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ぼうけん1

おじいさんのありがた~い おはなし。

 話は前日に遡る。

 静と真は鞍馬山に十兵衛と行くことになった。自分の部屋でバタバタと準備をしていた真は、夜になって静の部屋にやってきた。

「静、明日楽しみだね。何やってるの?」

「うん。鞍馬山について調べてたんだ。」

静は手書きで書かれた古い地図を見ていた。

「鞍馬山の西に貴船川があって、その向こうが貴船神社。」

「ばあばたちの思い出の場所ね。」

「で、鞍馬山の高いところに鞍馬寺があって、そこから貴船神社の方に向かう途中の谷を僧正ガ谷といって、この辺に天狗が住んでいるらしいんだ。」

「じゃあ、鞍馬寺まで登ってからもっと奥まで行くんだね。」

「真はなにか準備したのかい。」

「ええ、今日はいろんな人が来たわ。みんないろいろ教えてくれたわ。」

 

 真の小式部譲りの霊感は成長するにしたがって、どんどん発達しているようで、天性のコミュ力と相まって、いろんな霊たちとお友達になっていた。

「なんでもあの辺りは天狗を恐れて、熊たちは近づかないそうよ。それから、近くにまだ発見されていない温泉があるらしいの。」

「ねえ、真。それ必要な情報?」

「あの人たち、わいわいやって来ていろんなこと言って帰っていったわ。」

「あのさ。天狗って、中国では天から降ってきた(いぬ)だって、空から降ってきたらしいよ。この中国の書物に出ていたよ。」

 静は鞍馬寺行きが決まると、すぐに公任の屋敷に向かい、関係しそうな本をたくさん担いで帰って来ていた。

「狗なの?だったら、顔が長いのかな?」

「落ちてきた時の音が犬の吠える声に似てたらしいんだ。日本書紀には『あまきつね』って出てたから、きつねの形に似てるんじゃないかな。」

「きつねだったら、葛葉さんみたいな?」

「月の世界から落ちてきたのかなぁ。まあ遅いから今日はもう寝ようよ。」

「そうね。あっ、忘れる所だった。明日はお守りを必ず持っていくようにって晴明さんが言ってたわ。」

「怪異と出くわすことがあるっていうことなのかな。忘れず持っていくよ。」

 二人には生前の晴明からそれぞれお守りを渡されていた。もちろんその意味が分かったのは最近のことであったが、晴明の五芒星のお守りは二人の子たちを守っていた。



 翌朝、十兵衛は保昌から一頭の馬を借り、前後に静と真をまたがらせて鞍馬山に出発した。数時間で何事もなく鞍馬寺の山門までたどり着いた三人は馬を降り、本殿までの長い参道をてくてくと登っていった。

「十兵衛さん、天狗ってどんな恰好をしているの?」

「俺の時代では山伏の恰好をしているみたいだ。長い鼻と赤い顔で、大きな扇を持ってて大風をおこすらしい。」

「静が調べた古い書物ではきつねさんの恰好しているみたいよ。」

「きつねの格好?」

「真、そうじゃなくって、日本書紀では『あまきつね』って呼ばれていて、中国の書物では天から落ちてきた(いぬ)なんだって。」

「きつね?」

 本堂でお参りした後、天狗が住む僧正ガ谷へ行く前に、十兵衛は子供たちと一休みすることにした。三人でお弁当を食べて……。


 「それで、その頼光っていうのはどのくらい強いんだい。」



「ねぇ。静。顔はきつねに近いわよ。」

「そうだね。古書の記述が正しいのかな。って真!」

 突然、真の背後から一羽の小天狗が現れ、真を抱えた。

「何するんだ。」

と、静が叫ぶと、静も後ろから羽交い絞めにされていた。そして馬に乗せられた時のように抱えあげられたかと思うと、空を飛んでいた。 



「ねえ、あなたはだあれ? どこに連れて行くの?」

「ん、お前俺たちと話せるのか?」

 自分を抱えあげた小天狗に真が話しかけると、小天狗たちは驚いたようだった。

「言葉が分かるのか?」

「わかるわよ。あなたたちはクマラさんとなんか違うわね。」

「俺たちはカラス天狗さ」

「天狗さんにも違いがあるの?」

「ああ、だってもともと種族が違うんだ。」

「種族?」

「天から来た仲間のことを人間はみんな天狗っていうけど、種族が違うんだぜ。」

「へー、そうなんだ。カラス天狗さんはクマラさんの子分なの?」

「いや、あいつは自分のこと魔王っていってるけど、みんな仲間さ。」


 僧正ガ谷付近まで着くと、小天狗たちは真と静を下した。

「真、大丈夫か?」

「うん。カラス天狗さんとお友達になっちゃった。」

「え、もう。」

「うん。いろいろ教えてくれたわ。あのクマラさんはここからもっと先の山の奥に住んでるんだって、それから貴船神社も見えたわ。」

「僕も地図に書かれた位置に川があって、その先の貴船神社も見えたよ。」

「お前たち、まだ子供なのに怖くないのか?」

 さらわれたはずの二人が、楽しそうに興奮しているのを見た小天狗たちは、自慢げに自分たちのことを話し始めた。そして小天狗たちの自慢話を聞き終えた頃にはすっかり仲良しになっていた。静が興味津々で質問すると、小天狗たちは得意げにいろいろ教えてくれた。

「あの突然現れたのは、転移ですか?」

「あれは、『天狗の隠れ蓑』って人が呼んでるもので、姿が隠せるんだ。」

「じゃあ、最初からいたんですね。」

「しかし、転移ってよく知ってるな。」

「十兵衛さんは600年後から転移してきたんです。」

「葛葉ちゃんもすぐ消えるしね。」

「おお、葛葉さんをご存じですか。」

「うん。ママのお友達よ。」

 それを聞いた白いひげを生やした長老格の小天狗が何かに思い当たったように

「もしかして、あなたの母上は、小式部内侍様ですか。」

「そうよ。」

「なるほど……。」



【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

自慢話をしていると鼻が長くなるぞ。

ウソをついても長くなるみたいだがの。

今回は静と真の視点です。

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