけられても防げるわ。」

 真は歓の手を引いて蔵に向かいながら、天狗の笛を吹いたが、何も反応がなかった。


 表門に火矢を撃ち込まれたが、屋敷の中までは火矢は届かず、また撃ち込まれた火矢も前回の騒動後に対策済みであったため、すぐに消えてしまった。屋敷の門の狭い楼に登った保昌は弓矢で応戦し、なかなか門は破られず、表門付近は壮絶な弓の打ち合いとなっていた。周囲を厚い板塀で囲った楼には何十もの矢が撃ち込まれたが、保昌は板塀を盾代わりに次々と敵兵に命中させるので、拮抗状態となっていた。


 その時、屋敷の横手で大きな音が鳴った。側面に回った敵兵が土壁を破壊して侵入したようであった。吉平が仕掛けた罠で、塀が破壊されると警戒音が鳴るようになっていたのだ。やっと空いた穴も硬い土壁のため人一人が通れるような穴しか開けられず、それでも一人また一人と屋敷までの庭に侵入してくる。


「この先は通さん。柳生十兵衛 参る!」


 侵入してきた敵兵を十兵衛が、神通剣(複)で切りまくる。ここで一人、二人と入ってくるなら十兵衛一人で十分であったが、今度は裏側の方から大きな音がする。

「しまった。あちら側までは間に合わない。」

 十兵衛は二人の武者を切り倒し、更に三人の武者と切り結んでいる。さすがに裏手に回る余裕はない。



「まかせろ!」

 黒い影が裏口の方へ飛んでいく。


「クマラ!」

 十兵衛が声をかける間もなく、クマラは裏口から、侵入した武者を切り倒し、続いて入ってくる十数名の武者たちを翻弄している。



 その頃、大江山に向かう一行の中、長老天狗は真の天狗の笛の音を受け取った。

「静様、真様に何かあったようです。とりあえずクマラ様が向かったようですが、わたしたちも向かいましょう。」

 これを聞いた大天狗は、

「いや、待て、これは罠だ。」

「どういうことですか?」

「大江山に目が行かないようにしているのだろう。私たち吉野衆は大江山に直行する。」

「では、わたしたち鞍馬衆が参りましょう。」



 小式部は蔵の中に、一本の笛を持ちこんでいた。源博雅から形見として預かった「葉二」であった。

「これをパパに渡さなきゃ。」

「今外に出ては危険です。しかもそのお身体で」

 家族の護衛をしている袴垂が止める。

「これがあれば相手は大人しくなるわ。」

「そうですが、今の保昌殿に笛を吹く余裕はなさそうです。もう二カ所も壁に穴が開いたようですし、外は危険です。」


「わたしが行くわ」

 真は母の手から「葉二」を取り上げると、外に駆け出して行った。

「ああ、危険です。おやめください。」

 真が外に出ると、やっとカラス天狗たちが到着した。

「真様、お待たせしました。」

「この笛をじいじのところに届けるの。手伝って」


 既に屋敷の中には数名の武者が入り込んで、室内を物色していた。その盗賊となった武者たちをカラス天狗たちは相手にし、長老天狗は真に「天狗の隠れ蓑」を掛けた。

「これで、門まで急ぎましょう。」



 表門付近では既に矢を打ち尽くした保昌が十数名になった敵兵と神通剣(真)で戦っていた。真は姿を隠しているがなかなか近づけない。

「この笛を渡して、じいじが吹く余裕がなさそう。どうしよう……。」


「任せなさい。下を向いて!」

 急に姿を現した道満が、大きな音を立ててまばゆい光を宙に放った。あたりは一瞬の 間に真っ白になった。その間に真は走って保昌のそばに近づいた。

「じいじ、ママがこれを」

「真?こんなところに来ては……」

 保昌も目が眩んでいたが、突然の真の声に我に返り、手渡されたものに覚えがあった。 保昌は剣を置き、「葉二」を心を込めて吹いた。


 笛の音は、辺り一帯に響き渡り、邪悪なものを一気に払った。



 頼宗が率いてきた武者たちは、持っていた武器を取り落とし、そのまま座り込んでしまった。中には涙を流しているものもいる。


「捕えたよ。」


 屋敷の中に駆け込んで、小式部を探し回っていた頼宗を十兵衛が捕えて戻ってきた。

 兵たちの戦意は消え、それぞれ勝手に帰っていった。



【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

戦闘シーンは勢いで読むんだぞ。

保昌宅に押し入るのは無謀だ。

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