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魔王殿

おじいさんのありがた~い おはなし。

「ねえちゃん、何でここに?」

「あんたヴィーナスさんだよね。何でこの時代に?っていうかクマラと兄弟なのか?」

 十兵衛はこの突然の事態に理解が付いていかなかった。

「わたしと、このクマラは、元々はムーンたちとは別の星から来たの。」

「別の星?」

「ああ、俺たちは親が破滅した金星から月に移り住んで、そこで生まれたのさ。」

「西の方ではヴィーナスは美の女神、その名を持つ星が金星なの。」

「だから、私は美しいってか。あいつらと同じじゃないか。」

「いえ、西の方に移り住んだ女性たちは海に住んだり、貝殻に住んだり苦労したみたい。」

「なんか、そんな裸の絵を伴天連たちが持っていた気がするな。」

「海の岩礁で休んで歌っていたら、魔物にされたり」

もちろん、十兵衛には人魚やセイレーンなど知るわけもなかった。

「まだ女は美女扱いだからましだけど、俺たちは西では悪魔ってさ。」

「それも伴天連のことを書いた書物で読んだな。確か、るしふぁーとか言ったかな。」

「ルシファーは西の連中のリーダーだった男さ。やつはどこかに逃げたけど、他の連中はみんな見つかって火あぶりにされたよ。」

「なんで、悪魔なんだ?」

「ほら、俺の羽、黒いだろ。悪魔の証拠なんだとさ。」

「でもここじゃそんなこともないんだろ。」

「まあな。ここの寺から、貴船神社へ行く谷に住ませてもらっているよ。」

「二人はそこに連れて行ったのか?」

「ああ、子分たちも谷に住んでるからな。……。えっ、何やってんだ?」

 クマラが空を見上げて唖然としている、なんと二人の子供は小天狗たちの背中に乗り飛びまわっている。キャッ、キャッと真は上機嫌で、静は興味深げに周りの山や森を見ている。

「さすが、あの人の子だな。」

「あの子たちが、小式部さんの子供たちなの?」

「なんで、あいつらいいように遊ばれてるんだ。」

 三人の前に天狗に乗った真と静が降りてきた。二人とも初めての空に大興奮であった。

「十兵衛さん、なんか仲良くなっちゃった。空飛ぶって面白い。」

「とても興味深かったですよ。」

「ママが話してた貴船神社も初めて見たわ。」

 クマラは小天狗たちを捕まえて文句を言っている。

「おまえたち魔王の配下として恥ずかしいと思わぬのか。人の子に遊ばれるとは…。」

 十兵衛はそれを聞いて、なんだか黒歴史を思い出したかのように顔をそむけた。しかし、クマラも十兵衛の眼帯が中2仕様なことに気が付いていた。

「われは、この世界の魔剣士十兵衛殿と真剣勝負をしておったのに、われら陰の世界に生きるものとして恥ずかしくないのか。」

 聞いている十兵衛の方が恥ずかしくなっていた。

「まあ、客人ということだから、わが魔王殿に招待しようではないか。」

「あなた、何百年たっても変らないわね。その中2病そろそろ治しなさいよ。」

 クマラの頭を叩きながらヴィーナスも魔王殿について行くことにした。魔王殿は貴船神社に抜ける山道の途中にぽつんと立っていた。

「あんたね。これのどこが『殿』なのよ。」

「でもお姉さん。不思議な岩の上に立ってるよ。」

「この岩はわしが650万年前にこの地に降り立った時に宇宙から持ってきたすごい岩なのだ。」

「650万年?」

「クマラ、盛り過ぎよ。ちょっと無理があるわ。」

「そんな昔って、まだこの地に人なんかいないんじゃないんですか。」

「そうね。せいぜい650年ってところじゃないかな。」

 静の賢そうな問いに驚きながらヴィーナスが答える。

「まあ、遠慮なく入るがいい。」

 小堂は子供を入れても6人のものが入れそうになかった。しかし、その狭いお堂の入り口から奥の方にクマラは進んでいく。とうとう6人の後ろから興味深そうについてくる小天狗たちまで全部入ってしまった。

「これは異界とつながっているのか。」

 もう異界人に驚かされるのには慣れた十兵衛だったが、その不思議さは今まで以上であった。部屋の奥まで付くと下に向かって階段が続いている。

「階段?どこに行くの。この下って岩でしょ。」

 階段を下りきるとそこには、いかにも中2趣味らしい仰々しく飾り立てられた大広間があった。これは地上の建物の数十倍は広く思われた

「ようこそ、わが魔王殿へ」

 そういうとクマラは、広間の奥の一段高いところにあるこれまた仰々しい椅子に座った………、と思ったら、部屋の陰から筋肉隆々とした大男がクマラに向かって片腕を振り上げて飛び出してきた。

「鬼 いちばーん!」

 よく見ると背中に小さな羽が付いているが、体形は鬼である。クマラはそのラリアットをひらりとかわすと、大男は部屋の奥の壁にぶつかって、戻ってきた。こんどもクマラはひらりとかわす。そしてかわし際に首の後ろに蹴りを入れると大男は倒れてしまった。すかさずクマラは男の上に馬乗りになると、十兵衛の方を見る。

「数えて!」

「え?」

「数えるんだ!」

「いち、に、さん……。」

 突然、小天狗たちがゴングを乱打し、一羽の天狗がクマラの腕を挙げた。

「まだまだ、修行が足りんな。鬼一よ。」

「鬼一?こいつが鬼一法眼なのか?」

「十兵衛さん、きいちホーガンって何者なの?」

「俺の世界では、あらゆる剣術が開祖としているな。」

「剣の達人なんだ。」

「剣使ってなかったわよね。」


【ごきょうくん】

おじいさんとのやくそくだよ。

昭和のプロレスは面白かったんだぞ。

ホーガンw

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