表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/86

大峰山

おじいさんのありがた~い おはなし。

 翌朝、まだ日が登る前に静は、カラス天狗たちを呼び出した。

「大峰山ですか。この間、何人か来ましたね。大天狗の手下たちでしたね。」

「大天狗?」

「ええ、大峰山には吉野方面の守護をしている大天狗が住んでいます。われわれのクマラが都の北を守護しているように、彼らが南を守護しているのです。」

 初めて静が大きな海を見た吉野越えの日に、途中から同行した近辺の天狗たちの中に大峰山から参加した天狗たちがいた。どうやら、吉野方面を守護している大天狗からの命令で護衛していたらしかった。

「大峰山の天狗に会えとの観音様からの伝言があったということなのですね。やはり、あの方ですね。」

「あの方とは誰なんですか。」

「とりあえず、道中でお話ししましょう。」

 カラス天狗たちは、大峰山に向けて静を抱えて飛び立った。

「大江山の大天狗は、前鬼坊といって、ここ300年ほどこの地を守護しています。」

「300年? 前鬼?何かの書物で読んだことがある気がします。」

「そうですな。300年前までは前鬼と呼ばれていました。」

 静が思い当たる人物は、謎の多い伝説の行者であった。


「おお、静様。よくいらっしゃいました。」

 大峰山から迎えに現れた天狗たちは、一行を迎えると、厳重に警護して山麓に向かった。

「なぜ、私のことをこの天狗たちは知っているのですか?」

「静様と真様をお助けすることが、われわれ天狗の使命なのです。」

「長老様はなぜそれを黙っていたのですか?」

「いや、我々も少しずつ思い出してきたのです。」

「思い出した?」

「あの日、初めてお二人にお会いした時に、我々の頭の中に流れてきたのです。我々が長い間待ち望んでいた方が現れたと。」

 静は、長老天狗と話しながら、大峰山の山頂に下り立つと、周囲の天狗たちは一斉に平伏し、ひと際大きな天狗が一歩前に進み出た。

「お待ちしておりました。」

「あなたは?」

「私は大峰山前鬼坊と申します。生前の小角様に前鬼として仕えておりました。」

「やはり、役小角様なのですね。」

「はい。小角様は生前、300年後に自分の後を継ぐ者が現れる。そのものに仕えよとの言い残し、石鎚山に帰られました。」

「なぜ、私なのですか?」

「わかるのです。私も配下の天狗たちに様子を見させて確信しました。」

「私にあったわけではありませんよね。」

「これで、様子を見ておりました。話も伺いましたよ。」

 大天狗は「天狗の遠眼鏡」を取り出して見せた。そうしていると山の麓の方から雲が山頂を覆い周囲は薄く霧がかかったようになった。

<前鬼よ。久しぶりだな。>

「え?小角様ですか。」

「私にも聞こえます。始めまして、私は静です。」

<私の声が聞こえるようになったか。観音様の力だな。>

「私を守護してくださっていると聞きました。」

<ああ、お前の母親がその力をお前たちに分け与えてな。誰が守護するかで天界でもめたんじゃ。>

「もめた?」

<結局、お前は不動様が守護することになってな。わしが派遣されたんじゃ。>

「え?不動明王様ですか?」

<お前は母親と神仏の力で、人の力をはるかに越えた法力を持つことになったのだ。>

「これから、修行を行うということですね。」

<ああ、そのために私が守護することになったのだよ。>

「観音様からは、真言と台密、東密を学べと告げられました。」

<そうだな。しかし弘法殿は台密はいいから、自分が教えると言っているぞ。>

「弘法って、空海様ですか。」

<本当はな。そうやってお前の成長に合わせて、皆が力を貸して育てていこうということだったのだ。>

「本当はとは、やはり時間がないということなのですね。」

<そうだ。>

「酒呑童子様の件ですか。」

<その通りだ。もう時間が残ってないのだ。>

「私は鬼の治療なんて学んでいませんが、どうしろというのですか。」

<いや、酒呑童子の命は尽きるのだが、その魂が問題なのだ。>

「異世界のものなので悪霊に奪われると災厄を招くと聞いてます。」

<そうなのだ。前鬼よ。お前はこの静を守護して、後鬼を奪われないようにするのだ。>

「わかりました。」

「酒呑童子が後鬼なのですか?」

<いや、酒呑童子にその魂を移しているのだ。>

「移すというのは、酒呑童子には二つ魂があるのですか?」

<いや、後鬼としての体は別のところに封印してあるのだ。>

「しかし、私はどうやって、その魂を守ればいいのですか?」

<お前の力で祓うべきだが、今回は時間がない。お前の体を一時使わせてもらう。>

「その間、私はどうなるのですか。」

<一時的にその体から、お前の魂は抜ける。その間は前鬼がお前の魂を守る。>

「そうですか。私は一時死ぬのですね。」

<いや、玉の緒はつながっておる。>

「わかりました。覚悟を決めます。」

<ただし、これができるのは私と後鬼に深い縁があるからで、次回からはそうはいかん。>

「それまでに修行を積むということですね。」

<そうじゃ、その話は後からだ。まずは大江山に向かうぞ。>

 吉野の天狗衆だけでなく、鞍馬山の天狗たちも静を守りつつ、併せて数十羽の天狗の集団が大天狗を先頭に大江山目指して飛び立った。


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

修行だ。修行だ。修行だ!

酒呑童子の命が尽きるのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ