ぼうけん2
おじいさんのありがた~い おはなし。
大江山の鬼たちとも親しいカラス天狗の長老は、大江山の歌姫である小式部内侍ファンの一人であった。人の格好になってなんどもライブに通っているらしい。
「なるほど、真様と、静様とおっしゃるんですね。今回はどのようなご用件で?」
「一緒に来た600年後の未来から来た十兵衛さんに、旅の副将軍から『鞍馬山の天狗に会え』って伝言が来たのです。何かご存じですか?」
「旅の副将軍? ああ、あの老人ですね。あの方はここにはいませんよ。」
「では、伝言は?」
「あの方は一度お会いしたことがあるんですが、500年ぐらい未来の人で、この時代に来ることはできないんですよ。せいぜい400年といってました。」
「未来の人なんですね。でもどうやって知ったのですか?」
「時々、風車とともにメッセージが届くのです。」
「歓が風車拾ってたよね。あれなのかな。」
「多分、時空の隙間から投げているんだと思いますよ。」
「え、届くんですか?」
「たしか、キジの仮面を被った男が忍者のようなのです。」
「ねえ、静。十兵衛さんたちは?」
「そうだ。一緒に来た者と合流したいのですが」
そこで、小天狗たちは静と真を抱き上げ、空に舞い上がった。二度目となれば二人も余裕で空の散歩を楽しんでいる。
「真!どこにいくんだ。」
「大江山の方まで、ひとっ飛びだって~!」
「ちょっと、すみません追いかけてください。」
真と小天狗はスピードを上げて飛んでいき、気が付いたら眼下には天の橋立が見えていた。
「上から見ると、不思議な形だね。」
「少なくとも、天には向かってないな。」
「もう、もどらなきゃ。」
「そうだ、十兵衛さん。」
「十兵衛さん、なんか仲良くなっちゃった。空飛ぶって面白い。」
「とても興味深かったですよ。」
「ママが話してた貴船神社も初めて見たわ。」
十兵衛たちのところに戻ると、葛葉に似た女の人と、頼義が混ざっていた。
「あれ、頼義さんなんで?」
「あなたは葛葉さんの…、いや、クマラさんと関係がありますね。」
二人はそれぞれに声をかけた。頼義は保昌宅に巡回に来た際に母に頼まれたのだそうだ。そして、静の問いかけ通り、ヴィーナスはクマラの姉、葛葉の後輩のど〇きつねであった。
「もしかして、あなた方が『あまのきつね』なんですね。」
「賢い子ね。その通りよ。」
「他の星って、月ですか?」
「葛葉ちゃんたちはそうだけど、わたしたち姉弟と、小天狗たちは、元は金星。」
「金星って、あの夕方、明るく光る星ですよね。」
一行はクマラの案内で、僧正ガ谷を通り、クマラのいう魔王殿に向かって山道を登っていた。その間、静はヴィーナスに質問攻めであった。ヴィーナスもこの賢い小式部の息子が気に入って、いろいろなことを教えていた。
「なるほど、僕も時空を旅してみたいなあ。」
真は、疲れて頼義の背中に背負われている。
それから二人は、みんなとともに不思議な魔王殿に入り、小天狗たちと「鬼一ホーガンと虎仮面」の戦いを観戦して、十兵衛たちとともに帰ることになった。
「十兵衛さん、旅の副将軍はここには来ないみたいですよ。」
「そうか。でもここに来たおかげで謎は解けたよ。」
「刀の話ですか?」
「原因はここに俺たちが来たために、頼義さんが来ちまったってことだな。」
「ああ、まさかこんなことになるなんて思わなかったよ。」
「でも、十兵衛さんの最初の話では6.7本って言ってませんでしたか。」
「そうか。これではまだ四本だな。まだ、二,三本の謎は残るというわけか。」
帰りは、真と静は小天狗たちに運ばれて、一足先に帰ることになった。この時間から山を下って、馬で戻ると夜中になりそうだからという理由であった。
もちろん、二人は空の旅がしたかったのであるが……。
「今度は、南の方が見たいな。」
「空から見る吉野って興味がありますね。」
一緒に飛んでいる長老天狗も声をかける。
「吉野のあたりまで行ったら、南にすごいものが見えますよ。」
「すごいもの?」
「海です。」
「海なら、難波や近江で見ましたよ。」
「そんなものではありませんよ。」
小天狗たちと空を飛んでいると、地上の方から数羽の天狗が近づいてくる。
「あれは?」
「やつらは高野山の小天狗たちですね。多分様子を見に来たんでしょう。」
「高野山にもいるんですか?」
「この辺だと、大台ケ原の付近とか、吉野の方だとか結構いますよ。」
そうやって数十羽になった小天狗たちと、吉野を越えると
「下ばかり見ないで、正面を見て御覧なさい。」
二人が地上から目を前に向けると、一面の海。
「あれは海ですか。向こうの空まで全部海なんですね。」
「わぁーすごい。海って大きいんだ。」
二人は初めて見る太平洋。どこまでも続く水平線と、そこから登ってくる明るく大きな月をいつまでも見ていた。
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
海は広いな大きいな。
この二人は癒しですね。




