蘆屋道満
おじいさんのありがた~い おはなし。
従者たちは検非違使庁に連行され、取り調べを受けることになった。
石山寺で捕縛された男と、頼信たちは捕縛した四人は念のため、別の部屋に連れていかれた。保昌や十兵衛が到着したころには、既に静と真は到着していた。
「早いなぁ。袴垂が連れてきたのか。」
「そんな必要ないわ。」
と、真は首から下げた天狗の笛を見せた。
「運んでもらったの。」
「天狗が足代わりとは……。かないませんよ。」
やっと追いついた吉平と吉昌が嘆いている。
「で、真ちゃん。この部屋にいるおじさんに何が見える。」
灯りのついた部屋に入れられている男を簾の中から見た真は、。
「うーん。頭の禿げたおじさん。」
「しーつ、真、向こうに気付かれないように」
それから、別の部屋に連れられて行き、また同じように簾の中から見た真は
「こわい、逃げなきゃ。」
「どうした?」
「こっち見た。」
「見えないよ。」
「目が合ったみたい。あの時見た悪霊たちよ。」
「ちょっと、真ちゃん別の部屋で話そう。」
二人は頼信のいる、別当の部屋に案内された。
「それで、真ちゃん。最初の男は?」
「あの人、何か他の霊と違う。多分まだ死んでないわ。」
「残りの四人は」
「あの人たちは、それぞれ後ろに変な人たちがいたわ。たぶん、信家たちのママを連れ去った人。」
「五人とも悪霊に操られていたのか。」
「多分、最初の一人は道満だと思います。」
吉平が、そう判断すると、吉昌は呪符を貼りに最初の男の部屋に向かった。
「蘆屋道満は、多分幽体です。本体は別のところにあります。」
「これで、逃げ戻ることはできませんね。」
「捕まえるなら、動かない今のうちです。」
この話を聞いた頼信は、頼義と部下たちに道満の本隊を捕えに向かわせた。
頼義が道満邸につくと、中から小僧が出てきた。
「蘆屋道満殿はいらっしゃるかな。」
「どーまん、いるけど、いない。」
「ん?」
屋敷の中からもうひとり、小僧が出てきた。
「どーまん、いないけど、いる。」
「ん?」
屋敷の中からまた。小僧が出てきた。
「どーまん、いるけど、どこいった。」
「ん??」
部屋の中から次々に小僧が出てくる。
「あー、面倒だ!」
頼義は八幡様のお守りを握って、祈った。
すると、小僧たちはスーッと消えて、紙切れになった。
「ああ。消えましたか。」
吉平がやっと追いついたようであった。
「小僧の式神がいるので気を付けてって、思ったけど頼義さんも封印できるのですね。」
「いや、これは八幡様のご加護なんです。」
「神様の力が使えるんですか?もうわたしたち自信失くしそうです。」
父、晴明の力に及ばないどころか、子供の真や、武家の頼義にできることができないことに、吉平は落ち込みそうになったが、明日からもっと修行しようと心に誓うのであった。
「まあ、中に入りましょう。」
道満は奥の祈祷の間で手呪を結んだまま、動かなくなっていた。
「これは死んでいるのか。それにしては温かい。」
「幽体を分離して飛ばしたんですね。」
「じゃあ、やはり幽体は、検非違使庁にいるのか。」
「そうなりますね。」
「まあ、こいつを縛って連れて行こう。」
「それで、道満さん。何であんなことをしたんですか?」
保昌が、幽体から戻った道満に尋問をする。
「わしは何も知らんぞ。」
「じゃあ、あの男はなぜ、紫式部殿を守護している霊を知ってるんですか。見えるんですか?」
「あのバカ、余計なことを言いおって」
「あの男が守護霊など見えるわけがありませんよね。」
「あそこを焼けば、紫式部の守護がなくなると聞いてな。」
「だれから?」
「それは言えんな。能信様が次の関白になったら、陰陽司に指名されるぞと言われてな。」
「能信殿?」
「ああ、邪魔な霊を祓う力を持つのはわしだけだとな。」
「邪悪ではなく、邪魔?」
「邪魔と言ったのか。」
「ああ、邪魔な霊を祓うと、能信様が関白になれるそうだ。」
「あのさ、道満さん。そんなことして父が喜ぶと思いますか。」
吉昌はこのいい加減な親父に腹が立っていた。
「いたい!だれだわしの頭を叩くのは?」
晴明が道満の禿げ頭をぺちぺちと叩くのを真は笑いながら見ていた。
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
落ち込んでる暇があったらその分修行じゃ。
まあチョロいですね。




